2007年3月21日水曜日

慶大DMCなど、「情報産業省」構想の是非を議論

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 慶応義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構(DMC)、コンテンツ政策研究会、日経メディアラボは3月19日、コンテンツ産業に関連した政策を共同研究する「クリエイティブ産業政策フォーラム」を慶大三田キャンパスで開いた。今回は7回目。「情報通信省構想、その是非を巡って~メディア融合時代の規制機関の制度設計」と題し、省庁再々編の論議のなかで浮上している経済産業省や総務省などの情報通信部局の統合構想について議論を交わした。






  <パネリスト>


  • 岸博幸・慶應義塾大学DMC機構 助教授

  • 楠正憲・マイクロソフト最高技術責任者補佐

  • 境真良・早稲田大学国際情報通信研究科客員助教授

  • 宿南達志郎・慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所教授

  • 田川義博・マルチメディア振興センター専務理事

  • 坪田知己・日経メディアラボ所長

  • 中村伊知哉・慶應義塾大学DMC機構 教授

  • 藤元健太郎・ディー・フォー・ディー・アール社長

  • 金正勲・慶應義塾大学DMC機構 助教授 (コーディネーター)




 冒頭、岸氏が「現在、IT政策やコンテンツ政策は総務省、経済産業省、文化庁、内閣府など様々な省庁がかかわっている。例えば、音楽業界は規制について相談したいときに、どこの省庁に行けばいいか分からず困っている」と現在の組織の問題点を指摘。もし「情報通信省」に関連部局を統合するなら、「産業振興と規制という異なる業務を一つの役所にまとめてしまっていいのか、分けるべきなのか」と問題提起した。






 関係部署を統合することに対しては、肯定派からは「知識や情報が産業になる時代に重要なのは流通。インフラを考える情報通信省ではなく、情報流通産業省だ」(藤元氏)、「情報通信分野について、日本独自の世界戦略を考えるためには、情報通信省が必要」(坪田氏)との意見が出された。






 一方、慎重派からは「情報通信の用途や利用者は広くなっている。一元化は必要なのか」(田川氏)と統合自体に疑問を投げ掛ける意見に加え、「様々な省庁や民間などで業務を経験した柔軟な人材を育てる仕組みがないと、省庁の看板をかけかえただけでは意味がない」(楠氏)、「現在の役所では、専門的な知見のない人が専門的な問題に取り組んでいる。公務員の人事制度を開放的にする議論が必要」(境氏)と、組織の”箱”よりも人事制度の改善が優先課題だとする意見が出た。






 中村氏は「5年、10年と期間を区切って設置するなら、情報通信省があってもいい。通信と放送の融合やNTTの完全民営化、デジタル時代の著作権など、枠組みをつくらなければならないことがたくさんあり、期間を区切って取り組むのはどうか」と提案。宿南氏は、公正取引委員会や人事院のように独立性を持った組織形態である「独立行政委員会」で設立する方式を支持した。






 産業振興と規制の業務を別々の省庁に分けるべきかについては、「業務の線引きが難しい」(中村氏)、「規制の業務は一元化すべきだが、産業振興は複数の省庁が競争してもいい」(岸氏)といった意見が出た。






 独立行政委員会にする案については、中村氏と境氏が否定的な見解を示した。一方、「専門家など外部の人材を活用しやすい面がある」(岸氏)、「業界とのしがらみが切れる」(宿南氏)といった利点を指摘する声があった。





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