2005年10月29日土曜日

ユーザー志向の果てに 「グーグルゾン」の予感

アマゾン・ドット・コムは「顧客第一」。グーグルは「ユーザーの役に立つために」。10月28日、日経BP社が主催する「WPC EXPO 2005」の基調講演に米国を代表するインターネット企業の両雄が登場し、両社の講演者はそれぞれこんな企業理念を力説した。ネット社会の未来を描いた短編映像「EPIC 2014」で「グーグルゾン」という言葉が紹介されてから1年。両社を結びつける共通のキーワードとして「ユーザー志向」が浮かび上がった。



P1000005_1アマゾン・ドット・コムは①価格②利便性③品揃え――を向上することにより、ユーザーが快適にショッピングできる環境を整えることに注力している。「この原則は社員全員のDNAに入っている」(カル・ラーマン上級副社長=写真)としており、社内でも顧客第一の考え方を徹底している。「送料を無料にすることはかなりの経費増になっている」(ラーマン副社長)としながらも、送料無料の条件を満たすことがリアルな店舗に対抗するための重要なポイントになっている。 


P1000021_bグーグルは「世界中のあらゆる情報を整理し、世界のどこからでもアクセス可能にして、ユーザーに役立つようにする」(マグラス・みづ紀エンジニアリング・ディレクター=写真)という使命を自らに課して、多様なサービスを開発している。ユーザーの利便性を最重要視して開発した登録者向けのサービス、多言語に対応するグローバルなサービスはこの使命に基づくものだ。マグラス氏は「個人情報の問題があり、パーソナルなサービスは全てオプションだが、ユーザーから受け入れられた」と強調。ユーザー志向のサービスのためにユーザーが個人情報を開示することを気にしていないとの方を示した。


両社が合併して誕生するというグーグルゾンの物語は「EPICは私たちが求めたものであり、選んだものである」と語りかける。現実に両社は共通のキーワード「ユーザー志向」を掲げて成長中だ。「EPIC2014」はユーザーの限りない欲望を技術革新によって満たし続けた結果、創り出される「EPIC」というモンスターの姿を逆説的に描き出していた。グーグルとアマゾンが掲げる企業理念に改めて耳を傾けると、「EPIC」が現実に登場する日を思い起こさせる。


米アマゾン、日本でも書籍の中身を読めるサービス

インターネット小売業最大手の米アマゾン・ドット・コムは年内をメドに書籍の中身を検索できるサービス「サーチ・インサイド・ザ・ブック」を日本で始める。キーワードを含む書籍のページを探し出して、ネットで一部を読めるようになるため、書籍の内容を確認してから購入することができる。来日中のカル・ラーマン上級副社長が28日、パソコンの展示会「WPC EXPO 2005」(主催・日経BP社)の基調講演で明らかにした。



「サーチ・インサイド・ザ・ブック」は2003年に米国市場で開始。題名と著者名で書籍を探すだけでなく、ユーザーが関心を抱いている内容かどうか中身を読んで選べるため、書籍の販売拡大につながったという。カル・ラーマン上級副社長は新サービスについて「調べたい言葉が本の中で、どういう文脈で出てくるのかを見つけることができる。日本でも、このサービスをもうすぐ立ち上げる」と述べた。



米国以外では、英、独、カナダで同サービスを提供しており、日本は5カ国目になる。アマゾンジャパン(東京・渋谷)は現在、国内の複数の出版社と書籍の一部の内容をオンライン化する交渉をしている。


2005年10月27日木曜日

「きっかけはGyaO(ギャオ)の出現」楽天社長

R_2 「GyaO(ギャオ)の出現は大きなポイント」――。楽天の三木谷浩史社長は26日の記者会見=写真=で、TBS株の買い増しにより両社の経営統合を急ぐ考えを強調し、映像配信事業への意欲をにじませた。USENのインターネットによる無料の映像配信サービス「ギャオ」を引き合いに出して「ギャオが成功すれば、競争相手になる」と指摘。約半年で250万人の会員を集めたギャオの台頭が、ネットと放送の融合をにらんだ経営統合を目指すようになった背景にあることを明らかにした。









三木谷社長は昨年8月からテレビ放送との連携を検討し始めた。同日の記者会見では「確かに2年前は(ネットと放送の融合に)懐疑的だったが、光ファイバーの普及と『ショウタイム』の成功で(融合の)流れを強く感じた」と述べた。ショウタイム(東京・渋谷)は2001年に有線ブロードネットワークス(現USEN)と楽天が共同で設立した動画配信サイト運営会社。映像を見るには毎月の会費と一作品ごとの視聴料が必要になる。一方、USENは今春、無料のギャオをスタートさせて急速にユーザーを増やしている。目標は1000万人としており、動画配信の市場拡大をけん引している。





三木谷社長は28日にギャオのインタビュー番組に出演する。「敵に塩を送ることになるが、まだ、ネット放送を見たことのない人にとっては初めて見る番組になる」としており、メディア再編戦略の持論とネット放送の存在感をネット利用者に訴える考えだ。





「目の前に宝の山が隠されている。テレビとネットががっぷりと組むことで機会を得られる」などと三木谷社長がメディア再編の必要性を呼びかけても、TBS側は楽天が230億円を追加投入し発行済み株式の19.09%を握ったことに対して不快感を示しており、事業面でも協力関係を築くことは困難な情勢に陥っている。TBSは株を買い増さないように求めていたが、三木谷社長は「どうして買ってはいけないのか正直言ってわからない」と主張し、要求を突っぱねた格好だ。













大手新聞社が相次ぎポッドキャスト開始

大手新聞社が相次いでインターネットで音声のニュース番組を配信する「ポッドキャスティング」を始めている。日本経済新聞社、毎日新聞社に続いて、読売新聞社も24日に約20分の番組を配信する「読売ニュースポッドキャスト」を開始した。アップルコンピュータ日本法人が集計しているポッドキャストの人気ランキングによると、26日夕の時点では「日経ブロードバンドニュース」が1位、「毎日新聞ポッドキャスト」も22位に入るなどニュース番組が人気を集めている。









「新聞を読まない若者にまず耳から入り、社説やコラムにも触れてもらいたい」――。コンテンツ(情報の内容)配信のオービチューン(東京・新宿)が26日、アップルストア銀座(東京・中央)で開催したポッドキャストセミナーに読売新聞社の担当者が出席し、「読売ニュースポッドキャスト」の狙いをこう強調した。新サービスは米国でポッドキャストが急速に普及したことに注目した同社の若手記者がポッドキャストを活用したニュース配信の実験を提案し、社内で検討を続けていたという。番組は読売新聞の放送用原稿を活用して、オービチューンが制作。平日午前6時に配信している。





担当者の馬野耕至・東京本社メディア戦略局開発部長は「広告モデルのメドが立ったため、新事業に踏み切った」と説明している。バリアフリーサービスの拡大、新聞無読者の紙面への誘導、新たな収益源の開拓――などの目標を掲げ、新聞離れ傾向が強まっている若者にもアピールする。携帯電話を使いこなす若者を読者に取り込むため、携帯電話とポッドキャストの融合も視野に入れて事業を展開する考えだ。





新聞社がポッドキャストに本格参入することで、広告ビジネスの可能性も広がる。オービチューンはポッドキャストとアドバタイジング(広告)を組み合わせた「ポッドバタイジング」という造語を紹介。ポッドキャストに関連した広告市場の拡大に期待感を示した。同社によると、ポットキャストはユーザー主導型の性格が強く、広告のターゲットにリーチしやすい特徴がある。広告料金を1ダウンロードあたりの単価で決められるため、広告主側のリスクは低く、広告主に売り込みやすいという。





ただ、ポッドキャストを新しい広告媒体として期待しているメディア側から見ると、ダウンロード数に応じた料金体系よりも、番組スポンサー枠として売りたいとの思惑もあり、ポッドキャスト関連広告をめぐって、どのような料金体系が定着していくのかは不透明だ。読売ニュースポッドキャストは現在、スポンサーがついていないという。米有力紙のワシントンポストも映像版のポッドキャスト「ワシントンポスト・ドット・コム・ビデオ」を始めたが、当初は広告がない状態。新聞社が手掛けるニュース「ネット放送」は参入企業が増え、音声から映像へのシフトも始まっているため、今後、広告を含めたビジネスの仕組みづくりで各社が知恵を絞ることになりそうだ。

















2005年10月26日水曜日

第2日テレ、CM視聴を条件に「無料」でOKに

Ntv 日本テレビ放送網は27日深夜(28日未明)に開始するインターネットによる有料の番組配信サービスに、CMを視聴した会員ユーザーがポイントを獲得して映像コンテンツ(情報の内容)を購入できる仕組みを導入する。CM視聴を条件に事実上、無料で番組を楽しめることになる。価格は20分程度の映像の場合、99円。短いニュース映像などは9円になる予定。CMを視聴して得られるポイントは1ポイントを1円に換算して、番組を見る代金に充てることができる。クレジットカードやネット電子決済のウェブマネーも利用できる。



ネット配信事業の「第2日本テレビ」=イメージ写真=は会員ユーザーが仮想商店街の福引きに参加すると、ポイントをもらえる仕組みを用意する。CM視聴後に付与するポイント数をパソコン画面に表示する。日本テレビは25日にデモ画面を公開。福引きコーナーでトヨタ自動車の広告を見た後、30ポイントを獲得する様子も紹介した。CM配信のほか、バナー広告も収入源にする。第2日本テレビ事業本部の土屋敏男VOD事業部長は「今の形が永遠に続くのかはわからない」としており、広告手法の検証を続ける考えを強調した。


2005年10月25日火曜日

松井証券、楽天グループを非難--システム障害で

「手数料を下げてデイトレーダーが増えた末にシステムダウン。オンライン証券の業を軽く見てもらいたくない」――。松井証券の松井道夫社長は24日、決算発表の記者会見で、楽天証券がシステム障害を頻発させていることに不快感を表明した。同席した九鬼祐一郎専務も楽天グループが野球や放送などへの多角化を志向していることを踏まえて「松井証券は他社を買収して多角化することなく、本業のシステム増強にまい進する」と強調した。企業トップが名指しで同業他社を批判するのは異例。









楽天証券は24日にもシステム障害が発生。同日午前9時過ぎに「ウェブ、モバイル画面からのログインができない状況を確認しており、原因を調査中」とのコメントを同社のサイトに掲載した。同日夕に完全復旧したと発表しているが、原因の詳細は明らかにしていない。同社は「史上最大の作戦」と銘打って手数料改定を計画していたが、8月以降にシステム障害が相次ぎ、計画は延期している。松井証券の九鬼専務は「顧客にしてみれば、史上最悪の作戦になった」と批判している。楽天証券は松井証券側からの批判について「一方的な発言に対してはコメントしない」(楠雄治執行役員)としており静観する構えだ。





2005年10月22日土曜日

ヤフー社長、楽天の「戦略」を暗に批判

ヤフーの井上雅博社長は21日、楽天のTBSとの経営統合構想に関連して「今日から株を買えば、明日から何でもできるのか。そうではないと理解している」と述べた。TBS株を大量取得して、共同持ち株会社の設立をTBSに要求している楽天の経営姿勢を暗に非難したものだ。楽天のようなテレビ局の「買収戦略」については「考えていない」と言明した。東京証券取引所で記者団の質問に答えた。



これに先立ち決算発表の記者会見では、テレビ番組のネット配信について「特定のチャンネルではなく、全チャンネルの番組を視聴できる環境にしたい」と語り、特定の放送局との資本提携を目指さない「全方位外交」の方針を強調した。その後、投資家向けの説明会に出席した井上社長は「テレビ局の立場からすれば、(楽天と)独占的な関係を築いてもメリットはない」と指摘。「テレビ局にもメリットがある関係をつくれないと、むしろ、(交渉は)進まない」と語り、楽天の構想が実現困難との見方を示した。


2005年10月19日水曜日

メディア攻防第2幕の「鑑賞法」

Mikitani_1 楽天のTBS株大量取得は、新興ネット企業が既存メディアに「待ったなし」の判断を迫っている構図を浮き彫りにした。既存事業を堅持しつつ、ネットの新事業をじっくり育てようと構えていた既存メディアと、先を急ぐネット企業との時間感覚のズレが目立っている。



(関連記事「メディアラボの目」)









「データベースマーケティングの取り組みによる広告の高付加価値化」。楽天が13日、TBSに提出した「世界に通用するメディアグループ設立のご提案」にはこんな文字が盛り込まれている。楽天は仮想商店街の最大手。ネットで買い物を楽しむ消費者のデータを握っている強みがある。放送局の持つ映像コンテンツ(情報の内容)をネットで有効活用すれば、ヤフーにも劣っている集客力を飛躍的に高め、顧客それぞれの嗜好(しこう)に合わせて商品やサービスの価値を伝える「ターゲティング広告」が可能になるとの読みだ。





「広告の高付加価値化」はテレビ局にとって現在最も重要な経営課題だ。今春、野村総合研究所がハードディスク駆動装置(HDD)レコーダーを使った「CM飛ばし」による広告費の損失額は540億円との試算を公表し、電通が猛反発した一幕があった。ただ、広告業界の中にも「CMスキップという視聴行動は間違いなく進む」(博報堂DYメディアパートナーズの中村博メディア環境研究所長)との指摘があり、テレビ局ももはや問題を軽視できない状況に置かれている。





日本民間放送連盟が始めた、8月28日を「テレビCMの日」とするキャンペーンを見た人も多いだろう。「民放のCM開始は1953年。50周年の節目でもないのに、突然、CMの日と言い出したのはテレビ業界が危機感を強めたことの現れ」(電通OBの北野邦彦・帝京大教授)とみられる。もちろんテレビ局は単に危機感を募らせているだけではない。日本テレビ放送網が27日深夜に始めるネットでの番組配信事業「第2日本テレビ」など、ネット事業をテコに放送外収入を増やす戦略を打ち出しているところも多い。





TBSも従来は著作権処理が困難とされていた連続ドラマなども含め、番組をネット配信する事業を計画するなどで無策だったわけではない。ただ、突然登場した筆頭株主の楽天からネットを経営課題としてもっと真正面から受け止めろとにじり寄られ、焦りの色を隠せないのが現実だろう。既存事業を堅持しつつ、ネットによる番組放映という新事業を自社のペースで育てようという戦略は見直さざるを得ない。





楽天がTBSに経営統合を提案した同じ13日(日本時間)、米アップルコンピュータはテレビ番組などの映像を再生できる新型「アイポッド」の製品発表をした。米ABCの人気ドラマなどの映像コンテンツをダウンロードして、好きな時間に視聴できる生活スタイルを提案したのだ。テレビ番組のネット配信が始まろうとしている日本でも、放送がインターネット経由で「ポッドキャスティング」される時代の到来も遠くなさそうだ。





Justfor_3 この日のアップルの発表はビデオ視聴に話題が集中したが、裏で新しいサービスも始まっていた。楽曲の購入履歴をもとに、ユーザーの嗜好(しこう)に合致していそうな別の曲を紹介する「ジャスト・フォー・ユー」=写真=だ。書籍のネット通販大手、アマゾン・ドット・コムと同じ手法で、アップルは「パーソナライズが可能な楽曲レコメンド(推薦)機能」と説明している。





電子書籍やテレビ番組、音楽などをユーザーの好みに応じて提供するコンテンツ配信のプラットホーム(基盤)は、米国メディアの未来を予測した短編映像「EPIC2014」に登場する企業「グーグルゾン」を想起させる。グーグルゾンは広告もユーザーの好みに応じて提供する。「CM飛ばし」も起こりにくいだろう。楽天の映像コンテンツを活用したデータベースマーケティング戦略がこうしたメディアの未来像と重なり合うとき、楽天のTBSへの「ご提案」はTBSから見ても魅力的に映るはずだ。





ただ、楽天とTBSの経営統合構想が実現するには課題が多い。例えば、「放送とネットの融合」についての基本認識の違いだ。楽天の提案には両社の経営統合のメリットを説明するこんな一節がある。「東京放送(TBS)の様々なコンテンツが従来の無線通信という配信手段に加えインターネットを通じて広く提供される」。あえて「放送」を「無線通信」と表現し、通信の一形態と位置づけている。「放送と通信は協力関係にはなるが、融合はあり得ない」(民放連会長の日枝久フジテレビジョン会長)という見解のテレビ業界を挑発するような文言だ。





ニッポン放送の経営権をめぐって争ったフジテレビとライブドアは提携して「協力関係」を模索することで話が落ち着いた。フジテレビ側が「融合はあり得ない」とライブドアを押し切った格好だが、今回の「第2幕」を見ていると、既存メディアと新興ネット企業は「協力関係」よりも、本質的にメディアの覇権をめぐる戦いが避けられないという現実を実感させる。





(山根昭)






































メディアラボの目 「紙とネット」のジレンマ

Sinbun_1  最近、新聞業界でひそかに話題になっている本がある。「新聞がなくなる日」。著者は毎日新聞社の取締役編集局長などを歴任した歌川令三・東京財団特別研究員だ。著書のなかで歌川氏は「2030年に新聞がなくなる」と予測。本業の紙媒体に加え、インターネットによる電子媒体も手掛ける新聞社が「紙とネット」というハイブリッド型の事業展開をする課題を指摘している。









新聞社は1990年代中ごろから「紙とネット」の経営形態を模索し続けている。これに10年ほど遅れる形で、テレビ放送会社も電波を使った放送事業とは別に、ネット関連事業を本格的に立ち上げて「波とネット」というハイブリッド型を強く志向し始めた。既存メディアには「紙」だけで十分に収益を確保できた時代、「波」だけで十分だった時代が少しでも長続きすればいいとの思惑もあったが、ネット媒体の台頭に伴い、ハイブリッド型への移行を急がざるを得なくなったのが実情だ。





「堀江さんに背中を押された格好になった」(フジテレビジョンの村上光一社長)、「ホリエモンに感謝しないといけない。放送事業者の目を覚ましてくれたから」(産業経済新聞社出身の中村啓治・福島テレビ社長)といった声がフジサンケイグループ幹部からは最近、よく聞かれる。ライブドアの「侵攻」を防衛できた安堵感が背景にあるとはいえ、半分程度は本音の発言かもしれない。





「ネットが既存メディアを殺す」とばかりにテレビ局の買収を仕掛けたベンチャー経営者の登場に、今春、多くのメディア企業が不快感を示した。ライブドアの堀江貴文社長に指摘されるまでもなく、ネット時代を見据えた準備は粛々と進めてきたという自負がテレビ側の経営者にはあったためだ。ただ、メディア関係者の多くは粛々と準備をしながらも、想定していたロードマップ(行程表)が前倒しになりつつあることを感じている。





「著作権の問題なんて実はしっかり手続きを踏めばクリアできる。そうしないのは、まだネットが大きなビジネスになる時期が到来しないないと判断しているからだ。その時期になれば、いつでもクリアできる」。これまでテレビ局の番組ネット配信をめぐっては、著作権問題が難関になるとされてきたが、最近は放送局首脳からはこんな発言も漏れてくる。そして各社はネットが大きなビジネスになる時期を見据えて、「波とネット」型に踏み出し始めている。





新聞社が「紙とネット」の2本柱を目指し10年経過しても、紙媒体が主力で、ネット媒体は補完的な事業という状況に変化はない。ただ、現在、新聞は紙媒体から電子媒体に経営の軸足を移していく過渡期に入っているとの見方もある。その完全なシフトがいつになるのかは不透明だが、歌川氏の「2030年説」のように具体的な時期を予想する動きも、現に新聞関係者の中から出ている。





韓国では市民から記事を募集するネット新聞が成功して、既存の新聞社は相対的に影響力が低下している。米国ではポータル(玄関)サイト大手のヤフーが新聞やテレビの人材を引き抜いてメディア企業としての布陣を固めつつある。「ネットは新聞を殺すのか」などの著作がある時事通信社の湯川鶴章編集委員は「ポータルとメディア企業の衝突は避けられない。この動きは日本にも飛び火する」と見ている。





新聞やテレビなどの既存メディアは現在の主力である既存事業を堅持しつつ、ネットにいつ、どのように軸足を移していけばいいのか難しい判断を迫られている。一気にネット事業に踏み込んでも、新聞やテレビ局が運営するサイトの集客力は主要なポータルサイトと比べて見劣りする。世界を見渡せば、韓国のインターネット新聞「オーマイニュース」、米ヤフーのような新しいメディアと既存メディアの攻防が激化している。





歌川氏の著作は既存のメディアがネットと向き合うとき「カニバリズム」が課題になると指摘する。新聞は既存事業(紙)と新規事業(ネット)の共食いというジレンマに陥っていると分析し、新聞業界に対して「新しい自分を確立するために旧い自分を食ってしまうことができるのか」と問いかける。既存のメディアがネットを経営資源として有効活用できる新しい業態を目指すとき、最大の敵は自分自身かもしれない。

































2005年10月14日金曜日

東京の繁華街に巨大なQRコードが出現

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東京・新宿駅前ビルの壁に巨大なQRコード(二次元コード)が登場した。正体はノースウエスト航空の屋外広告で、「トラベル川柳キャンペーン」への誘導のためのQRコードである。縦9.17メートル、横10.94メートルのクリエイティブは、「QRコードを主とした屋外媒体のキャンペーンとしては最大級の大きさ」(広告を扱ったマインドシェア・斎藤謙一シニアプランナー)で、通りがかる買い物客の目をひいていた。



ノースウエスト航空は、QRコードが目立つユニークなクリエイティブに関して「QRコードは消費者に認知してもらう一つの広告手段。遊び感覚であるが、先進的なイメージを強める効果がある」(三好敏文コンシューマー・マーケティング部長)と自信を持っている。今回のキャンペーンは、海外旅行をテーマにした絵文字入りの川柳を投稿してもらい、最優秀作品を選出する。ターゲットは携帯電話をアクティブに活用する絵文字好きの若年層。キャンペーンは10月3日から始まっており、途中経過について、「反応はもちろん若い人中心だが、テクノロジー好きのビジネスマンからも反応があり、より広い層からのレスポンスが得られている」(三好部長)と上々の成果を挙げているようだ。


テレビ広告と検索連動型広告を組み合わせるクロスメディア展開が活発になり、QRコードやURLを掲載する出版広告も増えている。こうした動きの背景には広告主が自社サイトへの誘導数を重視し、広告という投資に対するリターン(見返り)を求める傾向が強まっていることがある。巨大QRコードの出現により、屋外広告も携帯電話サイトへの誘導が可能になり、今まで広告効果測定が困難だったマス広告がリターンという「結果」を厳しく問われる場面がますます増えそうだ。


同様の屋外広告は東京・銀座にも展開。新宿南口フラッグスビル(写真)は10月23日、銀座山野楽器ビルは10月28日まで掲載している。


2005年10月12日水曜日

PCと携帯電話のシームレスが課題 楽天・ドコモ提携

Mikitaninakamura_1 楽天とNTTドコモは11日、インターネットのオークション(競売)事業で提携し、12月に両社が出資する新会社を設立すると発表した。楽天の三木谷浩史社長=写真左=は記者会見で「両社のノウハウを使い、携帯電話からもパソコンからもオークションをシームレス(つなぎ目なし)に楽しめるようにする」と述べた。競売事業はパソコンのサイトではヤフーが優位にあるため、今後拡大する携帯電話のサイト向け事業ではNTTドコモと組み、ヤフーに対抗する狙いだ。



新会社「楽天オークション」は楽天の競売事業を手掛けるトレーディング事業本部などを分割して設立する。設立当初は楽天の100%子会社だが、12月16日にNTTドコモが第三者割当増資に応じ、株式の40%を握る。資本金は16億5000万円になる予定。楽天はNTTドコモからの出資を得て、携帯電話向け競売のためのシステム増強を予定している。楽天オークションの携帯電話向けサイトは今後、NTTドコモ以外のユーザーも利用できるようにする。



パソコン向けサイトを運営するネット企業にとって、より多くのユーザーを獲得できる可能性がある携帯電話向けサイトでのサービス展開は事業拡大のための課題になる。総務省の「通信利用動向調査」によると、ネットユーザーの大多数はパソコンとモバイルの併用派で、その数は4300万人近くになっている。ネットの事業がパソコンから携帯電話に広がるのに伴い、パソコンで囲い込んだ顧客に対しては携帯電話でのサービスもパソコンとの区別なしに提供しながら、新規の顧客獲得を競い合う展開が続きそうだ。




2005年10月8日土曜日

ライブドア、コダックとの提携に意欲



ライブドアの照井知基上級副社長は7日、千葉市内で開催とされている情報技術機器の国際見本市「CEATEC JAPAN2005」で講演し、11月に開始する予定の無線LAN(構内情報通信網)事業に関連して米イーストマン・コダックとの提携に意欲を示した。コダックが米国などで発売している無線LANに接続できるデジタルカメラとライブドアがネットで提供しているブログ(日記風の簡易サイト)を連携させたサービスなどを検討している。







照井副社長は「コダック側とは提携を前提に交渉している」と強調。具体的な提携内容については「ブログや写真のオンラインストレージなどを一緒にやっていく。ライブドアのIDをデバイスに組み込んで簡単に写真をアップロードできるようにする研究を進めている」と述べた。ライブドアの無線LANサービスは月額525円の予定だが、ライブドアが提供するブログなどのサービスは無線LANを使っても無料。旅行先での風景写真や偶然遭遇した事故現場の写真などをコダックのカメラで撮影して、ブログに投稿するなどの用途を開拓する。


11月に開始する「ライブドアワイヤレス」はノート型パソコンのユーザーが東京の山手線エリア内の外出先でインターネットを利用することを想定しているが、将来はデジタルカメラのほか、携帯情報端末(PDA)や携帯型音楽プレーヤー、ゲーム機などもネットに接続して、ユーザーが高速通信を利用すると見ている


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