2010年3月5日金曜日

地域ニュースは競争力の源泉・北日本新聞、ウェブ新聞「webun」創刊 

Webun0303   北日本新聞社(富山市、河合隆社長)は1月1日、会員登録制のウェブ新聞「webun(ウェブン)」を創刊した。会員になると朝刊の記事に加え、主要紙面のイメージや動画ニュースなどを閲覧できる。必要な記事を保存しておける「マイスクラップ」などの機能もある。北日本新聞(月額2987円)の購読者は無料で登録可能だが、配達区域外に居住している場合はwebun単体を月額2100円で利用できる。



 北日本新聞社は2009年12月末に夕刊を廃止しており、朝刊+ネットという体制への完全移行を果たしたことになる。その戦略と今後の展望について、同社メディア情報局長の棚田淳一氏(=写真下)に話を聞いた。


――webunはどういう意図で企画されたのか


ひとことで言えば、紙の新聞を維持する、ということだ。新聞購読者にインセンティブとして提供し、できればもう一歩踏み込んで、読者を増やすきっかけにもしたい。


昨年末に夕刊を廃止したが、webunでは最新ニュースをウェブファーストで伝える。朝刊とwebunを通じて新聞社の使命を果たしていきたい。


――全国・海外のニュースは登録せずに読めるようにした


通信社から配信される記事をクローズドにする理由はない。それらは他のウェブサイトでも読めるもので、差別化にはつながらないからだ。


しかし自分たちで取材した富山県内のニュースは他で読むことができない。ニッチなコンテンツ、という見方もできるが、それは競争力の源泉になる。だから会員登録して初めて読める仕組みにした。以前のウェブサイトでは自社で取材した記事も無料で公開していたが、そこに抵抗感があったのも事実だ。


――ウェブサイトを会員制にすると広告収入に影響が出るのでは


ネットの広告収入は、事業規模としては決して大きなものではなかった。その収入を守るために、多大な労力をかけて生み出した記事を無料で掲載する、というのは生産的とは言えない。むしろ、そうした記事の価値がストレートに収入につながるようなモデルを考えたかった。


そういう意味では、今回の試みはウェブサイトの「広告モデルから購読モデルへ」のシフトだ。ページのデザインも、ニュースの読みやすさを最優先している。


――県外読者の2100円という価格設定はどう決まったのか


細かい議論や検証も行ったが、大筋としては新聞購読費が約3000円なので、そこから印刷・配送コストを引いた価格、という考え方だ。


ただ、これで県外から大きな収入を得られるようになるとは期待していない。あくまで県内の読者に着実にニュースを伝えるのが第一だ。


――開発期間と体制は


2010030402 2年ほど前から社内でプロトタイプをいくつか作っていたが、2009年3月から具体的にプロジェクトが動き出した。本格的な開発が始まったのは7月。9月にはメディア情報局内のウェブ担当者を増強した。営業局にはクロスメディア営業部が発足、販売局にもwebun創刊を見据えた販売事業部ができるなど、組織も整ってきた。1月1日の創刊時からは、編集局にウェブ出稿担当デスクも置いた。


開発の中心となったのは地場のITベンダーである日本オープンシステムズ。データベース関連の技術に強いことを評価し、この案件を依頼した。デザインに強い企業にも参加してもらい、ジョイントベンチャー方式で進めた。紙面イメージを確認できるビューワーソフトは以前から研究しており、当社で仕様で固めたうえで開発してもらった。


webun創刊から2カ月が経過した3月1日にはメディア情報局にあった担当部署を編集局に組み入れ、編集局デジタル編集本部を新設。新たな体制で運用している。


――今後の展望について


ソーシャルメディア的な展開も含め、やりたいこと、考えていることは数多い。しかし、最初から全てをリリースすることは不可能であり、まずは創刊する、という一点に絞って開発を進めてきた。オリジナルコンテンツや機能の強化、あるいはデータベースマーケティングのような新しいビジネスは、これから考えていきたい。


いずれにしても、わが社にとって重要なのは富山という地域の活性化にどう貢献できるか、ということ。その視点で事業を展開していく。


・北日本新聞社「webun」
http://webun.jp/


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