2005年8月31日水曜日

水面下で使われるネット調査--衆院選スタート

「郵政解散」に伴う総選挙は30日に公示を迎え、本格スタートした。企業のマーケティング活動にはインターネットが不可欠になったと言われるが、選挙活動にネットを利用することは、法の制約が大きいためまだ難しい。だが実は、水面下でネットが活用され始めている。(関連記事「メディアラボの目」









「郵政民営化に重点を置いて投票する人は24%」――。ネット調査大手のマクロミルが15日にまとめた「政治に関する意識調査」では、ネットユーザーの醒めた意識が浮き彫りになった。郵政民営化を争点にしようという首相の思惑とは裏腹に、政権与党に期待する重点 課題としては「年金・福祉」(71%、複数回答)と「景気回復」(68%)が多い。





現時点で政党の支持率をネットで調査すると、民主党の支持率が高めに出る傾向が強く、ネット調査は各政党の支持率を比較する世論調査には利用できないことは多くのネット調査会社が認めている。マクロミルの調査も支持率を探る世論調査ではない。





それでも「調査対象者の地域別、年齢別の構成比を国勢調査の比率に合わせて回答を回収するなど工夫をした」としており「ある程度は正確に政策への国民の意識を把握できる」と同社は強調する。





あるネット調査会社の担当者は「選挙情勢の把握にネット調査を使う話が、最近は広告代理店からよく持ち込まれる」と打ち明ける。ネット調査会社の多くは全国に数十万人規模の調査パネルを保有し、20問程度の設問でも1日でアンケートを集計できるノウハウがあるからだ。





短期決戦の選挙では短期間で民意を把握できるネット調査が重宝される。有権者の意向を把握するためのネット調査は2年ほど前から増え始めており、ネットによる民意のマーケティングは密かに、選挙という「情報戦」を勝ち抜く手段になりつつある。





新聞社などのマスメディアは通常、乱数番号を使った電話の世論調査を実施する。各陣営はこうしたデータも参考にしながら選挙の戦術を組み立てるが、世論調査は数百万円規模の費用が必要で、集計にも時間がかかる。





ネット調査は質問事項を作って、即日、結果を分析できるメリットがある。「企業の市場調査でも選挙目的でも値段は同じ」(ネット調査大手のインフォプラント)なので、通常の調査ならば100万円程度で可能だ。公表を前提とする世論調査ではなく、戦況を把握するための情報収集の一環として使われる。「ネット調査で当落予測をしても、NHKの出口調査に匹敵する精度の結果が出せる」と評価する関係者もいる。





現行の公職選挙法では立候補者が政策を訴えるホームページさえ更新できず、政策や意見を伝える手段として使うには大きな壁がある。一方で民意を把握するためのマーケティング活動に応用する研究はさらに先に進んでいる。





「『2ちゃんねる』に書き込まれている内容を分析すれば選挙の行方も把握できます」――。企業向けに掲示板サイト「2ちゃんねる」の監視サービスを提供しているガーラの菊川暁社長は昨夏の参院選で、ある政党に掲示板に書き込まれる有権者の本音を分析する調査を売り込んだ。だが、1年前はネットで語られる言葉の持つパワーへの認知が低く、手応えはなかった。





その後、ブログ(日記風の簡易ホームページ)が急速に普及し、ネットで語られる言葉が伝播する「口コミ」の力が見直され始めると状況はガラリと変わった。掲示板で語られる本音の言葉をもとにマーケティングをするノウハウを蓄積しているガーラに目をつけたのは電通だ。アンケートによる定量調査ではなく、ネットを使った定性調査をマーケティング戦略に活用しようと考えた。電通はガーラに出資し、10月から掲示板やブログに書き込まれた消費者の意向を調べるサービス「電通バズリサーチ」を開始する。





大企業の経営者が社内で周囲に「イエスマン」だけを配置していると、消費者の本音を聞きだせる相手は「妻と子供となじみの飲み屋の女将(おかみ)さんの3人しかいなくなる」という冗談のような話が現実にある。首相官邸が実は「情報の過疎地」というのも有名な話だ。自分についての悪い評判も含めて、世情を読み誤らないための本当に有益な情報を入手するということはトップの悩みのタネだ。





ガーラと電通の試みが選挙の実践ですぐに通用するかは未知数。ただ菊川社長は「昨夏の参院選の結果は、掲示板から読み取った予想と一致していた」と説明する。今回の総選挙をめぐっても、ブログなどを通じてネットで政治について語ろうという運動は若者を中心に活発になっている。ネットによる選挙運動は公選法による制約があるが、ネットで語られる有権者の言葉を統制することは不可能だろう。





もちろん、ネットで語られる言葉が民意の全てと誤解することは危険だ。ソーシャルネットワークサービス(SNS)大手、グリー(東京・港)の田中良和社長はネットを通じて若者らに投票を呼びかける運動に参加するが、ネットを使った政治活動については「衆愚政治の歴史もあり、難しい面もある」と指摘する。





ネット選挙はネットによる扇動という危険と隣りあわせでもある。今後、盛んになる可能性がある公選法の改正議論は「民意をマーケティング」するノウハウの蓄積と並行して進める作業になるだろう。

























































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