2007年5月29日火曜日

「検索連動広告への期待が大きく」――広告主のモバイル広告利用動向調査

日経広告研究所、ディーツー
コミュニケーションズ、日経メディアラボは、モバイル広告について広告主企業の利用動向を調査した。それによると、06年度にモバイル広告を出稿した企業のうち56.8%が07年度に「検索連動型」を利用したいとの意向を示し、37.8%が配分を06年度より増やすとしている。これは調査した5つの広告タイプの中でそれぞれ最高の数字となる。



この調査は2007年2-3月に実施。日経広告研究所の「有力企業の広告宣伝費」の上位1500社に聞いたところ、274社の回答を得た。


 


07年度におけるモバイル広告の利用意向について、回答企業全体に聞いたところ、「検索連動型」が16.4%と最も高く、「掲載期間保証型」「アフィリエイト」と続く。パソコンのインターネット広告では、「検索連動型」が46.0%と、他のタイプを大きく引き離しており、モバイル広告もパソコンのインターネット広告での実績に影響されている可能性もある。


 


パソコンのインターネット、モバイルを問わず、06年度に「検索連動型」を出稿した企業の評価では、「ターゲットを絞り込みやすい」「費用対効果が明確」が上位となり、母数が少ないものの、モバイル検索連動広告の出稿経験者の約4分の3が「ターゲットを絞り込みやすい」としている。


 


パソコンのインターネット広告の流れを追うモバイル広告


 


06年度に出稿したモバイル広告のタイプでは、「露出保証型(広告表示回数保証)」と「掲載期間保証型」がともに64.3%で主流となっている。05年度と比較すると「露出保証型」が40ポイント弱伸びているのが目立つ。パソコンのインターネット広告では一般的な「露出保証型」がモバイル広告にも浸透したということは、定額性の普及によりモバイルサイトの閲覧数が増え、表示回数で販売することが可能な在庫が増えてきているといえるだろう。


 


06年度のモバイル広告出稿経験者は効果測定にも力が入ってきた。「特に測定していない」が15ポイント下がり、ほとんどの企業で測定するようになったが、クリックに関連する測定方法(クリック数、クリック単価、クリック率)が全て大幅に上がった。パソコンのインターネット広告で一般的となっている測定方法が定着し始めており、モバイル広告が普及期に入ったとみるサインになるのではないか。


 


モバイル広告の特徴を生かし、評価は上がる


 


モバイル広告の評価について、回答企業全体に聞いたところ、「ターゲットを絞り込みやすい」「目的に合わせた利用がしやすい」が昨年度の調査と同様に上位を占めた。他の理由を含めて、全体的に昨年度よりは高い数字となっており、モバイル広告自体の評価が高まっているといえるだろう。モバイル広告出稿経験企業に絞ると「ターゲットを絞り込みやすい」が56.8%でトップとなり、昨年トップだった「効果がすぐに把握できる」が48.6%で続く。


 


一方、出稿経験者の不満点は、昨年と同様に「文字数・情報量などに制約が多い」「伝えられる情報量が少ない」「表現力に乏しい」が並ぶが、昨年度と比較すると、全体的に低い数字となっている。特に「文字数・情報量などに制約が多い」は10ポイント強下がっており、ディスプレイの制約内での工夫が進み始めたと考えられる。違う見方をすれば、ディスプレイ内で広告が占有する割合は、パソコンのインターネット広告と比較しても、かなり大きくなるので、注目率は高くなるともいえる。


 


詳しいリリースはこちら


2007年5月10日木曜日

「ネット・ガバナンス、利害超えた議論が大切」

マーカス・クマーIGF事務局長
 インターネットの管理体制(インターネット・ガバナンス)をテーマに活動している国連インターネットガバナンスフォーラム(IGF)。米国主導のインターネット運営に対する批判が高まるなか、国連が設けた組織で、2005年の世界情報社会サミット(WSIS)で設立が決まった。来日中のマーカス・クマー事務局長に、2006年秋にギリシャ・アテネで開いた第1回総会の成果や、今後の活動などについて聞いた。



――アテネの第1回総会の成果は


 「政府、企業、NGO(非政府組織)、技術者など、様々なステークホルダー(利害関係者)が一堂に会し、丁々発止の議論で盛り上がった。議論のテーマも著作権、サイバー犯罪など多岐にわたった。インターネット関連の会合はたくさんあるが、こんな議論の機会を持てたのはIGFが初めてだと思う」


 「なかでも、政府、企業、市民社会など様々な利害関係者が協力する「ダイナミック・コアリション」(積極的な連携)の重要性が指摘されたことは大きな成果といえる」


 「『(インターネットの)開放性』『セキュリティー』『多様性』『アクセス』などの議題のうち、最も刺激的だったのは『開放性』。特定の国や企業を名指しして責めるような外交的な議論ではなく、民間企業がどういう役割を果たせるか、そもそもネット上の表現の自由とはどういうものか、といった議論できた」


 「世界情報社会サミットでは、ここまで突っ込んだフランクな議論はできていなかったと思う。(特定の利害関係者による議論と違い)既存のビジネスモデルを超えた解決方法があるかもしれない、という段階まで議論を深めることができた。また、インターネット自体が、ダイナミックに進化し続けていることも、強調された」


――今後、議論していくテーマは


 「2007年11月に第2回IGF総会をブラジル・リオデジャネイロで開く予定。議論のテーマはこれから決めるが、幅広いテーマについて話し合う姿勢は続けていく。第1回総会で議論された途上国支援や、(スパム対策などに取り組むうえで)国内法と国際協力の兼ね合いをどうするか、などが重要になるだろう」


 「スパム対策などの国際ルールをつくるとすると、「国際条約をつくろう」という人もいる。しかし、国際条約をつくるのは、時間がかかりすぎる。ようやく条約ができたと思ったら、技術が進んで、もうその問題は存在していない…といった事態も十分考えられる」


――IGFでのクマー氏の役割は


 「私は国際社会のために働く公僕だ。いろいろな人の貴重な意見に耳を傾けることが重要だと思っている。IGF以外にも様々な会合に参加し、そこで知り合った各国の人々から招待を受けて説明に出掛けることも多い。様々なステークホルダーの方々に会い、IGFの議論に参加してもらうのが私の役目。インターネット・ガバナンスの問題は政府だけでなく企業や市民社会、技術者らが一体になって、取り組むことが重要だ」


――日本の政府や企業、市民社会に望むことは


 「日本はICT(情報通信技術)にとっても、インターネットにとっても、国際的に重要な国。あらゆる人々にIGFに参加してもらえるよう、切に願っている。政府関係者だけでなくビジネスリーダーにもどんどん参加してほしい」


――通信の標準化を進めているITU(国際電気通信連合)、インターネットアドレスを管理しているICANNと、IGFはどう違うのか


 「IGFは意思決定をする組織ではない。様々な立場の人々が同じ屋根の下に集まって話し合う中立的なプラットフォームだと考えてほしい。どんな立場の人でも、恐れずに議論に参加できる」


 「IGFは意思決定の機能がないのが弱点だと言われることもある。しかし、様々な立場の人々が交渉ベースではなく自由に議論できる利点がある。毎年開催される世界経済フォーラム(ダボス会議)も、意思決定の機能が弱いが、世界各国の人々から高い関心を集めている。IGFも同様だ。ITU、ICANNはそれぞれ本来の活動があり、活動範囲を超えた広範なテーマの議論は難しい。IGFと補完関係になれる」


■関連リンク
「インターネット界のダボス会議を目指す」(NIKKEI NET)
インターネットガバナンス」(ウィキペディアの用語解説)
IGFのホームページ(英文)


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