2008年10月28日火曜日

フォートラベル、名刺でつなぐブログコミュニケーション

QRコード入り名刺を持つ矢野さん
 日経メディアラボでは、「企業として、個人として、ブログとどう付き合っていくか」をテーマにレポートをまとめる予定です。ここでは取材結果の一部を紹介していきます。



 初回は旅行総合情報サイトを運営するフォートラベル(東京・千代田)の事例です。ブログと「紙の名刺」を組み合わせたサイトのPRについて、経営企画室広報担当の矢野智美さん=写真=への取材の概要をまとめました。



◇ ◇ ◇

 フォートラベルのサイト(サイトの名称も「フォートラベル」)は、個人会員に対して旅行をテーマにしたブログ開設サービスを提供。多くの会員がブログに投稿した旅行記や写真、クチコミ情報を地域別に再編集して、旅行情報サイトをつくっている。月間で320万人(2008年8月)が利用するメディアに育っている。


 サイトのPRに一役買っているのが名刺だ。会員に対し、ポイントを貯めると「ブログカード」と呼ぶオリジナル名刺を贈る仕組みを用意している。自分の「トラベラー名」(サイトの中で使うニックネーム)や旅行記のURLが印刷されている。「旅先で知り合った人と、旅行後もブログを使ったコミュニケーションを続けたいけれど、自分の本名や連絡先を明かすのは抵抗がある」という会員のニーズにマッチしたという。


ブログカードのデザイン例
 社員のほとんどが旅行好きという同社の社内から生まれたアイデア。社員も率先して旅行ブログを開設し、仕事で使う名刺に旅行記のURLとQRコード、自分で撮影した写真を載せている。


 フォートラベルのポイントは、会員が所定の場所をクリックしたり(1回10ポイント)、アンケート調査に答えたり(同100ポイント)するとたまる仕組み。ブログカードと交換するには7000ポイント必要で、これまでに約30人が交換したという。


 さらに、同社が開いた会員同士のオフ会の参加者にブログカードを無料で配布し、試してもらった。「配りすぎてなくなってしまったので増刷してほしい、との要望もある」(矢野さん)。好評だったため、今後はオフ会を開く際にスポンサー企業を募り、広告入りのブログカードを参加者に無料で配ることも検討している。


 名刺にQRコードを入れていることから、名刺からの携帯サイトへのアクセスを測定できるようになると、名刺を使ったPR効果が明確になりそうだ。ただ、現在はパソコン用のサイトのトップページにも同じQRコードを載せているため、誘導元の判別はできないという。


■関連リンク
フォートラベル http://4travel.jp/


2008年10月13日月曜日

日中比較・北京五輪のメディア利用(2)――大イベントでは依然強いテレビ

 日経メディアラボは中国の清華大学、東京大学と共同で、日中の20代のメディア利用比較調査の結果をまとめた。調査は2007年に続き2回目(前年の結果はこちら)。今回は2008年8月の北京五輪に関する情報収集をテーマに調査・比較した。

 ここでは調査結果のなかから、調査に参加してもらった東大大学院情報学環・橋元良明教授が注目したポイントを紹介する。



 調査は北京五輪閉幕後の8月下旬に、ウェブを使ったアンケートを実施。ネット調査会社のヤフーバリューインサイト(東京・港)などの協力を得て、日中の大都市(東京、大阪、北京、上海)に住む20代の男女ネットユーザー計1200人から回答を得た。同じ条件で30代(日中200人ずつ)、40代(同)からも回答を集め、世代間の違いを判断する材料にした。


 調査結果に対し、橋元教授は「ネット調査であり、調査対象者に偏りがあることを認識した上で結果をみる必要がある。特に中国の調査対象者は、平均よりかなり高学歴・高所得でIT慣れしている」という前提を指摘したうえで、「それを差し引いてみても、いくつか注目すべき点がある」とみている。


 





(1)中国20代のネット利用時間の長さ


 「自宅でも自宅外でも、日本人に比べ、ネットの利用時間が極めて長い。半数以上が自宅で1週間10時間以上、約半数が自宅外でさらに10時間以上ネットを利用。平日1日平均5時間パソコンに接している」(橋元教授)



��↓グラフをクリックすると拡大します)


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(2)中国20代、メディア接触の中心はネット


 「日常的にも、メディア接触で中心的な地位を占めるものは、テレビからパソコンに移行している。日本ではテレビとパソコンがほぼ拮抗している」(橋元教授)


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(3)大イベントではネットよりテレビ


 「それでも五輪競技については、情報収集の中心は日本と同様にテレビであり、大きなイベントに関する情報伝達手段としてのテレビの重大性は減少していない。五輪で最も印象に残ったシーン(中国では開会式)は、ほとんどテレビで見ており、テレビがもつインパクトの大きさは、まだ他のメディアでは追いつかない」(橋元教授)


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(4)携帯活用、中国のほうが活発


 「携帯電話がマルチ機能化しているのは日本と同様であるが、日本以上に動画撮影、動画再生が活発である。一部の人の携帯の利用法は、日本以上に多彩で先進的である」(橋元教授)。ゲームや音楽ダウンロードでも中国の利用率の高さが目立っている。


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 橋元教授は今回の調査結果を見た印象として、「中国の20代のネット利用層においては、日本以上に、ネットからの情報収集が中心的なものになっており、情報接触の側面で、ネットを利用していない層との格差が増大している。ただし、五輪のような大きなイベントについては、まだテレビの影響力はずば抜けたものがあり、『メディアの王様』としての地位は不動である」と総括している。



日中比較・北京五輪のメディア利用(1)――中国20代、普段はネットでも五輪はテレビ

 中国都市部の20代、普段の情報収集はテレビよりインターネットだが、北京五輪に関してはテレビ中継を熱心に見ていた――。日経メディアラボと中国の清華大学、東京大学の共同調査で、こんな中国の若者のメディア利用傾向が浮かび上がってきた。(10月13日付の日本経済新聞朝刊にも記事)



(↓グラフをクリックすると拡大します)


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 なかでも開会式への関心が極めて高く、回答者の88%が「テレビ生中継を(録画でなく)リアルタイムで見た」と答えたほか、印象に残っている出来事を挙げてもらう設問でも94%が「開会式の演出」と回答した。日本では「少女の歌声が別人だった」などの点が話題になったのと異なり、中国では「聖火の点灯シーン」をはじめ好意的に受け止められている。


 普段のメディア利用時間(1日当たり平均)で見ると、中国の20代はネットが中心(ネット40%、テレビ23%)。スポーツ情報に限っても普段使うメディアはネットが47%と、テレビの35%を上回っている。北京五輪に関してはテレビが67%に上昇し、ネットが26%と逆転した。


 調査は北京五輪閉幕後の8月下旬にインターネットを使ったアンケートを実施。日中の大都市(東京、大阪、北京、上海)に住む20代の男女ネット利用者計1200人から回答を得た。


日本の20代、「パソコンや携帯を使いながらテレビ」


 日本の20代は、普段でも五輪関連でも情報収集はテレビ中心。中国と異なりテレビのスポーツニュースを利用して手早く情報収集する人が目立った。印象に残っている出来事では「競泳の北島康介選手の金」(71%)、「ソフトボール日本代表の金」(65%)など、自国の選手の活躍が上位を占め、「開会式の演出」は21%にとどまった。


 また「テレビのスポーツ中継を見ながらパソコンを使う」人が55%、「テレビのスポーツ中継を見ながら携帯電話を使う」人が40%を占め、日本の20代に特徴的なメディア利用法であることが分かった。 


 崔保国・清華大教授の話 中国で開会式に注目が集まったのは、中国初の大規模国際イベントということで、スポーツ観戦に関心がない人も巻き込んだからだろう。北京では開会式当日が休日になったため、家族そろってテレビの前に集まった家庭も多かったようだ。


 橋元良明・東大教授の話 パソコンや携帯電話をいじりながらテレビを見る傾向は、日中ともに今後もさらに顕著になるだろう。今後は送り手側もテレビ、パソコン、携帯という3つのメディアを有機的に関連させながら情報提供することが重要になっていくだろう。



>>続き 日中比較・北京五輪のメディア利用(2)――大イベントでは依然強いテレビ



2008年10月12日日曜日

コンテンツ学会が発足・『行動できる組織』目指す

Horibe_2  コンテンツ分野の研究を総合的に進める「コンテンツ学会」が11日発足し、東京・秋葉原で設立記念シンポジウムを開催した。



 コンテンツについてはこれまでもさまざまな角度から研究がなされてきたが、この学会ではそれらを連携させる基盤となることを目指す。ほぼ毎週研究会を実施し、産業、政策、技術、表現という4つの領域を中心に学際的に活動していく予定という。


 会長には一橋大学の堀部政男名誉教授(=写真)が就任し、副会長には杉山知之デジタルハリウッド学校長、玉井克哉東京大学教授、中村伊知哉慶應大学教授、和田洋一スクェア・エニックス社長の4人が選出された。


 事務局長を務める金正勲慶應大学准教授は会の趣旨を説明する中で「この数年コンテンツ立国ということが言われてきたが、学界は何もしていなかったのではないか」と強い口調で指摘。それを反省し仕切り直しをするためにも、この学会は権威主義を排除し、志のある者が行動できる組織にしていこう、と訴えかけた。


 聴講者との質疑応答では、国際競争力という視点から考えて日本のコンテンツ産業にはどのような特徴があるか、という問いに対し、副会長の杉山氏が「たとえばサンリオの『ハローキティ』は、スリッパのような日用品にもプリントされるが、ヨーロッパの有名ファッションブランドともコラボレーションできる。マンガは、子供も読んでいるけど総理大臣だって読んでいる」と述べ、所得や世代、社会的立場で分かれる様々な層を越えて広く普及していけるのが日本のコンテンツの強みだという考えを示した。


コンテンツ学会のWEBサイト
http://contents-gakkai.org/


2008年10月9日木曜日

「安心ネットづくり」促進協議会が発足・IT企業トップら会見

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 青少年が安心してインターネットを利用できる環境整備を目指す「安心ネットづくり促進協議会」が来年1月に発足する。8日、発起人を務めるIT企業の社長らが一堂に会し、活動内容や方向性を明らかにした。





 この会見にはNTTドコモの山田隆持社長 、KDDIの小野寺正社長、ソフトバンクモバイルの孫正義社長という携帯3社のトップが顔をそろえたほか、井上雅博ヤフー社長、笠原健治ミクシィ社長、南場智子ディー・エヌ・エー社長らネットサービス大手のトップも参加。IT業界全体で取り組む姿勢をアピールしたほか、清原慶子三鷹市長や堀部政男一橋大学名誉教授らも出席し、民間主導ながら産官学の連携も重視する姿勢を示した。


 協議会は来年1月に発足し、4月から事業を開始する。2009年度は「総合的なリテラシー教育」「民間による自主的取り組みの促進」「利用環境整備に関する知見の集約」を事業の柱として活動するという。会の世話人を務める中村伊知哉慶應大学教授は「この分野ではさまざまな取り組みが自発的に生まれているが、この協議会を通じそれらの活動を連携させ、『点から面へ』展開していきたい」と述べた。


 会見の中で孫社長は「世界一早くて安いブロードバンドネットワーク、ハイスピードの第三世代携帯電話の普及など、日本のインフラは先進的だが、コンテンツ・アプリケーションの分野ではまだ世界的に見て後れを取っている。ネットの安全安心に先んじて取り組み、他の国に参考にしてもらえるようにしていきたい」と意気込みを述べる一方、「小中学生に携帯を持たすな、とか、インターネットに触らせるな、といったことになると、若者を『インターネット音痴』にしてしまい、日本の国際競争力をそぐことになる。バランスが重要だ」と、政治・行政による過度な対策へのけん制も忘れなかった。


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