2008年12月24日水曜日

2009年のメディア予測――ネット空間、「息抜きの場」なのに息苦しい

需要が細分化したネット空間のイメージ(イラスト・山根あきひこ)
 日経メディアラボは「2009年のメディア予測」をまとめた。利用者にとってインターネットは「息抜きの場なのに息苦しい」存在になっていくと分析。息苦しさを和らげるためにネットサービスに対する人々の需要が細分化し、快適さを売り物にした有料サービスも増えると予測している。(12月22日付の日経産業新聞にも記事)



→詳細はニュースリリースをご覧ください
(クリックするとPDFファイルが開きます)



(イラストは山根あきひこ)



 ネット調査会社のヤフーバリューインサイト(東京・中野)と共同でネット利用者調査を実施し、結果を分析して予測をまとめた。全国の20~50代の男女ネット利用者計1500人から回答を得た。

 調査ではネット上のコミュニケーションを「息抜きの場だ」と感じている人ほど、同時に「息苦しい」とも回答。1年前の調査結果と比べ、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に対して「だれかとつながっている感覚」と「居心地の良さ」を求める人が急減している。

 今後は、より居心地の良い環境を求めてネットサービスを使い分けたり乗り換えたりする人が増え、新たなヒットサービスが生まれにくい状況になるとみている。





■これまでの「メディア予測」
2008年 ~ネット利用「お茶の間テレビ」型に
2008


2007年 ~分身を使いコミュニケーション
2007


2006年 ~コックピット型の個人サイトが登場
2006


 


2008年12月19日金曜日

任天堂とはてな「京都発」でタッグ・マッシュアップ基盤構築で

Nintendo_hatena  任天堂とはてなは18日、ゲーム機で作成したコンテンツの共有サービスを開始すると発表した。同じ京都に本社を持つ老舗とベンチャーが手を組み、新たな事業に乗り出す。(写真は小泉歓晃任天堂ゲームプロデューサー=左と近藤淳也はてな社長)



 今回発表したサービスは、任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドーDSi」用のゲームソフト「うごくメモ帳」を使って利用者が作成したパラパラマンガをネット上で公開できるというもの。同ソフトは12月24日から任天堂が無料で配信する。タッチペンを使い手書きのメモを記録できるほか、自由に描いたイラストを重ねてパラパラマンガを作成する機能があり、音声を加え動画コンテンツとして友人に送る、という楽しみ方が可能になっている。


 完成したパラパラマンガをゲーム機の無線通信機能で「うごメモシアター」に送信すると、他のプレーヤーもゲーム機でその作品を見られるようになる。公開された作品をダウンロードし、絵や音声の追加など変更を加えて別の作品として公開する「マッシュアップ」を行いやすくしているのが特徴。改変されたくない場合は「ロックする」と設定すればマッシュアップはできない。ゲーム機を持たない人も、パソコンや携帯からウェブサイト「うごメモはてな」にアクセスして作品を見たり、自分のブログに貼り付けたりできる。


 ゲーム機は多くの小中学生が利用していることもあり、有害情報の投稿・閲覧への対策が不可欠となる。このサービスでは、まずウェブサイトである「うごメモはてな」で公開し、一定の時間通報などがなければゲーム機でも閲覧できるようになる、という仕組みを採用する。はてなが最初に手がけた「人力検索はてな」を連想させる、人の力によるフィルタリングだ。


 会見ではてなの近藤淳也社長は「はてなは『京都発、世界』を目指している。新しいパートナーは、まさにそれを実践している企業だ」と任天堂を紹介。任天堂情報開発本部のゲームプロデューサー、小泉歓晃氏は、UGC(ユーザー作成によるコンテンツ)事業に乗り出すには特有のノウハウが必要と考え、はてなにこのプロジェクトを持ち掛けたという。その経緯について「はてなが持つ技術の質の高さは知っていたし、任天堂とも社風が似ている」と小泉氏が話すと、近藤社長が「任天堂と一緒に仕事ができること自体に大きな魅力を感じた」と返すなど、相思相愛ぶりを強調した。


■関連リンク
「うごメモはてな」のウェブサイト

http://ugomemo.hatena.ne.jp/


2008年12月12日金曜日

情報の「組み合わせ爆発」へ対応急げ――MITメディアラボ・石井裕副所長インタビュー

Hishii_2  「ロサンゼルス・タイムズ」を発行する米新聞大手トリビューンの経営破たんは、米国新聞業界の再編につながることが予想される。これは米国だけの、新聞社だけの問題ではない。デジタル・シフトによる広告収入の減少に不況が追い討ちをかける形で、メディア業界全体が世界的な再編の渦に巻き込まれようとしている。



 1995年から米マサチューセッツ工科大学メディア研究所(MITメディアラボ)でデジタル情報に形を与え直接触れて操作する「タンジブル・ユーザーインタフェース」の開発を進めてきた石井裕教授が、今年同研究所の副所長に就任した。世界最高レベルの知識集団を率いる石井教授に、マスメディアの行く末について見方を聞いた。


 


情報は複合的に爆発している


 情報社会を地球に見立てると、昔は情報というマントルが、マスメディアという巨大な火山を通じて地表に噴き出していた。しかし今はあらゆるところに出口があって、情報があふれ出している。


 そういう中で、人は世界中の新聞を読み比べたり、RSSリーダーで様々な人の視点を参照したり、ソーシャルブックマークやソーシャルタギングでキーワード抽出するなどして、必要な情報を得ている。さらに知人との会話や、偶然見かけたものごとなども加え、すべての情報を総合的に分析し、行動しているのだ。


 米国の作家、トム・クランシーの小説に登場するCIA職員ジャック・ライアンは情報分析のプロフェッショナルで、収集した様々な情報を組み合わせて分析し、自分なりの判断を下して行動する。そうした点と点をつないでいくような作業が、ネット社会では当然のものになりつつある。


 情報爆発という言葉もあるが、今の状況は情報と情報とが複合されることでより大きな爆発を呼ぶ「組み合わせ爆発 (Combinatorial Explosion) 」であることを意識しなくてはならない。


メディアに求められる役割


 では、メディア企業は単に組み合わされるべきパーツとしての情報を供給するだけの存在になるのか。そうなりたくなければ、何をすべきなのか。


 そのひとつは、情報をコーディネートする仕組みをつくる、ということだろう。混沌とした組み合わせ爆発の世界で、必要としている情報を必要としている人に届けるマッチングのシステムだ。そしてそこでは、なぜその人にその情報を勧めるのかという理由を明確に伝えられることが重要になる。


 例え話をしよう。あるショップの店員が客に対してネクタイを勧めるとする。「このネクタイはいいものですよ」というのが、これまでのマスメディアのやり方だ。これから必要なのは「あなたがコミュニケーションする相手は誰で、そういう人が価値を見出すのはこれで、そしてあなたが望むコミュニケーションの目的はこうだから、このネクタイを身に着ければうまくいく可能性が高くなりますよ」と言ってあげることだ。さらに他の選択肢も提示する。そうしたコンシェルジェ的な発想、まさしくインテリジェンスが、メディアに求められるようになる。


 それを実現するためには、まず人々がどこで情報に触れ、どのように活用しているのか、つまり人とメディアが交差するフレームワークを的確に把握することが必要条件だ。


 そして500人、1000人の記者の視点ではカバーできないほど多様化した情報ニーズに答えるために、ひとつの会社の中で閉じることなく、世界中のあらゆる出来事や議論とリンクしながら情報を分析していくような手法を開発できるかどうかもポイントになるだろう。


 もちろん、それは簡単なことではない。「大衆」すなわちマスを念頭に置いた事業ではなく、限られた層、限られたセグメントの人々に対してそれぞれに必要な情報を配信していく、というモデルだからだ。その力があるか。技術があるか。スピードがあるか。そう考えると、やはり世界中のほとんどの企業がグーグルには敵わない。だからこそグーグルは怖いのだが、そういう怖さの本質を日本のマスメディアは理解していないのではないか。


ビジネスモデルをどう描くか


 現代は「情報はタダ」が当たり前の世界。これまでのような、コンテンツ流通の統制でマネーを生んできたようなビジネスはもうまかり通らないだろう。読者は様々なソースから得た情報をマッシュアップ(組み合わせ)して自分のメッセージを発信したいと思っているのに、そのニーズに答えられないからだ。


 流通に関する障害がない、シームレスな情報の海。そこに乗り出してはビジネスができない、と言うかもしれないが、そんなことはない。例えば、写真共有サイトの「フリッカー」は、一定の容量までは無料で使えるようにし、その価値を十分に理解させた上で、有料会員になれば容量が無制限になる、と持ちかける。これはコンテンツやサービスを空気のように提供して、費用を負担すればもっと快適な空気を吸うことができる、というタイプの手法だが、もちろん他にも方法はあるはずだ。


 メディアが持っている情報をもっと自由に検索できる状態に置けば、われわれのような研究機関はもちろん、社会全体の役に立つ。目指すべきは、そういった人類の知識の集大成への貢献ではないか。現状では、宝の持ち腐れになってしまう。


 なのになぜ足を踏み出せないのか。著作権やルールに縛られている、ということもあるのだろうが、先に述べた情報活用のフレームワーク、言い換えれば社会全体で行う知識の再編集、再生産といった情報のエコシステム(生態系)の中で、メディアがどういうポジションを得るべきなのか、もう一度考えてほしい。


進化できなければ絶滅するだけ


 英国の巨大企業BTは、いち早く交換機型の電話回線をIP(インターネットプロトコル)網へ移行することで成長軌道に乗った。これは歴史的な事件だ。IPへ移行すれば既存のビジネスモデルが崩れ、収益が悪化するのは目に見えていたが「座して待っていてもこの流れは止められない、だったら先にやってしまおう」と決断したのだ。逆に決断を最後まで先延ばしすれば逆の、恥ずかしい意味で歴史に残ってしまう。


 マスメディアも進化の波に乗ることができなければ、絶滅した恐竜やマンモスのようになるだけだ。長い年月が経ってシベリア凍土の中から氷漬けになって掘り出され、後世の人類に見物してもらえるぐらいのことは期待できるだろう。それを望むというのなら何も言うことはないが、生き延びたいのなら、先に行って出し抜かなくてはならない。


石井 裕(いしい・ひろし)
1956年生まれ。80年北海道大学大学院修了、電電公社(当時)に入社。NTTヒューマンインタフェース研究所など経て、95年からMITメディアラボに勤務。今年5月に同研究所副所長に就任。
http://web.media.mit.edu/~ishii/index.html


2008年12月7日日曜日

テレビ番組のネット活用促進へ、新たな制度提案・コンテンツ学会

Shingikai  コンテンツにかかわる産業や政策などを総合的に研究するコンテンツ学会は、映像コンテンツのネット利用に新たなルールを提言するプロジェクトチームを設置した。有識者の意見交換を社会に公開しつつオープンに進める「民間審議会」を開催し、2009年2月に政策提言を取りまとめる。5日にその第一回会合が東京の早稲田大学で行われ、8人の委員が出席し議論した。



 世話役を務める早稲田大学大学院の境真良客員准教授は冒頭、民間審議会という手法を掲げたことについて「国の政策決定プロセスでは審議会を開くが、民間でももっと議論の場を設けるべき」とねらいを語った。対抗軸になろうというのではなく「一種のオマージュ」だという。また「もう話し合っているだけの時期ではなく、早急にオプション(選択肢)を提示しなくていけない」とも述べ、スピーディーな政策立案にもこの手法で貢献したいとの考えを示した。


 続いて境氏は「コンテンツのネット利用調整制度」を提案した。この制度は、膨大な映像コンテンツを管理し、影響力が大きいテレビ局に注目したもので、その所蔵コンテンツを無理なくネット上に流通させ、社会全体で共有することを目論んでいる。


 そこでは、テレビ局に対し既存の番組コンテンツのネットでの利用に関する許諾権(利用管理権)を与えるとともに、テレビ局が許諾権を行使しないコンテンツについては、オークションにかけて利用者を募り、その流通を促すというもの。将来的には、それぞれの番組についてテレビ放送前にネット利用管理権の所在が明確にされることを期待しており、そうした仕組みが定着すれば廃止される、時限立法的な制度だという。


 テレビ局への権利付与という考え方は、今年3月にデジタル・コンテンツ法有識者フォーラムが提案し話題となった「ネット権」の発想に近いように思われる。これについて境氏は「私たちの提案は、各テレビ局が守るべき収益の公正配分の基準を明確にしようとしている点や、許諾されないコンテンツを半ば強制的に流通させる仕組みを持っている点などに違いがある」と説明した。


 議論の中では「NHKと民放とは分けて考えるべきではないか」「パソコンではなく、携帯で見ることを前提にすればインパクトも大きく、課金ビジネスも行いやすいのではないか」など、制度設計やビジネスの視点から多くの意見が出された。出席した東京大学の玉井克哉教授は「いいコンテンツを日本人が創り、海外に打って出られる仕組みにしなくては」と新たな制度に期待を示した。次回は1月に開催予定。


■関連リンク


「ネット利用調整制度に関する民間審議会」のWEBサイトhttp://www.sakaimasayoshi.com/net_rule/index.html



2008年12月4日木曜日

「日本発」でネット社会のビジョン示せ――Web 2008 Expo開催

Web2008  「日本から世界に発信する、ウェブ時代のビジョン」をテーマに、ウェブに関連する企業の担当者や研究者、技術者らが意見を交わす「Web 2008 Expo」が3日、 渋谷区立商工会館で開幕した。同イベント実行委員会が主催し、渋谷を中心に活動するアーティストらが集う、広域渋谷圏クリエイターマッチング有限責任事業組合ほかが運営にあたっている。4日まで。



 初日は、一つのIDで複数のウェブサイトのサービスを利用できる「オープンID」の活用や、ブログ、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などの今後について議論を展開した。


 「日本のブログ」と題したセッションには、影響力の強いブロガーとのタイアップにより効果的なウェブ広告の配信を目指すアジャイルメディア・ネットワークの徳力基彦取締役と、著名人が多数参加していることで知られるブログサービス「アメーバブログ」を展開するサイバーエージェント新規開発局の長瀬慶重局長が参加。モデレーターをブログ基盤ソフト「ムーバブル・タイプ」を開発・販売しているシックス・アパートの関信浩社長が務めた。


 日本のブログの特徴については、ジャーナリストらが積極的に参加し、政治・経済や社会問題などを解説するメディア的な色彩が強い米国のブログに比べ、日本は個人の日記的なものが多い、という意見でおおむね一致した。この状況について徳力氏は「一部の人だけではなく、みんながブログを書いているということは、それだけ日本人の情報発信力が高いということではないか」との見方を示し、日記的だからといって必ずしも日本のブログ文化が劣っているわけではないことを強調した。


■関連リンク
Web 2008 Expoのウェブサイト http://d.hatena.ne.jp/web2expo/


2008年12月3日水曜日

ケンコーコム、広報担当者のブログでリリース補完

ケンコーコム広報室の高須賀令奈さん
 企業のPRを目的に社長以外がブログを運営する企業もある。健康関連の通販サイトを運営するケンコーコムは、広報担当者が「社内レポートブログ「KC Cafe」」を運営し、自社の様子や通販サイトで取り扱っている商品を紹介している。日々ブログを執筆している高須賀令奈広報室マネージャー=写真=に話を聞いた。



 ――広報室で開設した目的は


 「プレスリリースでは、内容や読む人が限られてしまう面がある。その欠点を補うために2005年10月からブログを使うことにした。私は二代目の担当者として2007年5月から書いている。リリースとして配信した話題にブログで補足したり、リリースを配信するほどではないが、ぜひ伝えたいと思った話題を紹介したりできる」


 「ブログの効果を厳密に測定しているわけではないので、数字には表わせないが、社外の反応はいい。商品について取り上げると、そのメーカーに喜ばれることもある。ここからメディア事業(自社サイトを活用した商品のプロモーション支援を手掛ける新規事業)など、Eコマース事業以外の新たなビジネスチャンスが生まれることを期待している」


 ――掲載内容は


 「毎日書くことを目標に、当社の最新ニュースをはじめ、通販サイトで扱っている商品や社内の様子を紹介している。通販サイトで買い物するお客様に会社の雰囲気をわかってもらう機会になるし、人事採用にも好影響を及ぼしているようだ。計画的に題材を決めているわけではなく、その日に気付いたことを書いている」


 「商品を紹介する場合は、通販サイト上で展開するプロモーションとは連動していない。利用者に一番近い視点で、自分で商品を試すような感覚で書いている。商品を詳しく説明するためにメーカーを取材することもあるし、逆にメーカーから広報ブログ掲載用に取り扱い中の商品を提案されることもある。いずれもブログなら、手軽にウェブ上の露出につながる点を評価しているようだ」


 「広報室内でのブログの内容チェックはなく、担当者の責任で発信している。始業前と始業後の時間を利用して更新している。公式ブログは仕事の一部であるが、100%業務とも言い切れないような気がするからなのか、この時間帯に更新するのがふさわしいと感じている。ブログの更新間隔があまりにも空くと、社内から指摘を受けるので、励みになる。写真が少ないと指摘されて、反省したこともあった」


 ――苦労していることは


 「ブログは多くの社員に会社の動きを伝えられる効果もある。広報担当として社長と行動することが多いので、社長の言葉を伝えることもできる。社員も読者であることを考えると、「どこを向いて書くか」ということに悩まされることがある」


 「今後も広報ブログを続けていきたいし、担当者が変わっても続いていくだろう。書く題材に困ることはないが、書くスピードが追いついていないのが悩み。毎日書くのが目標なのに、まとめて書いてしまうことも多い」


■関連リンク
社内レポートブログ「KC Cafe」 http://blog.kenko.com/pr/


◇ ◇ ◇

 日経メディアラボでは、「企業として、個人として、ブログとどう付き合っていくか」をテーマにレポートをまとめる予定です。ここでは取材結果の一部を紹介していきます。



2008年11月28日金曜日

企業のホームページをブログで――SEOにも効果

グリーンツリーの森田健太郎代表取締役
 ブログのプラットホームを利用して、ホームページを構築している企業が増えている。プログラミングの知識がなくても修正が簡単にでき、コストがあまりかからないのが人気の秘密のようだ。さらに、ブログの特徴を生かせば、検索エンジン最適化(SEO)効果があるとも言われている。



 ビジネスに利用するブログ(ビジネスブログ)やイントラ(社内)ブログの導入や、SEO対策コンサルなどを手掛けるグリーンツリー(東京・渋谷)の森田健太郎代表取締役=写真=に、ビジネスブログのSEO効果について聞いた。






 ――どんな企業が導入しているのか


 「中小企業や小規模の工務店で、ブログのプラットホームを使ってホームページを構築する事例が増えている。大企業でも、事業部単位でサイトをつくるときに活用されている」


 「従来の企業ホームページは、HTMLの記述を外注しているケースが多く、簡単な修正でも、手間と費用がかかるのが欠点だった。ブログプラットホームを使うことにより、導入企業の担当者が自分で修正できるようになったことが一番のメリット。当社の製品は、多くのデザインされたテンプレートを用意してHTMLが分からない人でも簡単にホームページを作れるようにしている。SOHO向けと中小企業向けの製品があり、工務店、病院などのユーザーが多い」


 ――「ブログはSEO効果が高い」とよく言われるが


 「ブログだからSEO効果があるというのは、正確に言うと誤りだ。企業のホームページをブログプラットホームで作っても、ブログのメリットを享受できる構造にしないと、SEO効果はない。企業秘密なので、詳しくは述べられないが、上位表示のポイントは(1)プログラムの構造がきれい(2)サイトが大きい(3)外部からのリンクが多い――などだ」


 「サイトが大きいという点に注目すると、記事の数とSEO効果は比例する。日記ブログが検索結果の上位に表示されやすいのは、一つのブログ記事の投稿で複数のページが生成されるため、サイトが大きくなるからだ。当社のテンプレートはこの複数のページが生成されるところを重視している。中小企業などが、ホームページを毎日更新して記事を増やすのは難しいので、SEO効果を求めるならば、「構造的に数を多く見せる」工夫が必要となる。例えば、一見1ページに見えるフロントページでも、複数のページの集合体を表示するような構造にすればよい」


 ――イントラブログを導入する利点は


 「イントラブログは、社内の情報共有ツールに効果がある。画像以外にも、パワーポイント、ワードなどのドキュメントを添付することもできるし、検索しやすくなる効果もある。最近、提案しているのは、軽いナレッジ・マネージメントとしての利用。管理者がアイデアレベルでの投稿を促すことで、記事数を増やす。良質な情報にはアクセスが集まることを利用し、アクセスランキングを情報として使っていけば、ナレッジの集大成となるのではないか」


■関連リンク
グリーンツリー http://www.greentree.jp/


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 日経メディアラボでは、「企業として、個人として、ブログとどう付き合っていくか」をテーマにレポートをまとめる予定です。ここでは取材結果の一部を紹介していきます。


2008年11月26日水曜日

D2C藤田社長、個人ブログでも自社の情報発信





ディーツーコミュニケーションズの藤田明久社長
 企業がブログと付き合う事例の一つとして、企業のトップが「社長ブログ」を開設して情報を発信する企業が多くなってきた。自社ホームページの中のコンテンツの1つとして社長ブログを掲載するのが一般的といえるが、携帯サイト向け広告のディーツーコミュニケーションズ(D2C、
東京・港)の藤田明久社長=写真=
は、個人的に開設したブログも自社の情報発信に活用している。藤田社長に自社ホームページと個人ブログの使い分けなどを聞いた。





 ――07年9月に開設したきっかけは


 「取引先の社長の多くがブログを開設している中、社内外からの勧めで、遅ればせながら開始した。会社のメッセージは、D2Cのホームページがあるので、そちらで発信している。しかし、社内イベントなどオフィシャルなサイトでは発信できない内容もある。そのようなものを社長の目を通して伝えるべき人に伝えるのが目的だ。内容としては、私が考える世界最先端の分野であるモバイルマーケティングの意義や、D2Cは何を目指しているかなど、事実以上のことを伝えたい」


 ――ブログの内容は社業に特化している


 「個人ブログの位置づけとしているが、D2C社長のブログであることは明示しているので、趣味や家族のことは書かない。あくまでもオンタイムの話題だけを取り上げる。それでもネタには事欠かない。個人ブログと位置づけたのは、いつやめてもいいように、また情報更新頻度の2つのプレッシャーから逃れるためでもある」


 「個人ブログなので、広報のチェックはない。あくまでもオフィシャルな顔は企業のホームページ。だから、当社のホームページから社長ブログへのリンクもない。ドメインもD2C関連のものではなく、一般向けのブログ開設サービスを利用し、費用は自費で支払っている」


 「発信対象は、取引先、メディア、社員、学生を想定している。ニュースリリースは出していないが、メディアに伝えたいというネタも含まれる。当社のユーザ向けサービスを説明するケースもあり、モバイル好きの人も対象に、B2C要素もある。テーマによって、特定の対象者にメッセージをこめている」


人の顔をなるべく写真で紹介――検索フレーズから得たヒント


 ――書くときに意識していることは


 「アクセス解析は、ほぼ毎回ページビュー、ユニークユーザーを見ており、突然増える場合は、流入サイト、検索フレーズをチェックしている。検索フレーズを見ることにより、固有名詞の検索が多いことに気づいた」


 「モバイル広告大賞受賞者を訪問して紹介した時や、講演のパネルディスカッションを紹介した時のように、お会いした方々の固有名詞を入れることを意識するようになった」


 「自分を含めて、社員がメディアに記事などで登場した場合は、積極的に紹介している。キャプチャ画像や転載のルールとしては、見出し以外の中身を読めないようにすること。メディアから削除依頼を受ければ、すぐに削除するが、今までにそのようなことはない」


 ――社長ブログの効果を感じることは


 「当然だが、当社に関心のある方々に、随分見られていると感じている。ビジネスチャンスにつながることもあるし、リクルーティングにも一定の効果がある。社内の雰囲気などを材料に、社長目線で伝えたことがよかったようだ。社員向けにも、コミュニケーションのネタになるなど、読んでくれている感触はある。社員が社業について理解を厚くするきっかけになればと思っている」


 「自社ホームページへの流入元を見ると、社長ブログからのアクセスが2位となっている(広報調べ)。社長ブログから自社ホームページへのリンクは相当意識している。例えば社長ブログで紹介するサービスの詳細は、自社ホームページの該当ページにリンクする方が読者にとってスマートだと考えている」


■関連リンク


「24時間30cm以内に ディーツー コミュニケーションズ(D2C)社長のブログ」
http://akihisa.air-nifty.com/


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 日経メディアラボでは、「企業として、個人として、ブログとどう付き合っていくか」をテーマにレポートをまとめる予定です。ここでは取材結果の一部を紹介していきます。


2008年10月28日火曜日

フォートラベル、名刺でつなぐブログコミュニケーション

QRコード入り名刺を持つ矢野さん
 日経メディアラボでは、「企業として、個人として、ブログとどう付き合っていくか」をテーマにレポートをまとめる予定です。ここでは取材結果の一部を紹介していきます。



 初回は旅行総合情報サイトを運営するフォートラベル(東京・千代田)の事例です。ブログと「紙の名刺」を組み合わせたサイトのPRについて、経営企画室広報担当の矢野智美さん=写真=への取材の概要をまとめました。



◇ ◇ ◇

 フォートラベルのサイト(サイトの名称も「フォートラベル」)は、個人会員に対して旅行をテーマにしたブログ開設サービスを提供。多くの会員がブログに投稿した旅行記や写真、クチコミ情報を地域別に再編集して、旅行情報サイトをつくっている。月間で320万人(2008年8月)が利用するメディアに育っている。


 サイトのPRに一役買っているのが名刺だ。会員に対し、ポイントを貯めると「ブログカード」と呼ぶオリジナル名刺を贈る仕組みを用意している。自分の「トラベラー名」(サイトの中で使うニックネーム)や旅行記のURLが印刷されている。「旅先で知り合った人と、旅行後もブログを使ったコミュニケーションを続けたいけれど、自分の本名や連絡先を明かすのは抵抗がある」という会員のニーズにマッチしたという。


ブログカードのデザイン例
 社員のほとんどが旅行好きという同社の社内から生まれたアイデア。社員も率先して旅行ブログを開設し、仕事で使う名刺に旅行記のURLとQRコード、自分で撮影した写真を載せている。


 フォートラベルのポイントは、会員が所定の場所をクリックしたり(1回10ポイント)、アンケート調査に答えたり(同100ポイント)するとたまる仕組み。ブログカードと交換するには7000ポイント必要で、これまでに約30人が交換したという。


 さらに、同社が開いた会員同士のオフ会の参加者にブログカードを無料で配布し、試してもらった。「配りすぎてなくなってしまったので増刷してほしい、との要望もある」(矢野さん)。好評だったため、今後はオフ会を開く際にスポンサー企業を募り、広告入りのブログカードを参加者に無料で配ることも検討している。


 名刺にQRコードを入れていることから、名刺からの携帯サイトへのアクセスを測定できるようになると、名刺を使ったPR効果が明確になりそうだ。ただ、現在はパソコン用のサイトのトップページにも同じQRコードを載せているため、誘導元の判別はできないという。


■関連リンク
フォートラベル http://4travel.jp/


2008年10月13日月曜日

日中比較・北京五輪のメディア利用(2)――大イベントでは依然強いテレビ

 日経メディアラボは中国の清華大学、東京大学と共同で、日中の20代のメディア利用比較調査の結果をまとめた。調査は2007年に続き2回目(前年の結果はこちら)。今回は2008年8月の北京五輪に関する情報収集をテーマに調査・比較した。

 ここでは調査結果のなかから、調査に参加してもらった東大大学院情報学環・橋元良明教授が注目したポイントを紹介する。



 調査は北京五輪閉幕後の8月下旬に、ウェブを使ったアンケートを実施。ネット調査会社のヤフーバリューインサイト(東京・港)などの協力を得て、日中の大都市(東京、大阪、北京、上海)に住む20代の男女ネットユーザー計1200人から回答を得た。同じ条件で30代(日中200人ずつ)、40代(同)からも回答を集め、世代間の違いを判断する材料にした。


 調査結果に対し、橋元教授は「ネット調査であり、調査対象者に偏りがあることを認識した上で結果をみる必要がある。特に中国の調査対象者は、平均よりかなり高学歴・高所得でIT慣れしている」という前提を指摘したうえで、「それを差し引いてみても、いくつか注目すべき点がある」とみている。


 





(1)中国20代のネット利用時間の長さ


 「自宅でも自宅外でも、日本人に比べ、ネットの利用時間が極めて長い。半数以上が自宅で1週間10時間以上、約半数が自宅外でさらに10時間以上ネットを利用。平日1日平均5時間パソコンに接している」(橋元教授)



��↓グラフをクリックすると拡大します)


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(2)中国20代、メディア接触の中心はネット


 「日常的にも、メディア接触で中心的な地位を占めるものは、テレビからパソコンに移行している。日本ではテレビとパソコンがほぼ拮抗している」(橋元教授)


(↓グラフをクリックすると拡大します)

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(3)大イベントではネットよりテレビ


 「それでも五輪競技については、情報収集の中心は日本と同様にテレビであり、大きなイベントに関する情報伝達手段としてのテレビの重大性は減少していない。五輪で最も印象に残ったシーン(中国では開会式)は、ほとんどテレビで見ており、テレビがもつインパクトの大きさは、まだ他のメディアでは追いつかない」(橋元教授)


(↓グラフをクリックすると拡大します)


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(4)携帯活用、中国のほうが活発


 「携帯電話がマルチ機能化しているのは日本と同様であるが、日本以上に動画撮影、動画再生が活発である。一部の人の携帯の利用法は、日本以上に多彩で先進的である」(橋元教授)。ゲームや音楽ダウンロードでも中国の利用率の高さが目立っている。


(↓グラフをクリックすると拡大します)


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 橋元教授は今回の調査結果を見た印象として、「中国の20代のネット利用層においては、日本以上に、ネットからの情報収集が中心的なものになっており、情報接触の側面で、ネットを利用していない層との格差が増大している。ただし、五輪のような大きなイベントについては、まだテレビの影響力はずば抜けたものがあり、『メディアの王様』としての地位は不動である」と総括している。



日中比較・北京五輪のメディア利用(1)――中国20代、普段はネットでも五輪はテレビ

 中国都市部の20代、普段の情報収集はテレビよりインターネットだが、北京五輪に関してはテレビ中継を熱心に見ていた――。日経メディアラボと中国の清華大学、東京大学の共同調査で、こんな中国の若者のメディア利用傾向が浮かび上がってきた。(10月13日付の日本経済新聞朝刊にも記事)



(↓グラフをクリックすると拡大します)


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 なかでも開会式への関心が極めて高く、回答者の88%が「テレビ生中継を(録画でなく)リアルタイムで見た」と答えたほか、印象に残っている出来事を挙げてもらう設問でも94%が「開会式の演出」と回答した。日本では「少女の歌声が別人だった」などの点が話題になったのと異なり、中国では「聖火の点灯シーン」をはじめ好意的に受け止められている。


 普段のメディア利用時間(1日当たり平均)で見ると、中国の20代はネットが中心(ネット40%、テレビ23%)。スポーツ情報に限っても普段使うメディアはネットが47%と、テレビの35%を上回っている。北京五輪に関してはテレビが67%に上昇し、ネットが26%と逆転した。


 調査は北京五輪閉幕後の8月下旬にインターネットを使ったアンケートを実施。日中の大都市(東京、大阪、北京、上海)に住む20代の男女ネット利用者計1200人から回答を得た。


日本の20代、「パソコンや携帯を使いながらテレビ」


 日本の20代は、普段でも五輪関連でも情報収集はテレビ中心。中国と異なりテレビのスポーツニュースを利用して手早く情報収集する人が目立った。印象に残っている出来事では「競泳の北島康介選手の金」(71%)、「ソフトボール日本代表の金」(65%)など、自国の選手の活躍が上位を占め、「開会式の演出」は21%にとどまった。


 また「テレビのスポーツ中継を見ながらパソコンを使う」人が55%、「テレビのスポーツ中継を見ながら携帯電話を使う」人が40%を占め、日本の20代に特徴的なメディア利用法であることが分かった。 


 崔保国・清華大教授の話 中国で開会式に注目が集まったのは、中国初の大規模国際イベントということで、スポーツ観戦に関心がない人も巻き込んだからだろう。北京では開会式当日が休日になったため、家族そろってテレビの前に集まった家庭も多かったようだ。


 橋元良明・東大教授の話 パソコンや携帯電話をいじりながらテレビを見る傾向は、日中ともに今後もさらに顕著になるだろう。今後は送り手側もテレビ、パソコン、携帯という3つのメディアを有機的に関連させながら情報提供することが重要になっていくだろう。



>>続き 日中比較・北京五輪のメディア利用(2)――大イベントでは依然強いテレビ



2008年10月12日日曜日

コンテンツ学会が発足・『行動できる組織』目指す

Horibe_2  コンテンツ分野の研究を総合的に進める「コンテンツ学会」が11日発足し、東京・秋葉原で設立記念シンポジウムを開催した。



 コンテンツについてはこれまでもさまざまな角度から研究がなされてきたが、この学会ではそれらを連携させる基盤となることを目指す。ほぼ毎週研究会を実施し、産業、政策、技術、表現という4つの領域を中心に学際的に活動していく予定という。


 会長には一橋大学の堀部政男名誉教授(=写真)が就任し、副会長には杉山知之デジタルハリウッド学校長、玉井克哉東京大学教授、中村伊知哉慶應大学教授、和田洋一スクェア・エニックス社長の4人が選出された。


 事務局長を務める金正勲慶應大学准教授は会の趣旨を説明する中で「この数年コンテンツ立国ということが言われてきたが、学界は何もしていなかったのではないか」と強い口調で指摘。それを反省し仕切り直しをするためにも、この学会は権威主義を排除し、志のある者が行動できる組織にしていこう、と訴えかけた。


 聴講者との質疑応答では、国際競争力という視点から考えて日本のコンテンツ産業にはどのような特徴があるか、という問いに対し、副会長の杉山氏が「たとえばサンリオの『ハローキティ』は、スリッパのような日用品にもプリントされるが、ヨーロッパの有名ファッションブランドともコラボレーションできる。マンガは、子供も読んでいるけど総理大臣だって読んでいる」と述べ、所得や世代、社会的立場で分かれる様々な層を越えて広く普及していけるのが日本のコンテンツの強みだという考えを示した。


コンテンツ学会のWEBサイト
http://contents-gakkai.org/


2008年10月9日木曜日

「安心ネットづくり」促進協議会が発足・IT企業トップら会見

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 青少年が安心してインターネットを利用できる環境整備を目指す「安心ネットづくり促進協議会」が来年1月に発足する。8日、発起人を務めるIT企業の社長らが一堂に会し、活動内容や方向性を明らかにした。





 この会見にはNTTドコモの山田隆持社長 、KDDIの小野寺正社長、ソフトバンクモバイルの孫正義社長という携帯3社のトップが顔をそろえたほか、井上雅博ヤフー社長、笠原健治ミクシィ社長、南場智子ディー・エヌ・エー社長らネットサービス大手のトップも参加。IT業界全体で取り組む姿勢をアピールしたほか、清原慶子三鷹市長や堀部政男一橋大学名誉教授らも出席し、民間主導ながら産官学の連携も重視する姿勢を示した。


 協議会は来年1月に発足し、4月から事業を開始する。2009年度は「総合的なリテラシー教育」「民間による自主的取り組みの促進」「利用環境整備に関する知見の集約」を事業の柱として活動するという。会の世話人を務める中村伊知哉慶應大学教授は「この分野ではさまざまな取り組みが自発的に生まれているが、この協議会を通じそれらの活動を連携させ、『点から面へ』展開していきたい」と述べた。


 会見の中で孫社長は「世界一早くて安いブロードバンドネットワーク、ハイスピードの第三世代携帯電話の普及など、日本のインフラは先進的だが、コンテンツ・アプリケーションの分野ではまだ世界的に見て後れを取っている。ネットの安全安心に先んじて取り組み、他の国に参考にしてもらえるようにしていきたい」と意気込みを述べる一方、「小中学生に携帯を持たすな、とか、インターネットに触らせるな、といったことになると、若者を『インターネット音痴』にしてしまい、日本の国際競争力をそぐことになる。バランスが重要だ」と、政治・行政による過度な対策へのけん制も忘れなかった。


2008年8月6日水曜日

「ヤフー!ニュース」内に利用者編集コンテンツ

会見したヤフーの川邊健太郎氏
 ヤフーは8月5日、「ヤフー!ニュース」内に、オンライン百科事典「ウィキペディア」のように多くの利用者がコンテンツ編集に参加できる仕組みを導入し
た。ニュースをテーマ別に分類・整理したコーナー「トピックス」の中に、利用者がニュースの関連リンクなどの情報を書き込む「関連情報エリア」を設置し
た。独自の検定試験などで利用者を絞り込み、情報の質を高める。



 同日会見したメディア事業部の川邊健太郎シニアプロデューサー=写真上=は「ニュース分類が1000を超え、社内の10人の担当者だけで編集を続けるのは限界がある。ある分野に詳しい利用者の指摘を受けて情報を修正することも多く、ダイレクトに直してもらうほうが更新が早くなる」とメリットを説明した。


 編集に参加できる利用者を「トピックスエディター」と名付け、募集を始めた。まず160人で始め、3カ月後に400人、1年後に1000人に増やす計画。トピックスエディターは一般の利用者は見られない編集画面にアクセスし、「トピックス」のコーナーで取り上げられたニュースの関連情報を投稿する。


編集中の画面の例
 ヤフーが用意したオンライン検定に合格し、さらに抽選に通った利用者がトピックスエディターになれる。抽選を導入したのは「トピックスエディターが急増してサイトが混乱するのを防ぐのが目的」(川邊氏)。トピックスエディターごとに編集履歴が公開されるほか、経歴が分かるページを用意した。


 ヤフーは「ヤフー!ニュース」のニュース記事に利用者がコメントや感想(「考えさせられる」など5項目を5段階評価)を投稿できる機能を追加したのを始め、ニュースサイトにソーシャルメディアの要素を取り入れている。


■関連リンク
ヤフー!ニュース トピックス http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/
ニュースリリース (日経プレスリリース


2008年7月30日水曜日

ロイターとプレジデント、共同でビジネス情報サイト――10月開設

会見風景
 米トムソン・ロイターの日本法人、トムソン・ロイター・ジャパン(東京・港=注)とプレジデント社(東京・千代田)は7月29日、業務提携を発表した。10月に共同でビジネス情報サイトを開設する。共同でビジネスマンや経営者向けのネット広告需要を掘り起こし、収益増につなげる。自前のニュースサイト運営を拡大したいロイター・ジャパンと、ネット事業を強化したいプレジデント社の思惑が一致した。



開発中の新サイトの画面
 新サイトの名称は「プレジデントロイター」(http://www.president-reuters.com)。ロイターが経済ニュース、プレジデント社がビジネス誌「プレジデント」の掲載記事をそれぞれ新サイトに掲載する。雑誌記事は最新号の一部(目玉記事を数本)に加え、過去の掲載記事を再編集したものと、ネット独自の記事を掲載する計画。


 同日都内で会見したプレジデント社の藤原昭広社長は「ヤフーから事業提携の話をいただいたこともあったが、ロイターは『ビジネスの意思決定層と富裕層』という同じ読者層を持っていた」点を重視して提携を決めたと説明した。トムソン・ロイター・ジャパンのメディア事業部門の責任者である楠山健一郎ゼネラルマネージャーは「(ビジネス誌と組むことで)広告主の幅がナショナルクライアントにも広がる」と提携のメリットを話した。


 広告営業の面では、ネット系広告代理店への営業をロイターが担当。プレジデント社は総合広告代理店への営業と雑誌とネットを組み合わせたクロスメディア広告の営業を担当する。両社とも広告売り上げは明らかにしていないが、ロイターは新サイトの開設効果として、広告売り上げの2―3割増を見込んでいる。プレジデント社はこれまでネット広告の営業を手掛けてこなかったといい、新たにネット広告収入を得る。


(注=登記上の社名はロイター・ジャパンだが、2008年4月にカナダの金融情報大手のトムソンが英ロイターを買収したため、トムソン・ロイター・ジャパンの表記を使っている)


2008年7月19日土曜日

「メタバース協会」発足、調査研究やセミナー実施

080719  仮想空間サービスに関連する企業やアーティスト、研究者などが集まる団体「メタバース協会」が7月18日発足し、都内で会見を開いた。



 理事長にデジタルハリウッド大学の杉山知之学長が就任したほか、ベンチャー育成などを手がけるngi groupの小池聡社長やパソコン関連機器を販売しているサンワサプライの山田哲也社長、人気ロックバンド「シャ乱Q」のリーダーはたけ氏らが理事として参加している。


 「メタバース」とは、「メタ(超越した)」と「ユニバース(世界)」とを合わせた造語で、1990年代のアメリカのSF小説「スノウ・クラッシュ」に初めて登場した。現在は、コンピューター・グラフィックスを利用したネット上の仮想空間サービスを指す言葉として用いられている。


 会見に臨んだ杉山理事長は「安全・安心な形でこの分野を発展させていくとともに、国際的な標準を日本のメタバースに取り入れ、同時に日本からも情報を発信していきたい」と抱負を語った。また常任理事の一人である三淵啓自デジタルハリウッド大学教授は「文字だけ、絵だけを扱うサービスなら、海外のものをそのまま国内に持ち込むこともできる。しかしメタバースは文化や感性に深くかかわるだけに、そのままでは普及は難しい」と指摘すると同時に「日本のコンテンツをもっと世界に広めるためには、国際的な標準に基づく必要がある」とも述べ、ローカルな視点とグローバルな視点とを両立させることが重要だと主張した。


 今後、協会では各種の調査研究や、セミナーなどの実施を予定している。


メタバース協会
http://www.metaverse-association.jp/


2008年6月20日金曜日

オートロックマンション、新聞配達と防犯の両立めざす――三井不動産レジデンシャルが新システム

システム概念図(クリックすると大きくなります)




 三井不動産子会社の三井不動産レジデンシャル(東京・中央)は、オートロックマンション向けに、入居者の各戸の玄関まで新聞を配達できるようにした新しいセキュリティーシステムを開発した。新システムを担当する都市開発事業部開発室主任の久松壮氏に、新聞配達と防犯性を両立させるための工夫や、開発の背景を聞いた。



――どんなシステムなのか


 新聞配達員があらかじめ配布されたICカードと暗証番号を使い、マンションの集合玄関の鍵を開ける。このとき、集合玄関に設置した監視カメラが自動的に高画質モードに切り替わり録画を開始。さらに、スピーカーから「監視モードに切り替えます」というアナウンスが流れ、集合玄関の近くにいる住民に配達員が入ったことを知らせる。


 「ICカードと暗証番号があっても、朝5時~7時しか入れない」といった時間制限を設定することもできる。万が一、配達員がICカードを紛失してしまった場合は、システムを操作すれば、すぐにカードを無効にできる。


 鍵製造最大手の美和ロック(東京・港)、綜合警備保障と連携しながら開発した。来訪者が部屋番号を入力するための数字ボタンを暗証番号入力に対応させるのに苦労したが、従来のセキュリティーシステムに備わっている設備を有効活用することで導入コストを抑えた。新築で導入する場合は、従来のシステムとほとんど変わらない。


――開発の背景は


 当社がマンション販売後に実施する入居者アンケートでは、必ず「新聞は読みたいけれど、集合ポストまで取りに行くのは…」といった意見が出てくる。管理人が24時間常駐するような大規模マンションでは、管理人が新聞配達員を確認して入館を許可する事例が生まれているが、数十戸程度の規模のマンションでは難しい。24時間常駐にすると、入居者の費用負担が重すぎるからだ。


 24時間常駐ではないオートロックマンションのなかには、各戸への配達を実現するために事前に集合玄関の鍵を新聞配達員に渡しておいたり、早朝の一定時間にオートロックを解除したりするところもあるが、セキュリティーの面では問題が残る。当社の物件は、2つのオートロックを解除しないと各戸の玄関まで行けない「ダブルオートロック」などのセキュリティー機能が売り物の一つ。セキュリティーを考えながら各戸への新聞配達ができれば、これも売り物できる。


――今後の展開は


パークホームズ目黒中町の完成予想図
 まず6月中旬から販売を始めた「パークホームズ目黒中町」(東京・目黒)で導入し、首都圏の新築物件から展開していく予定だ。既存の物件にシステムを販売する可能性も検討している。実際に既存マンションの管理組合から問い合わせが来ており、大規模修繕工事のタイミングに導入可能だと思う。今回のシステムの外販は考えていないが、同業他社にも同様の動きが広がるのではないかと考えている。


■関連リンク
ニュースリリース(PDFファイル)
三井不動産レジデンシャル http://www.mfr.co.jp/


2008年6月4日水曜日

「モバイル広告出稿、モバイルサイト常設企業の4割を超える」――広告主の利用動向調査

 日経広告研究所、ディーツー
コミュニケーションズ、日経メディアラボは、広告主となる企業を対象にモバイル広告の利用動向を調査した。それによると、モバイルサイトを常設している企業のうち07年度にモバイル広告を出稿したのは42.9%と、2年前と比べ約20ポイント上昇した。また、モバイルサイトに「会社案内」「求人情報」を掲載する企業が増えてきており、商品情報以外に企業情報もモバイルサイトで提供する動きが広がっている。





 調査は2008年2-3月に実施。日経広告研究所の「有力企業の広告宣伝費」の上位1500社に聞いたところ、218社の回答を得た。





 07年度にモバイル広告を出稿した企業は18.3%で、前年から約5ポイント上がっているが、これをモバイルサイト常設企業に絞って見てみると、42.9%がモバイル広告を出稿している。この数字は05年度が20.8%、06年度が33.0%と、この2年間で10ポイント前後ずつ伸びている。


 モバイルサイトを常設しているが、モバイル広告を出稿していない企業に今後の利用予定を聞いたところ「現在、利用を検討している」が21.6%、「検討までいたっていないが今後利用したい」が21.6%となり、4割強が利用意向を示した。特に「現在、利用を検討している」と回答した企業は前年より約5ポイント伸びている。


 
モバイルサイト常設企業は全体の35%と、過去3年ほぼ横ばいながら、広告出稿企業や利用意向が伸びていることを考えると、モバイル広告への意識が高まっているといえるだろう。


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モバイルサイトも企業の顔に


 キャンペーン用の期間限定サイトなど常設ではないものを含め、モバイルサイトをなんらかの形で開設している企業に掲載内容を聞いたところ、「商品情報」「キャンペーン情報」がそれぞれ74.7%、62.1%と大きく他の内容を引き離している。モバイル常設サイトに絞って、過去3年の結果を見てみると、数字は他の項目と比べてまだ低いものの、「会社案内」「求人情報」が地味に数字を伸ばしている。


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 過去3年で「会社案内」は、21.9%、27.8%、36.4%と3割を超え、「求人情報」は8.3%、6.2%、14.3%と1割を超えた。


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 PCサイトでは「会社案内」が94.9%、「求人情報」が83.3%ということを考慮すると、まだまだ大きな差があるが、モバイルサイトを徐々に企業の顔としてPCサイトとあわせて使っていく企業が増えている動きを感じる。


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 モバイルの利用者層および個人の端末という特性を考えると、今後「求人情報」を掲載する企業が増えてもおかしくない状況なので、今後の動向に注目したい。




クチコミ効果は高い評価


 モバイル広告の評価について、回答企業全体に聞いたところ、「ターゲットを絞り込みやすい」が33.0%で、3年連続トップとなったが、「クチコミ効果が期待できる」が3年間で徐々に伸びてきており、28.9%で、上位に食い込んできた。特に、モバイル広告出稿企業で数字を見てみると、05年が7.1%、06年が29.7%、07年が45.0%となり、過去3年間で大きく伸びている。

 モバイル出稿企業の数字では「効果がすぐに把握できる」(57.5%)「ターゲットを絞り込みやすい」(50.0%)に次ぐ結果で、全体よりは少し順位を下げる。全体の数字を考えても、モバイル広告の3つのキーワードとして「ターゲティング」「クチコミ効果」「即効性」が浮かび上がりそうだ。



詳しいリリースはこちら


2008年5月30日金曜日

「仮想空間サービス、10年で100倍に」セカンドライフの創始者が講演

08052901_3 仮想空間サービス「セカンドライフ」を運営する米リンデンラボの創業者で会長のフィリップ・ローズデール氏が29日、都内で講演した。仮想空間サービスの発展に自信を示すとともに、新たな技術開発によって新規ユーザーの獲得をねらう考えを明らかにした。



 東京ビッグサイト(東京・江東)で28日から開かれている「Virtual World Conference & Expo 2008」の基調講演者として登壇したローズデール氏は、今月15日にCEO職をネット広告企業出身のマーク・キングドン氏に譲ったばかり。日本で講演するのは初めてとあって、多くの聴衆が会場につめかけた。


 ローズデール氏は、仮想空間サービスは今後10年で100倍に成長する、とその将来性に自信を示した。仮想空間の現状を1995年ごろのインターネットになぞらえ「当時インターネットは使いにくいとか、必要な情報がどこにあるのか分からない、といった不満が多かったが、今や社会に欠かせないものになった」として、まだこのビジネスが成長の初期段階であることを強調した。


 「セカンドライフは、まだEコマースの段階ではない」とも指摘した。現在は多くのユーザーが楽しさを求めて集まっている状態であり、次のステップとしては教育での利用に期待しているという。すでにセカンドライフ内の土地を最も多く所有しているのは教育機関だ、と明かした。その次にねらうのは企業内の利用であり、最終的に、企業が仮想空間をビジネスに活用して成長できるフェーズに至る、というのがローズデール氏の描く将来戦略だという。


 今後は技術的な課題に取り組み、ソフトウエアをダウンロードせずに仮想空間を楽しんだり、情報を簡単に検索したりできるようにしたいと話した。また日本市場もにらんで、携帯端末でどのようなサービスを展開できるか検討中という。


08052902_2  この講演はセカンドライフ内でも中継され、仮想空間に設けられた講演会場から質問も受け付けた。「セカンドライフ内の人口が減っているのでは」という質問が出ると、ローズデール氏は「試しに登録してみて、そのあとも継続してユーザーとなる人は1割程度。去年は急激に登録者が増えたので、その分落ち込んでいるようにも見えるのだろう」と説明。上記のような技術開発を進めることで、より多くの新規ユーザーが手軽に仮想空間に入れるようにしたい、と語った。


2008年5月20日火曜日

モディファイのRSSフィード活用サービス、法人需要に照準

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 モディファイ(東京・渋谷、小川浩社長)は5月19日、RSSフィードを活用した情報収集・共有サービス「MODIPHI APPS(モディファイ・アップス)」を公開した。1年前(2007年5月)から試験提供してきた無料サービスをリニューアルし、法人向けの有料サービスとして展開していく(ただし個人、大学、官公庁などは引き続き無料で使える)。



 新サービスではRSSリーダーのほか、RSSフィードの編集機能、収集・作成したRSSフィードをブログやホームページの部品として加工できる機能などを提供する。機能追加に加え、画面のデザインも以前の黒とシャンパンゴールドの組み合わせから、白を基調にしたシンプルなものに変更した。企業の広報・IR(投資家向け広報)や、従業員の情報共有に使う企業情報ポータルに組み込む用途などを見込んでいる。


 法人は月5250~12万6000円の利用料を支払う仕組み。年間100社からの受注を目指す。同日都内で会見した小川社長は「1年前に試験提供を始めた当初は、企業向けにするか個人向けにするか見極めがつかなかったが、個人の利用者が(RSSフィードを使って集めた様々な情報を加工して)どんどん情報発信していくのはまだ先だと判断した」と話した。また、法人向けの用途に的を絞ったサービスを提供することで、利用者が好きなコンテンツを選んで1つのウェブページに表示できるグーグルの「iGoogle」サービスなどととは違う市場を開拓していくという。


■関連リンク
ニュースリリース (日経プレスリリース
MODIPHI APPS http://www.modiphi.com/


2008年5月9日金曜日

ヤフーと「ニコニコ動画」提携――動画検索、通販、ID共有など幅広く連携

 ヤフーとドワンゴ子会社で「ニコニコ動画」(以下、ニコ動)を運営するニワンゴ(東京・中央、杉本誠司代表取締役)は5月9日、両社のサイトの連動性を高める業務提携を発表した。同日からヤフーが提供する動画検索機能やツールバーを使って、ニコ動に投稿された動画を検索できるようになったほか、ニコ動の通販コーナー「ニコニコ市場」で「ヤフー!ショッピング」の商品を取り扱えるようになった。順次、利用者IDの共用化や広告などでも連携していく。





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 ニコ動にログインしないと見られない動画も、ニワンゴがヤフーに情報提供することでヤフーで検索できるようにした。(写真はヤフーの動画検索機能を使って検索してみた画面。ニコ動の動画をクリックすると、ニコ動のログイン画面に移動する)


 両社が発表した提携内容は以下の通り。
・ニコニコ市場がヤフー!ショッピングに対応
・ヤフーでの動画検索に対応
・ヤフー!ツールバーを使った動画検索に対応
・ニコニコ動画とヤフー!オークションの連携(順次対応)
・ヤフー!ブログへのニコニコ外部プレーヤー機能提供(順次対応)
・ヤフー!の利用者IDでニコニコ動画を利用可能(順次対応)
・ニコニコ動画の決済手段にヤフー!ウォレット導入(順次対応)
・検索連動型広告の導入(順次対応)


■関連リンク
ニワンゴのプレスリリース
http://info.niwango.jp/pdf/press/2008/20080509.pdf
ニコニコニュース(ニコニコ動画)
http://blog.nicovideo.jp/niconews/2008/05/001188.html


2008年4月24日木曜日

twitterに日本語版、広告事業を展開

 米トゥイッター(本社カリフォルニア州)は4月23日、ミニブログサービス「トゥイッター(twitter)」の日本語版を公開した。英語版には無いバナー広告の掲載スペースを設けており、資本・業務提携しているデジタルガレージを通じて日本で広告事業を展開する。



写真上は日本語版のトップページの例、写真下は英語版
��写真上は日本語版のトップページの例、写真下は英語版=クリックすると大きくなります)



 同日、デジタルガレージなどが都内で開いた会見によると、英語版ではまだ広告を掲載しておらず、日本を広告事業の実験場にするという。デジタルガレージ子会社のCGMマーケティング(東京・渋谷、林郁社長)が広告営業を担当。日本語版もサイト運営自体は米トゥイッターが担当する。


 まずトヨタ自動車、エン・ジャパン、トゥイッター関連本の出版社の広告掲載を始めた。トヨタ自動車は自社の自動車情報サイト「GAZOO.com」の更新状
況をトゥイッター内で配信している(トゥイッターの投稿の表示によると、RSSを使って更新情報をトゥイッターに自動投稿するサービス「twitterfeed」を利用しているとみられる)。


 今後は、モバイル版サービスの追加や、トゥイッター日本語版と他社のウェブサービス(例えばグーグルの地図サービス)と組み合わせたサービスの開発など、新しい広告メニューを追加していく。


 トゥイッターは外部の人々が自由に関連サービスやソフトを開発でき、利用者もそれを自分で組み合わせて使えるのが人気の要因の一つだが、「関連サービス・ソフトを通じてトゥイッターを使っている人はバナー広告を見ないのでは」と指摘する声もあり、日本で広告事業を展開しながら課題解決に取り組んでいくという。





(参考:日本語版公開を報じた主なニュース記事)
「広告モデルの実験にも期待」・ツイッター日本語版オープンで会見(NIKKEI NET)
Twitter日本語版スタート トヨタが広告出稿(ITmedia)
Twitter日本語版サービスが開始(Impress Watch)
Twitter、日本人率は4分の1以下(ASCII)



2008年4月23日水曜日

Q&Aサイト「Yahoo!知恵袋」、利用者数が1年で2.7倍に――ネットレイティングス調査

 インターネット視聴率の調査会社、ネットレイティングス(東京・渋谷、萩原雅之社長)は4月22日、2008年3月のインターネット利用動向調査の結果を発表した。CGMの一分野である「Q&Aサイト」の利用が急増。ヤフーの「Yahoo!知恵袋」の月間利用者数が前年同期比2.7倍の1261万人、NTTレゾナント(東京・千代田)の「教えて!goo」も同1.5倍の781万人になった。



 調査は家庭のパソコンからのアクセスが対象。萩原社長は「昨年2月にもQ&Aサイトの成長に注目したデータを公表したが、その後も予想を超えるスピードで拡大している。米国と比べて利用率が高いことから、日本人好みのサービスともいえそう」と分析している。


(ネットレイティングスの発表内容はこちら↓)
成長著しい知識・情報共有サービス、「Yahoo!知恵袋」の利用者数は1年で2.7倍に(2008年4月22日)
「教えて! goo」、「Yahoo! 知恵袋」が急成長、利用者が共に初の400万人超え(2007年2月22日)


◇ ◇ ◇

 日経メディアラボは2007年11月に実施したネット利用者アンケート(20―50代の男女計1000人)で、各種CGM(ブログ、SNS、動画共有サイト、掲示板、クチコミサイト、Q&Aサイト)の閲覧頻度の変化を尋ねたことがある。そのときの結果によると、回答者のうち22.6%が「Q&Aサイトの閲覧が1年前に比べて増えた」または「1年前に比べてやや増えた」と回答。動画共有サイト(46.9%)、SNS(38.3%)、ブログ(32.2%)ほど多くはなかったが、クチコミサイト(22.3%)、掲示板(21.6%)を上回る勢いをみせている。


2008年3月28日金曜日

シンポ「メディア利用の変化にどう対応していくのか」(1)

左からヤフーバリューインサイト・西部氏、大日本印刷・中島氏、電通総研・藤井氏
 日経メディアラボは3月12日、「メディア利用の変化にどう対応していくのか」と題したシンポジウムを都内で開催した。メディア利用に関する調査研究を手掛けている電通総研(東京・港)と大日本印刷、日経メディアラボと共同調査をしたヤフーバリューインサイト(東京・港)からパネリストを招き、人々のメディアの使い方の変化に対する見解や、その背景などについて討論してもらった。



(写真は左からヤフーバリューインサイトの西部君隆氏、大日本印刷の中島良彦氏、電通総研の藤井良彦氏)






………………………………………………………………


▼この日の登壇者は以下の通り。
・電通総研取締役・藤井良彦氏
・大日本印刷C&I事業部マーケティング情報開発室室長・中島良彦氏
・ヤフーバリューインサイト リサーチ&コンサルティング本部リサーチャー・西部君隆氏
・日経メディアラボ研究担当部長・種村貴史
(司会は日経メディアラボ所長・坪田知己)


 シンポジウムではまず(1)日経メディアラボとヤフーバリューインサイト、(2)大日本印刷、(3)電通総研の順で、各社の調査結果や見解を紹介した。


「ネット利用、”読むだけ”の人々が増加」


 日経メディアラボとヤフーバリューインサイトは、20~50代の男女ネット利用者を対象に2007年11月末に実施したネット調査の結果を説明した。
(→詳しくは日経メディアラボ「2008年のメディア予測」)


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 CGMの活用度の違いによって、利用者を5つのグループに分類。今後はサイトを閲覧するだけの「ROMマジョリティー」層が増えていく可能性を指摘した。「情報受発信族」「ブロガー」の中からネット上での情報発信に疲れたり飽きたりした人が「ROMマジョリティー」に流入する一方、調査時点で最も多かった「情報未活用族」の中からもITリテラシーが上がって「ROMマジョリティー」に”昇格”する――というシナリオだ。


 日経メディアラボでは過去の別の調査の結果から、「インターネットの普及により、自分の欲しい情報を自分で収集し、自分からも積極的に情報発信する人が増えていく」という仮説を立ててきたが、今回説明した調査では逆の結果が出た。


「コミュニケーションする生活者・しない生活者」


 大日本印刷・中島氏は2001年から続けている「メディアバリュー研究」を紹介した。生活者が買い物をするときの情報収集に焦点を当てて、インターネットやテレビ、新聞、折込チラシなどの使い分けなどを調べている。
(→詳しくは大日本印刷「メディアバリュー研究」)


 ここ2~3年の新しい傾向として、「コミュニケーションする生活者としない生活者が二極分化してきた」ことを指摘。インターネットの口コミサイトやSNSの登場やメーカーサイトの拡充などで情報収集の選択肢が広がった反面、情報が氾濫するなかで自分に入ってくる情報を自分で制限する生活者が登場してきたという。


 ただ、商品分野によって情報収集のタイミングや方法が異なるうえ、同じ生活者でも関心を持っている商品と持ってない商品では情報収集が異なる。例えば洋服に関心のある人は店頭で店員から聞いた情報で購入を決定し、関心ない人は家族のアドバイスで決める。パソコンに関心のある人は購入前にインターネットで比較検討し、関心ない人は店頭で店員の話を聞いて選ぶ。


「メディアに対して能動的なシニア・受動的な若者」


 電通総研・藤井氏は世代によるメディア利用の違いに着目。おおよそ昭和43年(1968年)生まれを境に、それより上の世代はメディアに対して能動的に接触するが、下の世代はメディアを環境の一部として受動的に接触していると指摘した。さらに、おおよそ22歳以下の世代は、子供のころから携帯電話やパソコン(インターネット)が身近にあり、上の世代とのメディア体験に大きな違いがあるとした。

(藤井氏のその他の発言要旨)
・世代が若くなるほど、メディアに「正しいこと」よりも「自分にとって楽しいこと」を求めている。年齢の高い世代はニュース=世の中の動きだが、若者にとってはニュース=自分の関心があることに関する最新情報。ニュースを読む媒体の違いだけでなく、ニュースの中身から異なっている。

・世代にかかわらず、以前は1対1だった生活者とメディアの関係が変化。電通総研の調査で「テレビを見ながらネットをする」人が8割近くを占め、1人が同時に複数メディア(平均3.83)と接触するのが基本になっている。ネットとテレビは敵対する関係ではない。

・メディアのビジネスモデルについては、ロングテールの需要を満たすサービスは少数のマニアから利用料を受け取る完全有料モデル、対極にあるショートヘッド(マス)のサービスでは無料モデル、と二極化が進む。課金と広告収入を併用するメディアは有料モデルか無料モデルに移行する必要が生まれる。

・情報はあって当たり前のもの、特別なものではなくなった。情報のコモディティー化(日用品化)が進むなかでは、情報の中身よりも「パッと見て面白いかどうか」が重要だ。典型的なのはテレビで流行っているIQクイズ番組。いかにも答えられなさそうなタレントが難しい漢字を読めたり、大学の先生が単純な計算を間違えたりする様子を面白く組みあわせて間を持たせるところがコモディティーとしてのテレビの強みだ。



2008年3月6日木曜日

「地域社会にガッチリ食い込む」――河北新報のSNS「ふらっと」

河北新報社の佐藤和文氏
 東北地方でブロック紙を発行する河北新報社(仙台市)のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「ふらっと」が来月、開設1周年を迎える。地域密着型のSNSが全
国各地に登場しているが、新聞社がSNS運営に乗り出す事例はまだ珍しい。河北新報社の佐藤和文メディア局次長兼ネット事業部長=写真=に、新聞社がSNSを運営する狙いやメリット、「ふらっと」の現状などを聞いた。



――「ふらっと」の現状は


 2007年4月17日にオープンし、約3000人が会員登録している。SNSの中で120~130のコミュニティー(会員が自由に設置できるテーマ別の掲示板)が設置され、毎日約30本の「ブログ」(注・外部のブログ開設サービスではなくミクシィ、グリーなどの「日記」にあたる機能)が更新されている。SNS開設当初は1万人を目標に掲げたが、運営してみると、今の規模で十分ではないかという実感もある。


 1000万人を超す人々がミクシィを利用する時代だが(2008年1月末時点のミクシィ会員数は1333万人)、自社でSNSをやってみると「SNSの使い方が分からない」という人が結構多い。「SNSのことはよく知らないが、河北新報が新しいことを始めたから」と、ふらっとに集まってくれた人もいる。当社の運営担当者も「ふらっと」に参加して、一般の会員と一緒にコミュニティーを盛り上げているところだ。


「ふらっと」のトップページ
 公募で選んだ一般の人に自分が住んでいる街のことを書いてもらう「街角ブロガー」(2008年3月5日時点で12人が執筆中)や、SNS内のブログと外部のサイトで書かれたブログのなかから面白いものを選んで紹介する「ブログ交差点」(同3月6日時点で164ブログ)などの企画を展開している。世間には新聞記者よりも専門分野に詳しい人がたくさんいる。その人たちの情報発信を支援することも、新聞社の仕事の一つになっていくのではないかと思っている。

――SNSを始めた狙いは


 (新聞離れが叫ばれるなかで)地方紙が生きていくためには、地域の人々とフェース・トゥ・フェースの関係を築き、地域社会にガッチリと食い込んでいくシナリオをつくっていくことが必要だ。


 まだ紙の新聞の編集局はネット活用に消極的だが、今後、紙面づくりにネットを活用したくなったときに使える環境を整えておきたい。ふらっとの会員でない人もSNSの中のコンテンツを見られるオープン型のSNSにしたのは、そのためでもある。今後は編集局と共同で、時事ニュースについて議論できるようなコミュニティーをつくりたい。


――新聞社がSNSを運営するメリットは


 ふらっと開設前は、いろいろな人から「(利用者が自由に投稿できる)SNSで、投稿が荒れたらどうするんだ」と言われたが、実際には荒れる事態は起きていない。「新聞社が運営しているSNS」というステータスが安全装置として働いているのではないだろうか。


 積極的に地元を盛り上げようと考えている人たちとのつながりを作りやすいのも、新聞社が運営する利点の一つだ。例えば、宮城の日本酒をPRしようという人がSNSのコミュニティーに集まっている。


 新聞社の運営ということで、地元自治体との連携も生まれている。2007年10月から、仙台市がごみ減量のPRに、ふらっとのブログ機能を活用している(「セツコさんのワケル塾」)。自治体にとっても、新たな予算を使わずに済む利点がある。


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