2005年11月29日火曜日

産官学でコンテンツ政策提言へ--研究会が発足

Mrichiya コンテンツ(情報の内容)産業の振興に関する政策提言をする産官学連携組織「コンテンツ政策研究会」が28日発足した。デジタルハリウッド東京本校(東京・千代田)で同日開催した設立総会で、幹事の中村伊知哉スタンフォード日本センター研究所長=写真=は「コンテンツ政策研究会を政策提言のためのコミュニティーとして運営する」と表明。政府のコンテンツ政策を評価するほか、コンテンツ政策を研究する大学・研究機関向けの教材を開発するなどの活動方針を決定した。



Contents コンテンツ政策研究会には産官学の各方面から124人が参加した。設立総会=写真=の後も、随時参加者を募集するという。呼びかけ人となった杉田定大・内閣官房知的財産戦略推進事務局参事官は「政策に反映できる提言があれば、反映していきたい」と述べ、コンテンツ政策研究会への期待感を示した。大学・研究機関側からは金正勲・慶応義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構助教授が参加し、大学・研究機関が政策効果の評価・測定方法を確立するための活動を積極化する考えを強調した。



産業界からはコロムビアミュージックエンタテインメントの廣瀬禎彦社長が「コンテンツ振興基金」や「コンテンツ活性化税」などを創設して、コンテンツ振興政策のための財源を確保するなどの提言をした。


2005年11月17日木曜日

TBS、スポット苦戦で業績下方修正

TBSは16日、2006年3月期の連結経常利益が前期比34%減の145億円になる見通しと発表した。テレビのスポット広告収入が当初予想を下回るほか、プロ野球球団、横浜ベイスターズの赤字を埋め合わせる「支援金」が発生するため、売上高や経常利益の当初予想を下方修正した。スポット広告の苦戦については「構造的な問題としてテレビを取り巻く環境が変わっているのか、現場で判断をする検討に入っている」(平本和生常務)としており、対応策を打ち出す方針を示した。












売上高は3030億円の予想を3006億円に下方修正した。同日の中間決算記者会見で、平本常務はスポット広告低迷などの収益環境の変化に関して「この10年の流れでは一番厳しい。この時期だけで、V字回復を果たせるのか、自信を持って答えられない」と述べた。インターネットやデジタルビデオレコーダー(DVR)の普及の影響については「統計的に見て、影響を受け始めているのかはテレビ業界全体の研究テーマだ」と指摘。そのうえで「新しい事業について総合的に計画を立てている。テレビ産業以外の事業も急いで計画を策定していく」と強調した。



TBSは筆頭株主の楽天から経営統合の提案を受けており、今月中に回答する方針。平本常務は同問題と業績の下方修正は関係ないとしている。楽天はネットの電子商店街事業で構築した顧客データベースを活用して広告価値を向上させるなどの提案をしているが、TBSは楽天の提案を受ける前から独自にネット関連事業を展開している。売上高は9月中間期で10億円規模になっているが「1カ月分のテレビスポット収入と比べても小さい。望みを託している部分ではあるが、試行錯誤の段階」(経理部)という。



今回の業績下方修正で経常利益は180億円の予想を145億円とした。横浜ベイスターズへの支援金は12億円となる見込みで、広告宣伝費としてテレビ部門のコスト増加要因になるが「球団を保有する価値は高く、今後とも支援する。球団の売却はしない」(平本常務)と説明している。村上世彰氏が率いる投資ファンド、MACアセットマネジメントとの関係については、村上ファンド側から株主名簿の閲覧請求があり、拒否したことを明らかにした。








2005年11月16日水曜日

ネット広告の好調続く 電通と博報堂DY

インターネット広告の市場規模は2005年度下期に50%程度の成長率を維持しながら拡大する見通しだ。電通は2005年9月中間期にネット広告の売上高が前年同期比58%増の197億円に達した。博報堂DYホールディングスも前年同期比48%増の62億円となり拡大基調が続いた。両社はそれぞれ「下期も60%は伸びる」(電通の釜井節生取締役)、「下期も同じ傾向が続き、5割弱の伸びになる」(博報堂DYの保科伸夫専務)との見通しを示している。











電通のシンクタンク会社である電通総研が7月にまとめた試算によると、ネット広告費は2005年に前年実績と比べ、5割増の2722億円に達する見込み。07年には雑誌の広告費を上回り、テレビ、新聞に次ぐ広告媒体に成長するとの見方もある。電通と博報堂DYが2005年度後半もネット広告費の順調な伸びを見込んでいることは、市場規模が予測通りに拡大していることをうかがわせる。





電通は2005年3月期にネット広告の伸び率が30%だった。今期は10月以降も60%の成長率を見込んでおり、市場拡大は加速しているもようだ。総広告費に占めるネット広告費の割合は3%程度。急成長が続いているものの、「今のところマスメディアが影響を受けるという状態にはなっていない」(電通の釜井取締役)との見方が支配的だ。

















2005年11月11日金曜日

再びグーグルゾンを読み解く(1)「グーグルゾン」誕生前夜

インターネット企業とメディア企業の覇権争いが相次ぐ2005年。変化のスピードが加速するメディアの未来を考えるヒントとして、「EPIC2014」と題するSF短編映像が昨秋から今春にかけて日本のメディア業界に伝わったことは記憶に新しい。この映像作品に登場する米国のグーグルとアマゾン・ドット・コムの幹部がこのほど相次ぎ来日。両社の戦略が伝わるにつれ、「EPIC」を再検証する必要性も浮かび上がってきた。今春に続いて、再び「グーグルゾン(Googlezon)」の物語を読み解いてみる。



日本経済新聞社などが10月に開催した「世界経営者会議」。グーグルのエリック・シュミット会長兼最高経営責任者(CEO)は会議の席上、世界中の書籍を電子化する構想について「本を無原則にコピーさせるつもりはなく、検索により埋もれていた本の購入を促すのが目的だ」と力説した。「電子図書館」計画は一部の出版社が反発しているものの、シュミット氏は強気な横顔をのぞかせる。EPICに登場する架空企業のグーグルゾンは米ニューヨーク・タイムズと著作権をめぐる係争を最高裁まで繰り広げるタフな企業として描かれているが、グーグルゾンの前身にあたるグーグルも現実の世界で攻めの姿勢を崩さない。


埋もれていた過去の出版物の販売を促進するという戦略は、グーグルゾン物語のもう一つの主役、アマゾンの姿と重なり合う。アマゾンは顧客の購買履歴に基づくレコメンデーション(推薦)機能を武器に、売れ筋商品以外も薄く広く売り込む「ロングテール商法」を確立し、成長を続けてきた。グーグルはアマゾンのように物流機能も抱え込んだ物販にまでは踏み込まないが、得意分野の検索技術を活用して販売促進の分野に切り込んでいく方針だ。あらゆる電子化された情報を束ね、閲覧者のリーチ(到達)を極大化することで広告収入を増やすという従来の戦略一辺倒ではなくなる兆しを見せる。


Amazon_1  グーグルのシュミット氏が講演した3日後の10月28日。アマゾンのカル・ラーマン上級副社長=写真=も東京都内で講演し、書籍の電子化に関連した新サービスを日本でも始めると表明した。アマゾンジャパンは講談社など280社の協力を得て、キーワードによる検索で本の中身をネットで閲覧できるようにした。このサービスは米国で2年間の実績があり、米アマゾンは来年からは書籍のページを「立ち読み」するだけでなく、必要なページがあれば、ページ単位で購入できるようにする。書籍を配送するビジネスだけでなく、テキストのコンテンツ(情報の内容)をネット配信する事業に本格参入する構えだ。


検索したコンテンツをネットで提供する手法はグーグルの狙う事業領域と重なり合う。グーグルのアマゾン化、そしてアマゾンのグーグル化――。「EPIC」は両社が合併して新会社「グーグルゾン」が誕生するという話だが、実際に両社が合併するかどうかを議論することに意味はない。コンテンツをかき集めて、提供することで圧倒的なリーチを誇るグーグル。書籍以外にも幅広い商品を扱い、消費者の購買履歴を握るアマゾン。両社の強みを合わせ持つ「グーグルゾン」型企業こそが、メディアとして、マーケティングの巨大システムとしてネットの覇権を握るという現実を重視すべきなのだろう。


Raku_1 最近、日本で「グーグルゾン」志向を強めている典型的な企業は楽天だ。グーグル型の検索ポータル(玄関)サイトも手掛けているが、リーチは国内トップのヤフーに及ばない。楽天のグーグルゾン志向はアマゾン型企業のグーグル化という構図。三木谷浩史社長=写真=は常々、「3000万人の会員データベースが強み」と力説している。TBSとの経営統合構想をめぐっては楽天のポイント制も活用しながら、番組や広告を個々の会員にレコメンデーションする戦略を打ち出している。リーチを極大化できる展望が開ければ、顧客のニーズを個別にきめ細かく刈り取れる会員データベースが強みを増すことになる。


グーグルの圧倒的なリーチ、アマゾンの膨大な消費履歴データ。この2つを握る「グーグルゾン」型企業は「不特定多数」の相手にコンテンツを一方的に送り出すだけのマスメディアとは根本的に異なる事業基盤を持つ。顧客データベースを活用して「特定多数」の顧客に対して個別にコンテンツをフィード(提供)するインフラを握るからだ。楽天は単に映像コンテンツの確保を狙ったのではなく、楽天・TBS連合軍でリーチを極大化しようと呼びかけたはずだったが、資本をめぐる攻防戦に陥り、構想は暗礁に乗り上げている。


「3年後に三木谷の言っていることは正しかった、ということになる」。三木谷社長はメディアの未来を見据えた主張に自信を見せる。「消費者はネットで買い物をするようになる」という仮説を現実の話にしたビジョナリー(予言者)としての自負心もあるのだろう。北京五輪開催などが予定される3年後、デジタル家電は日本の各家庭に本格的に普及すると見られている。メディア企業やネット企業が本格的なデジタル時代への布石を打とうとしているとき、「EPIC」はこう語りかける。2008年、グーグルゾンが誕生する。


2005年11月2日水曜日

書籍の中身検索に講談社など280社が協力

インターネット通販大手のアマゾンジャパン(東京・渋谷)は1日、書籍の中身をネットで検索できるサービスを始めたと正式発表した。講談社、PHP研究所など280社の出版社が協力。キーワードで書籍を検索し、本のタイトルだけでなく、文中にキーワードが含まれている書籍を探して、そのページを閲覧することができる。検索が可能な書籍は13万冊。



米アマゾン・ドット・コムは2003年10月に同様のサービスを始めている。日本でのサービス名は「なか見!検索」。過去にアマゾンジャパンを利用して商品を購入した実績があるユーザーが新サービスの対象になる。キーワード検索で探したページと前後の2ページを含めて合計5ページを無料で「立ち読み」できるため、ユーザーは書籍の中身を確認してから購入することが可能になる。


ユーザーによっては、5ページ分を無料で読むだけで満足して、購買には結びつかない場合もあるが、2年間の実績がある米国では、書籍の内容への理解が深まり、結果的に書籍の拡販につながっているという。アマゾンジャパンは今後も出版社との関係を強化して、検索可能な書籍を増やしていく方針だ。


「ガチャガチャ」が販促用の広告手段に

Gacya 人材派遣、託児所運営を手掛けるビーンズパートナーズ(さいたま市、神山和輝社長)は1日、商業施設の託児所を活用して、子育て世代の主婦層を対象にしたマーケティング支援を始めた。商業施設の特売情報やクーポン券、サンプル商品の引換券を「ガチャガチャ」=写真=と呼ばれる自販機のカプセルに入れて託児所を訪れる母親に無料で提供する。第1弾としてダイエー大宮店(さいたま市)が導入を決めた。



カプセルには幼児向けの菓子類も入れてあり、託児所のスタッフがダイエーで買い物をする母親に100円玉を手渡して「ガチャガチャ」のカプセルを受け取るように勧める。このため不特定多数の来店客に特売情報のチラシを配布するよりも、来店した母親の顧客が幼児を預けている時間に化粧品販売店などに立ち寄る可能性が高まると見ている。


託児所が入居している商業施設のテナントなどに広告媒体として売り込む。カプセルに入れるチラシ類は30枚で1万5000円。ビーンズは託児所の運営をダイエーから受託しているが、これとは別に販促支援が新たな収入源になる。ガチャガチャのカプセルを販促用の広告媒体に活用する例は珍しい。


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