2007年12月17日月曜日

2008年のメディア予測――ネット利用「お茶の間テレビ」型に

「お茶の間テレビ」型のネット利用イメージ(イラスト・山根あきひこ)
 日経メディアラボは「2008年のメディア予測」をまとめた。インターネットは個人の情報発信よりも、お茶の間でテレビを見るように「みんなと同じネタでワイワイ楽しむ」使われ方が主流になると予測。ネタを待つ人々が共有できる話題をピックアップして配信するメディアの需要が高まるとみている。(12月17日付の日経産業新聞にも記事)
→詳細はニュースリリースをご覧ください =クリックするとPDFファイルが開きます





(イラスト・山根あきひこ)



 ネット調査会社のヤフーバリューインサイト(東京・中野)と共同で、2007年11月末に20―50代のネット利用者1000人対象のアンケートを実施。性別・年齢層ごとの人数の割合は、日本のインターネット利用者の人口比率にあわせた。回答傾向が似ている人同士をグループ化する「非階層クラスター分析」手法を使い、ネット利用者を5つのグループに独自に分類した。


 ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の日記の執筆に飽きたり疲れたりしている人が増えていることなどを背景に、「自分では情報発信せず、ブログや動画などを頻繁に見るだけ」というグループ「ROMマジョリティー」層が増加傾向にある。今後もこの傾向が続くうえ、ネット活用に積極的でないグループ「情報未活用族」のなかから、ネットを使いこなす力を高めた人が「ROMマジョリティー」にレベルアップしてくると予測した。


 ネットの常時接続サービスの普及を背景に「ネットはテレビと同じような必需品」と考える人が八割を超える一方、「目的なくアクセスすることがある」人も半数を超えており、テレビのように「なんとなくスイッチを入れる」存在になっていくと分析している。



2007年9月29日土曜日

日本の最南端で最先端を試す・八重山毎日新聞社の挑戦

Yaeyama01 産経新聞の「イザ!」や毎日新聞の「毎日jp」など、大手新聞社による読者参加型サイト、いわゆる「web2.0的」なサイトが次々に登場している。こうした取り組みはビジネスモデルや運営方法に未知の部分も多く、その挑戦には大きな覚悟が必要だ。これまでとは全く異なるサイトを構築するため、投資額も相当なものになる。



 だがそれを、開発コストゼロ、しかもたった1人で実現した新聞社がある。「日本最南端の新聞社」を標榜する八重山毎日新聞社(沖縄県石垣市)だ。同社のウェブサイト「八重山毎日オンライン」は、ほぼすべての記事でコメント投稿とトラックバックを受け付け、RSSフィードなども積極的に活用。ワンクリックでソーシャルブックマークサービスへの登録も可能というまさにweb2.0時代の新聞社サイトだ。



 


八重山毎日オンラインの概要


Yaeyama02  八重山毎日新聞社のサイトを開くと、タイトル画面の上に「ようこそゲストさん/ログイン/新規登録」というテキストが並び、会員制サービスであることを示している。記事の閲覧に会員登録は不要だが、会員になるとコメントを投稿できるようになるほか、気になった記事を自分専用のページに保存するなどの機能が利用できる。登録は無料で、特に新聞の購読者でなくてはいけない、といった条件はない。名前とメールアドレス、希望するユーザーIDとパスワードのみの簡単な記入で登録は完了する。


 コメント、トラックバックはほぼすべての記事で受け付けている。関心の高い記事には複数のコメントがつくこともある。また各記事の見出しの下には3つのボタンが並んでおり、ソーシャルブックマークサービス「はてなブックマーク」への登録、自分専用ページへの保存、PDFファイルのダウンロードがワンクリックでできる。なおPDFは新聞紙面のイメージになっているわけではなく、一般的な文書形式になる。


Yaeyama05 トップページには八重山地方の地図が表示されており、記事で紹介している事件やできごとが発生した場所にマークが付けられている。そのマークをクリックすると、記事の見出しや写真が表示され、その記事を読むことができる仕組みだ。地図上で任意の場所を選び、そこでどのようなニュースがあったかを検索することもできる。


 このサイトはRSSフィードを提供しているので、更新情報はRSSリーダーを使って確認できる。「ニュース」のフィードに加え「コメント」のフィードもある。


 全体的には、一般的なブログサービスが提供している機能の多くが盛り込まれていることから、「ブログ風」という印象だ。どこか手作り感がただようデザインもその印象を色濃くしている。


 



 


開発・運用担当者インタビュー


 このサイトの構築・運用を手がける、八重山毎日新聞社メディア統括局の立松聖久氏=写真=に話を聞いた。


 


――サイトを現在の形にした背景は


 2005年3月にリニューアルしたが、それ以前は市販のホームページ製作ソフトを使って更新していた。作業に非常に時間がかかり、かつ複雑で、これをまず効率化したかった。また、過去記事を検索する機能を実装したかったこともある。


――ソフトウエアは何を使っているのか


 自作したものだ。当初、市販のコンテンツ管理ソフトが使えないか検討したが、いずれもオーバースペックだったり、必要な機能がなかったり、とぴたりと当てはまるものがなかった。わが社の規模では何千万円もかけてオーダーメードのシステムを作ることはできない。そこで自作を考えた。自作すれば利用しながら改善したり修正したりすることも容易になる。当時すでにブログがブームになりつつあり、ブログ的なシンプルなものなら自分でも作れそうだし、読者にも受け入れやすいと思い、このような形式にした。


 この自作したシステムに、オープンソースソフトウエアや、公開されているAPI(アプリケーション・プログラム・インターフェース)を使って機能を付加している。例えば、各記事ごとに過去の類似記事を自動的に抽出して表示する仕組みがあるが、これは(有)未来検索ブラジルが開発したオープンソースソフトウエア「Senna」をカスタマイズしたものだ。また、記事が紹介している場所を地図上に表示する仕組みは、グーグル社の「グーグルマップ」APIを使っている。


――開発コスト、開発期間は


 自作と無料のオープンソースソフトウエア、APIを使っているので直接的なコストはゼロ。開発期間は約1カ月で、たずさわった人員はデザインまで含めて自分ひとりだ。公開後もひんぱんに修正を行っている。小回りがきくのが自作ソフトのいいところだ。


 システムの小回りがきくことは、地域密着型できめの細かい情報サービスを進めるのにも好都合だ。そもそも、インターネットのサービスは走りながら考えるのが基本だと思う。リクルートや地図情報サービスのアルプスのように、社内にラボを設置し実験的な取り組みを次々行う体制が注目されているが、そうした姿勢が理想的なのではないか。


――現在の閲覧数、会員数は


 1日のページビューは平均して2万ほど。登録会員は4,000名程度だ。当初は登録しないと記事をあまり読めないようにしていたが、まずは読んでもらわないと次の展開も難しい、ということで閲覧は誰でもできるようにした。


 より多くの人に読んでもらうためには、リンクを貼ってもらうことも重要だ。フレーム取り込みなど、別のサイトの一部に見えるような形でさえなければ、どの記事にリンクを貼ってもらっても構わない。「はてなブックマーク」にはワンクリックで各記事を登録できるボタンを用意してある。


 自分のブログに記事へのリンクを貼っているブロガーの大部分は、わが社の報道に対し好意的な人たちだ。そういう人に対し、厳しいリンクポリシーで抵抗感を持たせることは得策ではないのではないか。


――ビジネスモデルはどうか


 地域の新聞社と共同通信社が運営する「47CLUB」から配信されるバナー広告を掲載している。ほかに、グーグルのコンテンツ連動型広告や、アマゾンの成果報酬型広告といった、主に個人サイト向けの広告サービスも組み込んでいるが、これはほとんど収入にならない。現在、独自のバナー広告の設置を検討している。長期的には有料コンテンツの配信なども考えたい。


――今後の展開は


 開発時に副産物的に作った、「島っぷ」というコンテンツはまだ本格的に稼動していないが、読者の方々が地図をベースにさまざまな情報を共有できる仕組みだ。観光で八重山を訪れた人や、新しく引っ越してきた人にこの地方の良さを知ってもらえるようなものにしたい。


 SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)にも興味はあるが、この分野では、すでにmixiが多くのユーザーを抱えているので、難しい側面もある。運営にかかわる人員の確保も問題だ。ただ、全国各地で地域ごとにコミュニティーが形成され、それらがゆるやかに連携できるような仕組みがあると面白いのでは、と思う。


 動画コンテンツも視野には入っている。これは、まず素材をどう集めるかが課題だ。それに、ただ動画を一方的に流すのでは面白くもなんともない。youtubeなど動画共有サイトのように、ユーザーが自分のブログに貼り付けたり互いにコメントをしたり、といったような仕組みを考えなくてはいけない。


――全社的な戦略の中で、「八重山毎日オンライン」はどのような位置にあるのか


 1万5000部の発行部数がある新聞事業が、まだビジネスモデルも確立できていないネット事業にとってかわる、という状況は考えにくい。だがわが社の場合、多くの読者が離島に住んでおり、天候によって新聞が届けられないケースがある。そのとき、ネットでニュースを伝えることは必要不可欠だ。そういう意味では、ネットでの事業展開は新聞社としての使命を果たすことだと思う。


 こうした意識は開発段階から経営トップとの間では共有できている。社内でもさらに浸透を図るために、新しい提案を積極的に行っていくつもりだ。


■関連リンク


八重山毎日オンライン


2007年8月30日木曜日

ぐるなび、「おサイフケータイ」使った飲食店ポイントサービス

飲食店に設置した読み取り装置に携帯をかざして使う「ぐるなびタッチ」
 飲食店情報サイトのぐるなびは、携帯電話に電子マネーを搭載する「おサイフケータイ」機能を使った飲食店のポイントサービスを9月3日から始める。飲食店情報サイトの加盟店に専用の読み取り装置を設置。利用者が来店時に携帯をかさずと、その店のポイントがたまり、次回の来店時やポイントがたまったときに割引や特典を受けられる仕組み。リピーター客を増やす販促ツールとして、2007年度に1万店の導入を目指す。



 新サービスの名称は「ぐるなびタッチ」。「おサイフケータイ」機能を搭載した携帯電話を持っていれば、だれでもポイントをためられる。特別な契約やソフトのインストールは不要。当初は、来店した店ごとに別々にポイントをためて使う仕組みだが、将来的にはぐるなび加盟店の共通ポイントサービスも検討していく。


 飲食店がぐるなびに払う導入費用は未定。まず、ぐるなびのサイトに加盟する約6万店のうち、一定条件を満たした1万店を対象に、2007年度中は無料で提供する。「費用は導入効果などを見極めたうえで考える」(久保征一郎社長)という。紙のスタンプカードを用意するよりも手間や費用がかからないメリットを訴えていく。


ぐるなび久保社長
 8月29日に会見した久保社長は「ぐるなびを見て飲食店を訪れた人々の再来店を促す仕組みづくりを5年前から考えてきた。クレジットカードやカード型電子マネー、QRコード(二次元バーコード)など、いろいろ検討してきたが、おサイフケータイの登場でようやくだれでも簡便に使える仕組みができた」と話している。



 今回の新サービスでは、利用者(携帯電話)と導入店、来店時間くらいしか特定できず、利用者の属性や購入履歴などは把握できないが、「導入店は読み取り装置の電源をコンセントに差すだけで手間がかからない」「利用者にとっては携帯でタッチするだけ」という手軽さを優先して割り切ったという。


■関連リンク
ぐるなびタッチの紹介ページ http://www.gnavi.co.jp/gt/


2007年8月9日木曜日

サイボウズ・ラボ、サイト閲覧履歴の共有サービス

サイボウズ・ラボの畑慎也社長
 サイボウズの研究開発子会社、サイボウズ・ラボ(東京・千代田、畑慎也社長)は8月8日、多くの利用者からサイト閲覧履歴を集めるサービス「パストラック」を始めた、と発表した。利用者は専用ソフト(ブラウザーのプラグイン)をインストールして閲覧履歴情報を提供する代わりに、パストラックのサイトで人気ランキングなどの統計情報を共有できる仕組みだ。



 専用ソフトが自動的に閲覧履歴をパストラックのサーバーに送る。8日会見した畑社長はパストラックの専用ソフトについて「目標インストール数は1カ月後に1万人」と話した。インターネット視聴率の調査会社、ネットレイティングス(東京・渋谷)の調査モニター数が約7000世帯(約2万人)であることを参考に、1万人集めればある程度の説得力を持つデータになると判断したという。


パストラックの画面例
 利用者はクリック1回の操作で履歴の送信を止めたり再開したりできる。「プライバシーに配慮し、利用者の行動を追跡するようなことはしない」(畑社長)という。専用ソフトをインストールしなくてもパストラックのサイトを見ることは可能だが、インストールを薦める画面が煩雑に表示されるため、インストールしないと円滑にサイトを見ることができない仕組みになっている。


■関連リンク
パストラック http://pathtraq.com/
サイボウズ・ラボ http://labs.cybozu.co.jp/
ネットレイティングス http://www.netratings.co.jp/


2007年8月6日月曜日

日中比較・20代のメディア利用(3)――利用時間帯、ネットで日中に違い

 日経メディアラボと清華―日経メディア研究所(北京)の共同調査では、メディアごとに1日の生活シーンの中での利用時間帯を質問。日中の違いを比較してみた。



(1)パソコン(ネット)
 中国では1日のなかで、「勉強中・仕事中」と「休憩時」に使う人が多い。これに対し、日本で多いのは「就寝前」と「夕食時・夕食後」。中国では「職場での私的ウェブ閲覧などの規制が未整備で使い放題なのが現状」(崔保国・清華―日経メディア研究所所長)といった要因が、日中の差を生みだしているようだ。=グラフをクリックすると大きくなります


パソコン(ネット)利用時間帯


(2)テレビ
 「夕食時・夕食後」と「就寝前」に多いのは日中に共通しているが、日本は「起床後~通勤・通学まで」の朝の時間帯の利用が突出しているところが大きな違いになっている。


テレビ利用時間帯


(3)新聞
 日本では「起床後~通勤・通学まで」が突出しているのに対し、中国では「通勤・通学時」「勤務先・学校などに着いてすぐ」「休憩中」など昼間の時間帯に満遍なく利用者が多い。宅配制度が普及している日本と異なり、中国では宅配よりも街中の売店で新聞を買う人が多いという販売方法の違いが利用シーンの違いになっているようだ。


新聞の利用時間帯



■「日中比較・20代のメディア利用」記事一覧
(1)ネット依存強い中国、日本はネット+TV併用
(2)信頼度、中国ではポータルが首位
(3)利用時間帯、ネットで日中に違い



日中比較・20代のメディア利用(2)――信頼度、中国ではポータルが首位

 日経メディアラボと清華―日経メディア研究所(北京)の共同調査では、仕事や学業に必要な情報収集手段としての各メディアの位置付けも聞いた。



(1)メディアの使い分け
 仕事や学業の情報収集に使うメディアの比率を「1人100%のうち、テレビはだいだい○%、新聞は○%…」といった方法で答えてもらった。日中とも首位はパソコン(ネット)で、中国では6割、日本でも過半数を占めた。日本は中国に比べ、テレビと雑誌の割合が高い。新聞と携帯電話(ネット)は日中の差がなかった。=グラフをクリックすると大きくなります


メディアの使い分け


(2)メディア信頼度
 各メディアに対する信頼度を尋ねた質問で、「とても信頼している」「だいたい信頼している」と答えた人の割合を合計して比較した。中国の首位はポータルサイト。以下、企業のホームページ、報道機関のサイトとネットメディアが続いた。日本は新聞、企業ホームページの順だった。


メディア信頼度


(3)仕事・学業でのネット活用
 仕事や学業のために、ネットを使って毎日頻繁に行っていることを聞いた。日中ともに「検索エンジンの活用」が首位だが、中国は日本に比べ利用者の多さが際立っている。日本では仕事・学業目的ではほとんど使われていない「チャット」が、中国では2番目によく利用されている。


仕事・学業でのネット活用


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■「日中比較・20代のメディア利用」記事一覧
(1)ネット依存強い中国、日本はネット+TV併用
(2)信頼度、中国ではポータルが首位
(3)利用時間帯、ネットで日中に違い



日中比較・20代のメディア利用(1)――ネット依存強い中国、日本はネット+TV併用

 日経メディアラボと清華―日経メディア研究所(北京)は、日中の20代のメディア利用実態を比較した調査結果をまとめた。「中国=ネット依存型、日本=ネットとテレビ併用型」といった傾向の違いや、メディアに対する信頼度の違いなどが明らかになった。(8月6日付の日本経済新聞朝刊にも記事)



 調査は2007年5―7月、日中の大都市(東京、大阪、北京、上海)に住む二十代男女を対象に実施。ネット調査会社のヤフーバリューインサイト(日本)、インフォブリッジ(中国)の協力を得てアンケートを集め、千二百の回答をもとに分析した。


(1)メディア利用時間
 平日の一日当たりの平均時間を比較した。中国はパソコン(メールやウェブ)利用時間が突出、日本はネットとテレビがそれぞれ長い。中国は携帯の通話時間が長いのも特徴的だ。「決して中国の通話料金が安いわけではない」(崔保国・清華―日経メディア研究所所長)にもかかわらず、日本に比べ2.5倍になっている。=グラフをクリックすると大きくなります


メディア利用時間


(2)パソコンでのネット利用
 利用頻度を尋ねた設問で「毎日頻繁に使っている」「たまに使っている」と答えた人の割合を合計して比較した。「検索エンジンの活用」「ブログ・掲示板の閲覧」は日中とも多いが、中国では「チャット」利用者の高さが目立つ。一方、日本は「ネットオークション」が中国を上回った。


パソコンでのネット利用


(3)携帯電話でのネット利用
 中国ではSMS(電話番号をアドレス代わりにする簡易メール)とゲームの利用が多い。日本は電子メールに加え、携帯サイト閲覧と写真撮影の利用者が多いのが特徴だ。


携帯電話でのネット利用


(4)ニュースを知るメディア
 日中とも首位はニュースサイト。日本はテレビがニュースサイトとほぼ同水準の高さになった。中国では「会話の口コミ」「ネットの口コミ」がどちらも高く、リアル、ネットを問わず口コミを重視していることが分かる。


ニュースを知るメディア




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■「日中比較・20代のメディア利用」記事一覧
(1)ネット依存強い中国、日本はネット+TV併用
(2)信頼度、中国ではポータルが首位
(3)利用時間帯、ネットで日中に違い


 


2007年6月22日金曜日

「玉石混交の情報から”玉”を集める」――神奈川新聞の「メディアジャム」

神奈川新聞社の松澤雄一氏
 神奈川新聞社が6月4日開設した新サイト「メディアジャム」が注目を集めている。インターネット上の多くのサイトに掲載されたニュースの情報を自動収集してサイトをつくる。自社のニュースを載せる他の新聞社サイトとは全く異なる新しい取り組みだ。新サイトを統括する神奈川新聞社の松澤雄一デジタルメディア局長(兼メディアジャムLLC業務執行責任者)=写真=に、メディアジャムの狙いや今後の見通しなどを聞いた。



――どんなサイトなのか


 74のニュースサイト(2007年6月22日時点)を自動巡回してニュースを集め、独自に分類・整理して見せる「ニュース・アグリケート・サイト」だ。神奈川新聞社のニュースサイト「カナロコ」に掲載された地元ニュースと共同通信ニュースに加え、「山陽新聞」「岩手日報」など他の新聞社のサイト、「ITmedia」「J-CAST」などネットのニュースメディアなどから情報を集めている。


メディアジャムのトップページ
   「巡回拒否」の意思表示をしたサイトは自動巡回の対象外。見出しを含め120字の上限を設けて収集している。サイトの利用者は情報源となった各サイトに移動して続きを読む。独自のアルゴリズムを使い、自動的にニュースの表示順位を決めている。


――新サイトを立ち上げた経緯は


 2006年7月にカナロコの全面リニューアルが一段落。それを契機に、新しいネット事業を議論してきた。ちょうど同じ時期に、カナロコのリニューアルを手がけたウェブ制作会社、ミツエーリンクス(東京・新宿、高橋仁社長)から、「一緒に何かやらないか」と誘いを受けた。共同で実験的なプロジェクトを立ち上げることにした。


 共同出資で合同会社(日本版LLC=出資者が出資額を限度に有限責任を負う一方で、出資者全員の合意に基づいて組織運営、利益配分を自由に決められる)のメディアジャムを設立し、意思決定のスピードを速めることにした。動画配信技術やRSSリーダーなどを開発するユビキャスト(東京・千代田、呉英仁社長)も開発に加わってもらうことにした。


 新事業のコンセプトは(1)ネット上に氾濫する玉石混交の情報のなかから、「玉」の情報を集める(2)ニュースとつながる(3)SNSや個人ブログのように個人が情報発信できるもの--の3つ。新会社のメンバーでメッセンジャーを使って熱く語り合ううちに、いつのまにか形になったのが「メディアジャム」のサイトだ。「こんなサービスがあると便利だよね」という風に、利用者の視点から発想した。


――今後の展開は


 今年秋にマイページ的な機能を追加する。詳細はまだ詰めている最中だ。メディアジャムのサイトはメールアドレスで会員登録できるが、マイページを使いたい人は、属性情報をもっと詳しく登録する仕組みににするつもりだ。


■関連リンク
メディアジャム
「ネットが「スクープ」を生む時代に既存メディアが行く道は?」(NIKKEI NET)
「ブログでコミュニティー形成、ニュースに深みを」(カナロコ開設時のインタビュー)



2007年5月29日火曜日

「検索連動広告への期待が大きく」――広告主のモバイル広告利用動向調査

日経広告研究所、ディーツー
コミュニケーションズ、日経メディアラボは、モバイル広告について広告主企業の利用動向を調査した。それによると、06年度にモバイル広告を出稿した企業のうち56.8%が07年度に「検索連動型」を利用したいとの意向を示し、37.8%が配分を06年度より増やすとしている。これは調査した5つの広告タイプの中でそれぞれ最高の数字となる。



この調査は2007年2-3月に実施。日経広告研究所の「有力企業の広告宣伝費」の上位1500社に聞いたところ、274社の回答を得た。


 


07年度におけるモバイル広告の利用意向について、回答企業全体に聞いたところ、「検索連動型」が16.4%と最も高く、「掲載期間保証型」「アフィリエイト」と続く。パソコンのインターネット広告では、「検索連動型」が46.0%と、他のタイプを大きく引き離しており、モバイル広告もパソコンのインターネット広告での実績に影響されている可能性もある。


 


パソコンのインターネット、モバイルを問わず、06年度に「検索連動型」を出稿した企業の評価では、「ターゲットを絞り込みやすい」「費用対効果が明確」が上位となり、母数が少ないものの、モバイル検索連動広告の出稿経験者の約4分の3が「ターゲットを絞り込みやすい」としている。


 


パソコンのインターネット広告の流れを追うモバイル広告


 


06年度に出稿したモバイル広告のタイプでは、「露出保証型(広告表示回数保証)」と「掲載期間保証型」がともに64.3%で主流となっている。05年度と比較すると「露出保証型」が40ポイント弱伸びているのが目立つ。パソコンのインターネット広告では一般的な「露出保証型」がモバイル広告にも浸透したということは、定額性の普及によりモバイルサイトの閲覧数が増え、表示回数で販売することが可能な在庫が増えてきているといえるだろう。


 


06年度のモバイル広告出稿経験者は効果測定にも力が入ってきた。「特に測定していない」が15ポイント下がり、ほとんどの企業で測定するようになったが、クリックに関連する測定方法(クリック数、クリック単価、クリック率)が全て大幅に上がった。パソコンのインターネット広告で一般的となっている測定方法が定着し始めており、モバイル広告が普及期に入ったとみるサインになるのではないか。


 


モバイル広告の特徴を生かし、評価は上がる


 


モバイル広告の評価について、回答企業全体に聞いたところ、「ターゲットを絞り込みやすい」「目的に合わせた利用がしやすい」が昨年度の調査と同様に上位を占めた。他の理由を含めて、全体的に昨年度よりは高い数字となっており、モバイル広告自体の評価が高まっているといえるだろう。モバイル広告出稿経験企業に絞ると「ターゲットを絞り込みやすい」が56.8%でトップとなり、昨年トップだった「効果がすぐに把握できる」が48.6%で続く。


 


一方、出稿経験者の不満点は、昨年と同様に「文字数・情報量などに制約が多い」「伝えられる情報量が少ない」「表現力に乏しい」が並ぶが、昨年度と比較すると、全体的に低い数字となっている。特に「文字数・情報量などに制約が多い」は10ポイント強下がっており、ディスプレイの制約内での工夫が進み始めたと考えられる。違う見方をすれば、ディスプレイ内で広告が占有する割合は、パソコンのインターネット広告と比較しても、かなり大きくなるので、注目率は高くなるともいえる。


 


詳しいリリースはこちら


2007年5月10日木曜日

「ネット・ガバナンス、利害超えた議論が大切」

マーカス・クマーIGF事務局長
 インターネットの管理体制(インターネット・ガバナンス)をテーマに活動している国連インターネットガバナンスフォーラム(IGF)。米国主導のインターネット運営に対する批判が高まるなか、国連が設けた組織で、2005年の世界情報社会サミット(WSIS)で設立が決まった。来日中のマーカス・クマー事務局長に、2006年秋にギリシャ・アテネで開いた第1回総会の成果や、今後の活動などについて聞いた。



――アテネの第1回総会の成果は


 「政府、企業、NGO(非政府組織)、技術者など、様々なステークホルダー(利害関係者)が一堂に会し、丁々発止の議論で盛り上がった。議論のテーマも著作権、サイバー犯罪など多岐にわたった。インターネット関連の会合はたくさんあるが、こんな議論の機会を持てたのはIGFが初めてだと思う」


 「なかでも、政府、企業、市民社会など様々な利害関係者が協力する「ダイナミック・コアリション」(積極的な連携)の重要性が指摘されたことは大きな成果といえる」


 「『(インターネットの)開放性』『セキュリティー』『多様性』『アクセス』などの議題のうち、最も刺激的だったのは『開放性』。特定の国や企業を名指しして責めるような外交的な議論ではなく、民間企業がどういう役割を果たせるか、そもそもネット上の表現の自由とはどういうものか、といった議論できた」


 「世界情報社会サミットでは、ここまで突っ込んだフランクな議論はできていなかったと思う。(特定の利害関係者による議論と違い)既存のビジネスモデルを超えた解決方法があるかもしれない、という段階まで議論を深めることができた。また、インターネット自体が、ダイナミックに進化し続けていることも、強調された」


――今後、議論していくテーマは


 「2007年11月に第2回IGF総会をブラジル・リオデジャネイロで開く予定。議論のテーマはこれから決めるが、幅広いテーマについて話し合う姿勢は続けていく。第1回総会で議論された途上国支援や、(スパム対策などに取り組むうえで)国内法と国際協力の兼ね合いをどうするか、などが重要になるだろう」


 「スパム対策などの国際ルールをつくるとすると、「国際条約をつくろう」という人もいる。しかし、国際条約をつくるのは、時間がかかりすぎる。ようやく条約ができたと思ったら、技術が進んで、もうその問題は存在していない…といった事態も十分考えられる」


――IGFでのクマー氏の役割は


 「私は国際社会のために働く公僕だ。いろいろな人の貴重な意見に耳を傾けることが重要だと思っている。IGF以外にも様々な会合に参加し、そこで知り合った各国の人々から招待を受けて説明に出掛けることも多い。様々なステークホルダーの方々に会い、IGFの議論に参加してもらうのが私の役目。インターネット・ガバナンスの問題は政府だけでなく企業や市民社会、技術者らが一体になって、取り組むことが重要だ」


――日本の政府や企業、市民社会に望むことは


 「日本はICT(情報通信技術)にとっても、インターネットにとっても、国際的に重要な国。あらゆる人々にIGFに参加してもらえるよう、切に願っている。政府関係者だけでなくビジネスリーダーにもどんどん参加してほしい」


――通信の標準化を進めているITU(国際電気通信連合)、インターネットアドレスを管理しているICANNと、IGFはどう違うのか


 「IGFは意思決定をする組織ではない。様々な立場の人々が同じ屋根の下に集まって話し合う中立的なプラットフォームだと考えてほしい。どんな立場の人でも、恐れずに議論に参加できる」


 「IGFは意思決定の機能がないのが弱点だと言われることもある。しかし、様々な立場の人々が交渉ベースではなく自由に議論できる利点がある。毎年開催される世界経済フォーラム(ダボス会議)も、意思決定の機能が弱いが、世界各国の人々から高い関心を集めている。IGFも同様だ。ITU、ICANNはそれぞれ本来の活動があり、活動範囲を超えた広範なテーマの議論は難しい。IGFと補完関係になれる」


■関連リンク
「インターネット界のダボス会議を目指す」(NIKKEI NET)
インターネットガバナンス」(ウィキペディアの用語解説)
IGFのホームページ(英文)


2007年4月27日金曜日

ヤフー、旅のクチコミサイトを開設

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 ヤフーは4月26日、旅行に関するクチコミ投稿を集めたサイト「旅メモ」を開設した。旅行のクチコミサイトは、フォートラベル楽天トラベル(旅コミ)やなど参入企業が多い分野。ヤフー参入により、勢力図が塗り換わる可能性もある。



 「旅メモ」は、「ヤフー!トラベル」の中に開設した。利用者はブログ風の旅行記と、ホテルやレストラン、観光スポットなどに対するクチコミをそれぞれ投稿したり読んだりできる。ヤフーIDを持っていれば、すぐに旅行記やクチコミを投稿できる。


 ヤフーは昨年(2006年)4月、「ヤフー!グルメ」に飲食店のクチコミ投稿機能を追加したほか、今年2月には「ヤフー!ビューティー」に化粧品のクチコミ投稿を受け付ける機能を追加。クチコミを活用したサイトづくりを強化している。



・旅メモ http://community.travel.yahoo.co.jp/


「Yahoo!トラベル」で旅の情報サイト「旅メモ」を提供開始(日経プレスリリース)


2007年4月24日火曜日

ドコモが「904i」発表、携帯動画を活用した通販も

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 NTTドコモは4月23日、携帯電話の新製品「904iシリーズ」5機種を発表した。1台の携帯で2つの電話番号を使い分けられる新機能や動画再生機能の強化などが目玉。同日、都内で開いた会見では、角川グループと組み、動画配信を活用したネット通販サービスを7月にも始めることも発表した。携帯動画を直接的な収益につなげる取り組みとして、注目される。



 動画機能は今回発表した5機種すべてで強化した。再生できる動画のデータ量を従来の500KBから10MBに拡大、画面のサイズも従来の約3倍にあたるQVGAサイズ(320×240ピクセル)にした。「5分程度の音楽クリップや映画の予告編を楽しめる」(夏野剛・NTTドコモ執行役員)。


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 この機能を使い、例えば映画の予告編の動画を配信して、リンクをクリックすると映画館のチケットやDVDソフトの購入サイトに誘導するサービス「WATCH→BUY」を始める。まず7月に、角川グループの角川モバイル(東京・千代田)が「iムービーゲート」という名称で始める。


 携帯のパケット通信料の定額制の普及に伴って、携帯向けの動画共有サイトなど、動画を使ったサービスに取り組む企業が増えている。ただ、動画を見る人から料金を得る有料配信モデルは難しく、どうやって動画配信をビジネスに育てていくかが各社共通の課題になっている。


「904i」のプレスリリース(日経プレスリリース)
ドコモ「904iシリーズで反撃」・最新5機種を発表(NIKKEI NET)


2007年3月30日金曜日

「朝、自宅で新聞を読まない」若者、首都圏で多い

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 首都圏で働く若い男性は毎朝、自宅で新聞を読まず、通勤中に携帯サイトを見て情報収集--。20~34歳の若者層を調査対象にしているM1・F1総研(東京・港)の「M1層のエリア別行動パターン比較調査」で、こんな若手ビジネスマンの実態が浮かび上がった。




 調査は首都圏、関西、名古屋に住む20~34歳の働く男性を対象にインターネットを使って実施(学生やフリーター、無職者は調査対象外)。1500の有効回答をもとに、地域別の違いを分析した。


 起床してから家を出るまでに新聞を読む人の割合は、首都圏で23.4%。名古屋(30.6%)と関西(29.6%)に比べ少なさが目立った。反対に、通勤中に新聞を読む人、通勤中に携帯サイトを見る人は首都圏、関西、名古屋の順で多かった。


 通勤中に新聞を読む人と携帯サイトを見る人の割合を比べると、どの地域でも携帯サイトのほうが上回った。


 M1・F1総研では「首都圏では1日12時間以上働く長時間労働者が多く、平均通勤時間も他の地域より長いため、通勤時間を有効活用する傾向が見られる」と分析している。









 M1・F1総研(http://www.m1f1.jp/)は、「R25」「L25」「Hot
Pepper」の広告などを手掛けるメディア・シェイカーズ(東京・港、電通とリクルートの共同出資会社)が2006年11月から運営している調査機関。
テレビ・広告業界で「M1層」と呼ばれる男性20~34歳、「F1層」と呼ばれる女性20~34歳の意識や実態を調べている。




▽関連資料 (M1・F1総研のホームページ)

http://www.m1f1.jp/m1f1/files/release_topic_070329.pdf


http://www.m1f1.jp/m1f1/files/topic_070329.pdf



 


2007年3月23日金曜日

慶大DMCなど、政府のコンテンツ政策担当者と討論

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 慶応義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構(DMC)、コンテンツ政策研究会、日経メディアラボは3月20日、コンテンツ産業に関連した政策を共同研究する「第8回クリエイティブ産業政策フォーラム」を慶大三田キャンパスで開いた。「総括、日本のコンテンツ政策~政策担当者に聞く」をテーマに、総務省、文化庁、経済産業省、内閣官房の担当者を招き、現在のコンテンツ政策について討論した。



 



<パネリストは以下の通り>


  • 小笠原陽一・総務省コンテンツ流通促進室長

  • 川瀬真・文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室長

  • 小糸正樹・経済産業省文化情報関連産業課長

  • 杉田定大・内閣官房知的財産戦略推進事務局参事官

  • 金正勲・慶應義塾大学DMC機構 助教授(コーディネーター)


 まず各省庁のコンテンツ政策についてパネリストが順番に説明した。総務省・小笠原氏は「テレビ番組などをDVDやインターネット配信など向けに再利用するマルチユースについては、テレビ局各社がそれぞれ考えているので、各社の方針に任せる」と、民主導でコンテンツの流通を促進することを説明。文化庁・川瀬氏は「コンテンツの流通を促すには著作権法改正で著作物に対する権利を引き下げるべき、という意見も一部の人々から出ているが、流通はビジネスの話。著作権法ではなく契約で対処する問題だ」と文化庁のスタンスを話した。




 経産省・小糸氏は「コンテンツの市場規模は世界的に拡大しているなか、国内市場は頭打ち。成長のカギは海外進出にある」として、東京国際映画祭を活用した映画の国際取引市場づくりの取り組みなどを紹介した。内閣官房・杉田氏も「関連業界の近代化・合理化を進めたり、世界中の人材やコンテンツが日本に集まるようにして、世界で勝負できるコンテンツづくりを目指す」と語った。




 その後の会場参加者との質疑応答では、「情報通信省」設立構想についての質問に対し、「我々(今回参加した4省庁)は見た目以上に仲良くしている。一緒に働くのは問題ない」(経産省・小糸氏)との声がある一方で、「産業政策をやる組織が著作権をいじるといびつな制度になる危険がある。著作権関連は統合すべきではない」(文化庁・川瀬氏)といった温度差を感じさせる場面もあった。



2007年3月21日水曜日

慶大DMCなど、「情報産業省」構想の是非を議論

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 慶応義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構(DMC)、コンテンツ政策研究会、日経メディアラボは3月19日、コンテンツ産業に関連した政策を共同研究する「クリエイティブ産業政策フォーラム」を慶大三田キャンパスで開いた。今回は7回目。「情報通信省構想、その是非を巡って~メディア融合時代の規制機関の制度設計」と題し、省庁再々編の論議のなかで浮上している経済産業省や総務省などの情報通信部局の統合構想について議論を交わした。






  <パネリスト>


  • 岸博幸・慶應義塾大学DMC機構 助教授

  • 楠正憲・マイクロソフト最高技術責任者補佐

  • 境真良・早稲田大学国際情報通信研究科客員助教授

  • 宿南達志郎・慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所教授

  • 田川義博・マルチメディア振興センター専務理事

  • 坪田知己・日経メディアラボ所長

  • 中村伊知哉・慶應義塾大学DMC機構 教授

  • 藤元健太郎・ディー・フォー・ディー・アール社長

  • 金正勲・慶應義塾大学DMC機構 助教授 (コーディネーター)




 冒頭、岸氏が「現在、IT政策やコンテンツ政策は総務省、経済産業省、文化庁、内閣府など様々な省庁がかかわっている。例えば、音楽業界は規制について相談したいときに、どこの省庁に行けばいいか分からず困っている」と現在の組織の問題点を指摘。もし「情報通信省」に関連部局を統合するなら、「産業振興と規制という異なる業務を一つの役所にまとめてしまっていいのか、分けるべきなのか」と問題提起した。






 関係部署を統合することに対しては、肯定派からは「知識や情報が産業になる時代に重要なのは流通。インフラを考える情報通信省ではなく、情報流通産業省だ」(藤元氏)、「情報通信分野について、日本独自の世界戦略を考えるためには、情報通信省が必要」(坪田氏)との意見が出された。






 一方、慎重派からは「情報通信の用途や利用者は広くなっている。一元化は必要なのか」(田川氏)と統合自体に疑問を投げ掛ける意見に加え、「様々な省庁や民間などで業務を経験した柔軟な人材を育てる仕組みがないと、省庁の看板をかけかえただけでは意味がない」(楠氏)、「現在の役所では、専門的な知見のない人が専門的な問題に取り組んでいる。公務員の人事制度を開放的にする議論が必要」(境氏)と、組織の”箱”よりも人事制度の改善が優先課題だとする意見が出た。






 中村氏は「5年、10年と期間を区切って設置するなら、情報通信省があってもいい。通信と放送の融合やNTTの完全民営化、デジタル時代の著作権など、枠組みをつくらなければならないことがたくさんあり、期間を区切って取り組むのはどうか」と提案。宿南氏は、公正取引委員会や人事院のように独立性を持った組織形態である「独立行政委員会」で設立する方式を支持した。






 産業振興と規制の業務を別々の省庁に分けるべきかについては、「業務の線引きが難しい」(中村氏)、「規制の業務は一元化すべきだが、産業振興は複数の省庁が競争してもいい」(岸氏)といった意見が出た。






 独立行政委員会にする案については、中村氏と境氏が否定的な見解を示した。一方、「専門家など外部の人材を活用しやすい面がある」(岸氏)、「業界とのしがらみが切れる」(宿南氏)といった利点を指摘する声があった。





2007年3月20日火曜日

著作権保護期間の延長、賛否両派が議論


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 「著作者の死後50年まで」とする現在の著作権に対し、日米の権利者団体17団体が20年の延長を求めている。この問題を考える有識者らでつくる「著作
権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」が3月12日、慶應義塾大学三田キャンパスで公開トークイベントを開いた(慶大DMC機構、コンテンツ政策研究
会が共催)。



 


 



 賛成派・慎重派の双方の立場から4人のパネリストを招き、「なぜ今、著作権の延長が問題になっているのか」「著作権延長はクリエイターのインセンティブになりうるのか」「現代のクリエイターを守るにはどのような制度が必要か」などについて、討論した。




<パネリスト>


  • 佐野眞一氏(ノンフィクション作家)

  • 瀬尾太一氏(写真家、有限責任中間法人日本写真著作権協会常務理事)

  • 林紘一郎氏(情報セキュリティ大学院大学副学長・教授)

  • 三田誠広氏(作家、社団法人日本文藝家協会副理事長)

 <コーディネーター>


  • 津田大介氏(IT・音楽ジャーナリスト)

 延長賛成派の瀬尾氏は「欧米諸国は『死後70年』に延長済み。日本発のコンテンツの海外展開を考えると、日本の著作権も国際ルールに統一すべき」、同じく賛成派の三田氏は「著作権が切れて自由に著作物を利用できるようになると、文学作品を勝手に書き換えた作品が出回るかもしれない。著作物の”人格権”を守るために、できるだけ長いほうがいい」と訴えた。




 一方、慎重派の佐野氏は「著作権を延長する理由として、クリエイターの創作意欲が増すと言われているが、物書きの立場からすると、本当にそんなことがあるのかと思う」と延長を求める声に疑問を呈した。林氏は「一律に著作権を延長するのではなく、自分の作品の延長を望む人がお金を払って定期的に更新する仕組みがよいのではないか」と説明した。




 フォーラムでは今回のトークイベントの模様を動画配信している(http://thinkcopyright.org/resume_talk01.html)ほか、今後も開催していく計画。次回は4月12日。





「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」ホームページ
http://thinkcopyright.org/


2007年2月21日水曜日

ネット広告市場、2年で2倍に マス4媒体は微減

06ad 電通が20日発表した「2006年(平成18年)日本の広告費」によると、国内の総広告費は5兆9954億円となり、前年と比べ0.6%増加した。インターネット広告費が29.3%増の3630億円となり、雑誌広告の規模に迫ったほか、販促関連のSP広告費も伸びた。テレビや新聞などの「マスコミ4媒体広告費」は2.0%減の3兆5778億円となり、2年連続で4媒体全てが減少した。総広告費に占めるネット広告の比率は6.0%になり、2年でシェアは2倍になった。



















ネット広告の成長をけん引するのは検索連動広告。前年比57.6%増の930億円だった。テレビCMで検索するキーワードを知らせて、検索サイトからネット広告に誘導する手法が定着し、検索エンジンマーケティング(SEM)市場の拡大につながった。携帯電話を使ったモバイル広告は35.4%増の390億円だった。飲料や自動車などの分野でナショナルクライアントと呼ばれる大手の広告主がモバイル広告を全国規模のキャンペーンに活用した。ネット広告の規模はラジオを抜いた04年時点の2倍に拡大し、広告全体での存在感を増している。





「マスコミ4媒体」のうち、最も減少幅が大きかったのは新聞広告。前年比3.8%減の9986億円となり、1兆円を下回った。テレビはスポット広告が前年比2.9%減となったことが響き、1.2%減の2兆161億円だった。電通は2007年の見通しについて、総広告費は1.1%増の6兆613億円になり、4年連続で増加すると予測するものの、マスコミ4媒体広告費は1.0%減少するとみている。ネット広告は引き続き伸びて、雑誌広告費を抜く規模になるという。











2007年2月7日水曜日

ユーチューブ、日本の著作権団体と初協議

世界最大の動画共有サイト「ユーチューブ」への違法な動画投稿問題をめぐり、放送各社や著作権団体など23事業者の実務者が6日、米ユーチューブ(カリフォルニア州)のチャド・ハーレイ最高経営責任者(CEO)と東京都内で初めて会談した。ユーチューブ側は違法な投稿に関する日本語の注意書きをサイトに掲示すると表明したが、動画の投稿者に氏名や住所を登録させる23事業者側の要求については難色を示した。



























23事業者側は昨年12月、著作権を侵害する投稿を排除する侵害防止システムの導入を柱とする要請文をユーチューブに送付していた。ユーチューブは要請文を踏まえ、ハーレイCEOが日本音楽著作権協会(JASRAC)を訪問。会談には、スティーブ・チェン最高技術責任者(CTO)や昨年、ユーチューブを買収した米グーグルの担当者も同席した。23事業者側はユーチューブの対応を評価するものの、「(協議の)中身は満足いくものではない」(JASRACの菅原瑞夫常務理事)としており、ユーチューブとの協議を継続する構えだ。





ユーチューブとの初会談で、23事業者にとっての具体的な成果は日本語の注意書きを載せることのみ。抜本的な対策として求めている「侵害防止システム」などの開発については、グーグルも協力して技術的な解決に向けて努力するとの約束を取り付けたとしているが、実現性については「時間がかかると認識している」(日本民間放送連盟の植井理行IPR専門部会委員)と受け止めている。











2007年2月6日火曜日

テレ朝、通販・データ放送事業を再編へ

テレビ朝日は今春をメドにグループ内のテレビ通販、データ放送事業を再編する。テレ朝本体と子会社に分散しているテレビ通販事業は近く新会社を設立し、事業を集約。その上でインターネット通販の分野も開拓する。データ放送をめぐっては、子会社のテレビ朝日データビジョン(東京・港)とデジタル・キャスト・インターナショナル(デジキャス、東京・渋谷)の事業を一本化する方針だ。グループ内での業務の重複を解消し、放送外事業の効率化を図る。























テレ朝の君和田正夫社長は5日開催の業績説明会で「ショッピング事業を4月1日に一本化する。新会社を設立する作業を進めている」と述べた。新会社はネット通販に加え、子会社のテレビ朝日リビング(東京・港)が展開するテレビ通販事業などを統括する見通しだ。デジキャスはデータ放送向けコンテンツ(情報の内容)制作を手掛けており、テレビ朝日が昨春、子会社化した。データ放送事業再編でグループ内に分散している制作機能の集約を急ぐ。





テレ朝は2日発表の新中期経営計画で、2011年度に連結売上高を3000億円に増やし、営業利益を200億円にする目標を掲げた。放送事業の広告収入は横ばいで推移すると見ており、収益力の向上には通販などの放送外事業の強化が不可欠になっている。同社は06年度を最終年度とする2カ年の「第二期全社変革推進運動」を展開中。広告収入を2000億円にする目標などを掲げてきたが、今年度の広告収入は1960億円にとどまる見通しで「目標を達成できないことはほぼ確実」(君和田社長)と説明している。





 ■音楽アーティスト、クリエーター発掘も





テレビ朝日は放送外事業強化の一環として、音楽アーティストやコンテンツ制作者の新人発掘に注力する。子会社のテレビ朝日ミュージック(東京・港)が無名アーティストの紹介番組「ストリートファイター」と連携した新人発掘作業を全国8都市に広げる。コンテンツのクリエーター発掘では、テレ朝とデジタルスケープが共同出資で新会社を4月に設立する。音楽や映像分野の有望な人材を掘り当て、音楽出版事業や動画コンテンツのライセンス事業を収益源に育てる。





音楽アーティストやタレントの発掘では「系列局と提携し、各局で『ストリートファイターズ』の地域版を展開し、勝ち残った人が本決勝に出る仕組み」(テレ朝の君和田社長)を用意する。系列局の協力を得ながら、ケツメイシなど子会社所属アーティストの層を厚くして、ヒット作の有無に左右される音楽出版事業の収益性を安定させる狙いだ。





デジタルスケープと共同出資で4月に新設する合同会社(LLC)のブロードスター(東京・渋谷)は動画コンテンツ投稿サイトの運営会社になる。デジタルスケープが02年に開設したサイト「ブロードスター」の内容を強化し、サイトの広告収入を増やす。クリエーターの支援を通じて、有力な映像作品のライセンス事業も検討している。






















2007年2月1日木曜日

ミクシィ、携帯電話に軸足--課題は広告単価

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)大手のミクシィが携帯電話を通じたサービスに軸足を移し始めている。利用者のサイト閲覧数を示す「ページビュー(PV)」の内訳を見ると、パソコンによる閲覧の伸びを抑制する格好で、携帯電話から閲覧する比率が高まっており、1月は携帯電話が全体の3割を占めた。広告のPV単価はパソコンが上昇している半面、携帯電話は横ばいで推移しており、携帯電話からの閲覧者を対象にした広告の収益力強化が課題になっている。

























同社は昨年12月、携帯電話で利用する「mixiモバイル」の強化策を相次いで打ち出した。有料会員に限定していた会員同士のメッセージ送受信機能を全会員に広げたほか、ミクシィへの招待や会員登録の作業も携帯電話で可能にした。KDDIの「au」はミクシィを公式サイトに登録。2月5日にはNTTドコモでも公式サイトになる予定だ。一連の強化策が奏功し、「mixiモバイル」の月間閲覧数は12月に24億7000万PVを記録。1月15日には、1日当たり1億PVの水準を突破した。





ミクシィのPV全体に占める携帯電話の比率は昨年11月に19.5%だったが、12月は27.7%に上昇。1月も携帯電話からの閲覧が伸び、全体の3割を占めているという。一方、収益の柱である広告事業を支えるパソコンからの閲覧数は、12月に前月比6.9%の64億2000万PVにとどまった。同社はパソコンからの閲覧数減少について、携帯電話からの閲覧に「奪われた面は否めない」(笠原健治社長)と見ている。





SNSの広告収入のうち携帯電話向け広告が占める割合は10%程度。「mixiモバイル」は現在、トップページに広告枠があるだけだが、「第4四半期に(広告の)露出面を増やす」(笠原社長)としており、携帯電話向け広告を拡充する方針だ。携帯電話の場合、1PV当たりの広告単価は0.011円。パソコンと比べ、5分の1という水準だが、将来は「パソコンの単価と似たような数字になる」(笠原社長)と予測しており、携帯電話SNSの収益力向上を急ぐ。





2月5日に開始する動画共有サービスもテレビ番組の映像を無断投稿するなどの行為を取り締まるため、利用者自身が携帯電話で撮影した動画の投稿が中心になると見られている。携帯電話SNSをめぐっては、ネット競売のディー・エヌ・エーがSNSやゲームを楽しめる携帯電話サイト「モバゲータウン」で若者の利用者を増やしているほか、グリー(東京・港)もKDDIと提携して携帯電話専用のSNSを展開している。

















2007年1月25日木曜日

ヤフー、ネット調査のインタースコープ買収へ

ヤフーは24日、インターネット調査大手、インタースコープ(東京・目黒)の株式を取得し、2月に連結子会社化すると発表した。同社の既存株主から株式を譲り受け、発行済み株式の3分の2以上を取得することで基本合意しているが、買収額は未定という。ヤフーは企業のマーケティング活動に関するコンサルティングを得意とするインタースコープを傘下に収め、ネット調査事業を強化する。





ヤフーは2002年にインテージと共同出資会社のインテージ・インタラクティブ(東京都久留米市)を設立し、ネット調査事業に参入。05年には、ネット調査大手のインフォプラント(東京・中野)を買収している。データマイニングと呼ばれる情報解析のノウハウを持つインタースコープを加え、傘下の3社による「ヤフー!リサーチ連合」の新体制で、顧客企業の多様な需要に対応できるとしている。


インタースコープは2000年3月設立。06年6月期の売上高は10億900万円、純損益は1億5100万円の赤字だった。デジタルガレージのベンチャー支援子会社、DGインキュベーション(東京・渋谷)が株式の31.41%を握っていたが、ヤフー傘下で収益力の強化を目指す。消費者のネット利用頻度が高まり、企業のマーケティング活動に関連したネット調査の市場は成長が見込まれている。


ヤフーが同日発表した06年10-12月期の連結業績は純利益が前年同期比20%増の151億7200万円だった。広告事業の売上高は同20%増の217億円。大手の広告主が広告出稿に慎重だったものの、検索型広告の分野を開拓し、小口の広告主を掘り起こすことで、増収につなげた。


2007年1月18日木曜日

セカンドライフ、2月をメドに日本語版登場

Robin インターネットの仮想都市ゲーム「セカンドライフ」を運営する米リンデンラボ(カリフォルニア州)のロビン・ハーパー副社長=写真=は18日、デジタルハリウッド大学院(東京・千代田)主催のセミナーで講演し、「仮想通貨を支払って利用できる新サービスを考えている」と述べた。同社の主な収入源は仮想都市の「土地」代だが、米ドルと交換できる仮想通貨を稼ぐ自社の経済活動も本格化させる考えだ。日本語版サービスは1-2カ月後に開始する方針だ。



























リンデンラボはセカンドライフで使う「ビューワー」と呼ばれるソフトの日本語版を近く発表する。ビューワーは仮想都市で活動するアバター(分身)の設定、アバター同士の会話、商品の売買などに使う「操縦席」の役割をするソフト。日本語版のビューワーを提供し、日本語で「生活」できる環境を用意することで、日本人の利用者を増やす狙いだ。仮想都市内に日本人同士が交流できる場所も提供するという。日本での利用者は現在、1万4000人程度。





コミュニティー部門担当のハーパー副社長は「セカンドライフはゲームではない」と強調。参加者同士が交流するコミュニティーを提供するサービスとして売り込む考えを示した。消費者のコミュニティーには企業も注目しており、仮想都市の「土地」を購入し、自社のPRや商品の販促活動を展開する例も増えている。リンデンラボは「技術と仮想空間を提供するだけで、使い方は参加者次第」という姿勢だったが、今後は仮想通貨「リンデンドル」を支払うことで利用できる「住民」向けのサービスを独自に提供したい考えだ。





セカンドライフの登録者は200万人を超えており、1カ月に1度以上は仮想都市で活動する実際の利用者は55万3000人程度という。日本語版サービスの開始に伴い、ネット内コミュニティーの愛好者が日本からも多数参加すると見られており、ネットによる販促活動の一環としてセカンドライフを活用することを検討する企業が増えている。デジタルハリウッド大学院のセミナーには定員を大幅に上回る120人が集まった。















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