2005年7月30日土曜日

地デジのIP配信は「全国で」――情報通信審議会

singikai インターネットプロトコル(IP)技術を使った地上デジタル放送のテレビ番組配信が具体化に向けて動き出した。情報通信審議会(総務相の諮問機関)が29日の総会=写真=でネット技術を使った「IPマルチキャスト」と呼ばれる方式による番組の再送信を2006年に始めるとの方針を盛り込んだ答申をまとめた。日本民間放送連盟はIP技術による再送信について「難視聴世帯向けの補完」という位置づけに限定するように主張しているが、答申は「IPインフラ活用の可能性を全国に開いてこそ、投資効果が高まり条件不利地域におけるインフラ整備も加速される」との見方を明記した。









情報通信審議会の答申は06年にSD(標準)放送の番組配信を開始し、08年にはHD(高品位)放送を全国で始めることを提案。これと並行して07年に衛星による番組の再送信も始める目標を掲げている。総務省はテレビ放送がアナログからデジタルへの全面移行する11年7月24日を「Xデー」と名付け、新聞広告などを通じた告知活動を強化している。ただ、移行期間が6年間に限定されているため、同審議会はIP技術を使った光ファイバー網による伝送、衛星による再送信など「あらゆる手段を検討することが必要」(臨時委員の村井純・慶応義塾大教授)と強調している。





IPマルチキャストは著作権法上の「有線放送」なのか「自動公衆送信」なのか不明確な部分もある。答申は著作権法上の取り扱いについて政府が早急に検討することを求めた。技術面では、IP技術はケーブルや衛星などの伝送媒体でも活用可能だと指摘。「衛星やケーブルなど他のメディアとの技術の共用化の可能性を検討する場を設置し、06年中をメドに結論を得る」としている。










2005年7月27日水曜日

企業ブログ、顧客とつながる「共同体」を形成(上)

ブログ(日記風の簡易型ホームページ)がコミュニケーションを変える。情報を共有するコミュニティー(共同体)を容易に形成できるブログの普及により、企業と顧客、顧客と顧客のコミュニケーションが活性化。企業はインターネットに顧客中心の共同体を形成し、その一員として顧客と向き合うコミュニケーションの形態を模索する。マスメディアもマスに対する一方的だったコミュニケーションのあり方を根本的に問い直す局面を迎えた。









P5220640 「家計簿も日記もつけていない私がブログは2カ月続いています」。東京都練馬区でフラワーアレンジメントのアトリエを運営する関口千恵子さんは5月に三越が日本橋本店(東京・中央)で開いた「写真倶楽部」のオフ会=写真=に参加し、こう胸を張った。写真倶楽部とは、写真家のシヲバラタク氏が三越のブログサイト「三越コミュニティサロン」に執筆するブログを核としたネットのコミュニティーだ。





ネットのコミュニティー参加者が実際に会うオフ会の会場は本店7階の「コミュニティサロン」。この日は写真愛好家の女性ら50人以上が参加し、シヲバラ氏を囲んでワインパーティーを楽しんだ。参加者は関口さんのようにブログを読むだけでなく、三越のブログサイトにコラム風の文章を執筆する人も少なくない。





三越コミュニティサロンは百貨店業界としては初のブログサイトだ。ブログ活用の責任者であるネットワーク企画部の金沢春康ゼネラルマネジャーは「モノが売れないと嘆くばかりではなく、顧客が商品を欲しくなるオケージョン(機会)を作り、結果としてモノが売れるというサイクルを確立したかった」と説明する。ブログを導入して顧客中心のネットワークを形成し、リアル店舗の「コミュニティサロン」も使いながら共同体を運営することで顧客を囲い込む戦略だ。





ただ、業界初の試みは社内では風当たりが強かった。「店舗面積当たりの販売効率を高めることを重視してきた社風のなかで、直接、利益を生まないコミュニティサロンを新館の中に確保するのは苦労した」と日本橋本店の上野仁e―ビジネス推進室長は打ち明ける。昨秋の新館開業は三越が呉服商から百貨店に転換して百周年の記念事業だったが、三越全体としては2005年2月期の営業利益は7%減の152億円にとどまり、新館効果は限定的だった。国内の販売不振に加え、従業員の早期退職に伴う損失なども計上したため、連結最終損益は40億円の赤字だった。





従業員千人の早期退職、横浜店や大阪店などの閉鎖といった厳しいリストラを続ける中で、三越はブログを使った顧客との対話という小さな改革を進める。オフ会に参加した関口さんは「ブランド品は専門ショップで買うことが多かったが、今は三越の店頭を見てから、商品を選ぶようになった」と話す。三越のブログに「食コラム」を執筆する料理研究家のいとうゆきさんも「ブログのオフ会で集まるメンバーとの旅行を考えているが、そのときは三越トラベルセンターを使う」とエールを送る。





三越はこれまでも前払い方式で買い物券などを受け取れる会員組織「三越友の会」を運営するなど顧客の囲い込みには手を打ってきたが、特典目当ての会員を増やすだけではコミュニティーは形成できなかった。コミュニケーションが自然に沸き起こる共同体を育みながら、顧客による「応援団」を増殖させる作戦が実を結ぶのか、老舗百貨店の挑戦は続く。





新聞業界で初めて本格的にブログを自社のニュースサイトに導入したのは神奈川新聞社だった。新聞記事をネットで紹介する新聞社の典型的なニュースサイト「神奈川新聞ウェブ」に見切りをつけ、2月にブログを採用したコミュニティーサイト「カナロコ」を立ち上げた。現在、会員数は4千人。横浜ベイスターズを応援するブログ「ベイスターズフィーバー」を中心にファンのコミュニティーの形成が進んでいるという。





サイトの全面更新から2カ月後の4月には、神奈川新聞社の記者が取材したニュースについても、閲覧者がコメントを書き込める機能、ブログ間で相互リンクを簡単に張れるトラックバック機能というブログ本来の仕組みを導入した。地域のごみ問題、神奈川県のゲーム規制問題など編集部で選んだ記事に関しては閲覧者同士が意見を交換できる仕組みを整えた。「カナロコ」の責任者である松澤雄一デジタルメディア局長は整理部長などを歴任し、新聞編集の経験が長いが、ブログの導入を機に発想を転換し「古いジャーナリズムは捨てよう。高みから読者に教えてあげましょうという姿勢はやめよう」という意識で「カナロコ」を運営していると強調する。





ニュースの重要性は「カナロコ」編集部側が判断せず、コメントやトラックバックなどを通じて読者にそれを問いかけるという発想だ。ただ、神奈川新聞社は「カナロコ」から把握できる読者のニュースへの関心度などの情報を新聞の紙面に反映させる体制にはなっていない。読者にこびる紙面づくりはしないという考え方もあるのだろう。新聞社の電子メディア事業としては、広告収入を増やせるのか、課金制を導入できるのかといった判断が定まっておらず、明確な収益モデルが確立できていないといった課題も残っている。





新聞社が提供するニュースを話の種にコミュニケーションする共同体は新聞社にとって財産となり得る。ニュースというコンテンツ(情報の内容)が売り物である以上、その共同体は「ロイヤルカスタマー」の集合場所になるからだ。「ネットは新聞を殺すのか」などの著者で、ブログ記者でもある時事通信社の湯川鶴章編集委員は「仮に神奈川新聞社への誹謗(ひぼう)中傷がコミュニティーサイトに書き込まれても、ブログで勝ち取ったファンが反論して守ってくれるだろう。大手の新聞社では真似できない試みではないか」と指摘する。





顧客と向き合う百貨店、読者と向き合う新聞社――。古い歴史を持つこの両業種は実は同じ問題に直面しており、その中で三越と神奈川新聞社がブログを活用してコミュニティーを形成させる戦略に打って出たと言える。モノは街に溢れかえり、日本橋の三越に来店しなくとも、消費者は欲しい商品は買える。情報やニュースもネットに溢れかえっており、読者は特定の新聞社のサイトでニュースを閲覧する特別な動機を持たない。こうした現状に対して解決の糸口を見出そうとする試みが、ブログによる共同体を基盤にしたコミュニケーションだった。













































「グーグルゾン物語」を読み解く(4)

「JRの脱線は知人が携帯電話に送ってきた写真で知った」――。日経メディアラボは大ニュースの発生がどんな手段で伝わるのかを探るため、兵庫県尼崎市での脱線事故を例にインターネット調査(6月に実施)で情報収集の方法を約千人に聞いてみた。テレビ、新聞、ネットを組み合わせて事故の情報を入手する人が最も多かったが、携帯電話で第一報を知ったという人も少なくなかった。カメラ付き携帯電話の普及に伴い、知人から受信した写真がニュースの第一報だったという人が今後も増える可能性は高い。「グーグルゾン」を読み解く最終回は市民がニュースを発信する時代を検証する。









wifiPod 「EPIC2014」の続編には、米アップルコンピュータの携帯音楽再生機「iPod(アイポッド)」が進化した機種として、無線LAN(構内情報通信網)機能とカメラを搭載した「ワイファイ・ポッド」=写真=が登場する。ネットを使った簡易型ラジオ放送「ポッドキャスティング」も進化して、映像を含んだコンテンツ(情報の内容)をワイファイ・ポッドで送受信するというコミュニケーションが流行するというのがグーグルゾンの物語だ。





映像ニュースの取材方法はフィルムで撮影する取材方法からビデオテープを使うENG(電子ニュース取材)、衛星を使いニュース素材を伝送するSNGへと進化してきた。カメラ付き携帯電話のブロードバンド(高速大容量)化が進めば、市民が発信する映像情報を集めて構成する「PNG(ポッド・ニュース・ギャザリング)」の時代が到来する日も近いだろう。ロンドンの同時テロ報道でも市民が携帯電話のカメラで撮影した事件現場の写真や映像は頻繁にニュースの素材として使われた。市民が撮影した映像を報道機関が積極的に活用する現象を「ポケットジャーナリズム」と呼ぶ人もいるようだ。PNGの「P」はポケットジャーナリズムの「P」と言えるかもしれない。





米クリントン政権で副大統領として「情報スーパーハイウエー構想」を提唱したことで知られるアル・ゴア氏はネット検索最大手の米グーグルと連携して、若者向けテレビチャンネル「カレント」の準備を進めている。視聴者が自作ビデオをカレントのサイトに投稿し、ネットによる人気投票でテレビ放映する作品を決めるという。





「ブログ(日記風の簡易型ホームページ)への書き込みに始まり、携帯型カメラでの画像撮影や映像リポート、そして綿密な調査報道にいたるまで、今や誰もが記事を寄稿するようになり、多くの人がそれで稼ぐこともできる。記事の人気に応じて、グーグルゾンの巨額の広告収入の一部を得るのだ」。こんなEPICの一節をゴア氏らが意識しているかどうかにかかわらず、EPICが語るメディアの近未来を連想させる話題は増えている。カレントは「ビデオブログの実験」とも言われており、視聴者という立場だった市民が映像を使って自ら情報発信する時代の本格的な到来を予感させる。





市民によるニュース発信をネットの世界で実践している例としては韓国のネット新聞「オーマイニュース」が有名だ。創刊は2000年2月。「市民参加型ジャーナリズム」を掲げて、5年以上の実績があり、記事を投稿する市民記者は3万6000人にのぼるという。記事の反響の大きさに応じて、読者から提供される原稿料がアップする仕組みを採用しており、広告料収入の一部を記事の人気の高さに応じて執筆者に配分するグーグルゾン方式に似ている。





オーマイニュースは2003年に黒字転換を果たした。メディア企業の経営者としても成功を収めつつある呉連鎬社長は6月の来日時には経済ニュースの強化に加え、携帯電話向けデジタルマルチメディア放送(DMB)へのニュース番組提供などにも意欲を見せ、市民参加型の手法を映像分野にも広げる考えを強調していた。オーマイニュースの成功例はメディア企業の多くが注目しており、ネットを活用した新しいビジネスモデルを模索する米国の新聞社などもオーマイニュースを積極的に研究している。





日本でもネットの世界に「オーマイニュース」モデルを導入しようとする動きは一時期、活発だった。ライブドアの堀江貴文社長も「オーマイニュースを参考にして、日本でも市民ジャーナリストとして市民一人一人が注目される記事を書けば、誰でも情報の一次的な出し手になれる」などと発言。「グーグルゾン」をも意識した発言と見られたが、その後、同社は無線LAN事業への参入も表明した。





市民記者によるニュース発信はライブドアのほか、ネット新聞「JANJAN」などが試みているものの、現段階では成功と呼べる事例がほとんどないのが実情だ。呉連鎬社長は著書「オーマイニュースの挑戦」のなかで、日本の現状を「(市民が記事を投稿できる)インターネット広場を開いても若者の参加が低調」と分析している。





オーマイニュースの売り物は政治ニュース。これが韓国の既存メディアや政界に不信感を募らせていた若者に受け入れられた。一般に日本では若者は政治への関心が低く、むしろ生活や地域に密着した話題のほうが、市民の情報発信になじみやすいようだ。日本の新聞社でブログを初めて本格導入した神奈川新聞は「県知事の発言についてのニュースよりも生活に密着したゴミ問題、鉄道の話題などに(読者からの)コメントが寄せられる」(松澤雄一デジタルメディア局長)と市民からの反応について分析している。





「ジャーナリズム」と大上段に構えるよりも、生活密着型の情報を交換するコミュニティーを形成する手法の方が、呉連鎬社長が「インターネット広場」と表現する言論空間を日本のネット社会に根付かせやすいのかもしれない。神奈川新聞の松澤局長はブログサイト「カナロコ」で情報を発信する市民について「(サイトに情報を寄せてくれる)『ホロホロさん』が市民記者という意識はない。『市民』として情報を発信している」と説明している。





ただ、ゲーム規制問題をめぐって神奈川県知事のブログにコメントやトラックバックが殺到したように、今後も「サラリーマン増税」問題など生活に密着した話題を中心に市民の発言が誘発される事例は日本でも増えると見られる。ブログやポッドキャスティングの仕組みを活用した市民による情報発信が一般的になれば、既存メディアの記者と市民がニュースや評論の発信者として共存する時代も訪れるだろう。





米国では記者の取材源秘匿をめぐる問題が注目されている。取材源を明かさなかったニューヨーク・タイムズ紙の記者が収監されてしまったため、記者に「取材源の秘匿」を理由に裁判で証言拒否できる特権を認める連邦法をつくる必要があるとの議論が活発になっている。しかし「市民記者」が台頭するなかで、プロの記者だけに特権を付与することは困難だとの見方もある。メディア部門を持つテロ組織を取り締まれなくなるという懸念もあるという。





日本でも証言拒絶罪で朝日新聞社の記者が起訴された事件が過去にあり、米国と同様の問題は今後も起こりうる。そもそも記者とは特権を持つ存在ではなく、「市民の代表」という存在のはずだが、既存メディアの記者と市民記者が共存する時代は両者の境目をどこに設けるのかという問題を突きつける。グーグルゾン物語が問いかけているメディアをめぐる社会的な課題は多い。





















































2005年7月25日月曜日

「グーグルゾン物語」を読み解く(3)

「グーグルゾン」は莫大な広告収入を想定している。おそらく、広告モデルは現在の検索連動型広告を中心としたものになるだろう。同広告は、安い広告費で
ユーザーをウェブサイトへ誘引でき、広告主の裾野を広げた。検索と連動する広告はユーザーの嗜好と合致し、効果が高いと言われている。コンテンツをパーソ
ナライズするので、検索連動型広告をそのまま利用できそうだ。米国の調査会社eMarketerは同広告が04年度のオンライン広告全体の42%、総額39億ドル(約4000億円)に達したとしている。



また、「グーグルゾン」のリーチが広がり、広
告主がマスメディアとして認め、マス広告の市場を獲得することも考えられる。米国では、検索連動型広告が成長し続けているが、ブランド効果を期待したオン
ライン上でのディスプレイ広告(バナー広告など)も成長している。サイトに誘導する検索連動型に加え、ブランド価値を高めるディスプレイ広告と両方のタイ
プの広告が「グーグルゾン」の収益源となる。


しかし、日本でもこうなるのだろうか。米国と同じようには進まない可能性もある。日本はテレビを最も見ている国で、Eurodata TV Worldwideによると、1
人あたり1日平均5時間。2位の米国より約30分長い。テレビ広告の効果が依然高いとされており、当面は安泰との見方もある。ただ、ハードディスクレコー
ダーの普及で、テレビ広告の効果が薄れることを懸念している広告会社は、「テレビ広告プラス検索連動型広告」の組み合わせという新しい形態を提案し始め
た。


この手法は15秒のテレビCMで表現しきれな
いことをウェブサイトに誘引して補完する考え方で、テレビCMで強調したキーワードを検索連動型広告で買っておくことにより、確実にユーザーをウェブサイ
トに誘引する。視聴率以外の指標がなかったテレビ広告に、「広告主のサイトへの誘引数」という新しい目安が生まれた。


結果も一部出ている例として、三井不動産の高
層マンション「芝浦アイランド」のキャンペーンは、「芝浦」「芝浦の島」「芝浦アイランド」などのキーワードを購入した。テレビCMの放映直後に検索エン
ジンからの誘導によるウェブサイトのアクセスが増加したというデータも取れているようだ。最新の事例では、NECの携帯電話FOMA N901iS「Nを追え」キャンペーンで、「Nを追え」、「N」と「追え」のANDなどがキーワードになっており、これからもテレビCMには検索連動型広告を組み合わせることが増えていくだろう。


それでは「グーグルゾン」のパーソナライズドメディアに検索連動型広告以外の可能性はあるのか。日本のオンライン広告の現状と広告会社、広告主(宣伝部)の意見から、可能性を探ってみた。


オンライン広告はバナー広告から始まり、オプ
トインメール、検索連動型、コンテンツ連動型、行動履歴参照型といろいろな形態があり、技術の進歩および効果を最大にしようとする努力から常に進歩してい
る。また、ディスプレイ広告では動画を表示するなど、クリエイティブに力が入れられるようになった。


売り方では、ターゲットしたユーザー向けの
ターゲティング広告が注目され、米国ではある程度定着した。検索連動型も広く解釈すれば、ターゲティング広告と成果報酬型の組み合わせで、パーソナライズ
ドメディア向けの広告は、ターゲティング広告の進化系の可能性が高い。ただし、単価を高く設定するターゲティング広告は、ほとんど日本で普及せず、仮に
パーソナライズドメディアが普及しても、広告がパーソナライズドとなるかは微妙なところだ。


また、広告会社、広告主ともパーソナライズド
広告を否定しなかったが、課題が多く、主流にはならないと見ている。もし、パーソナライズドの効率化により、企業の広告費を削減できるとしても、業界全体
で「ターゲット層により深く」を主体とする考え方が浸透しなければ、一社だけスタイルを変えるのは難しいとしている。


パーソナライズド広告で想定される課題は①キャンペーンのターゲットを明確にするのが困難②複数のクリエイティブが必要となり、作業は煩雑に、コストも増大③広告効果の測定が困難――など。


①キャンペーンのターゲットを明確にするのが
困難:広告キャンペーンはある程度ターゲットを絞っているが、必ずしも広告主が想定したターゲットは実際の購入層と一致するとは限らない。もし、パーソナ
ライズド広告で想定したターゲット層のみに露出すると、「想定外のユーザー」を落とし、実際の購入層へのキャンペーン到達ができなくなってしまう。


②複数のクリエイティブが必要となり、作業は
煩雑に、コストも増大:同じ商品でもターゲットが異なれば、伝えるメッセージも変わる。もし、広告をパーソナライズドとするのであれば、メッセージもパー
ソナライズする必要がある。クリエイティブを複数用意することになり、作業は煩雑になり、制作コストも大きくなる。


③広告効果の測定が困難:複数のクリエイティブを使い、それに対応したターゲット層に広告を露出することにより、変数の要素が増え、広告効果の測定が困難になる。


パーソナライズド広告は宣伝部のブランド広告
予算より事業部管轄の販促費、ダイレクトレスポンス(DR)の大枠に入れた方がわかりやすい。DRの中にDM(ダイレクトメール)、Eメール広告などが含
まれ、現在全体の3~5割がネット広告になっている。注目すべきは、デルのようにDR目的のキャンペーンをマス広告で試している広告主が出てきている点だ
ろう。ネットでも同じキャンペーンを展開し、効果のある媒体を評価しているようだ。


DRは完全に効率重視なので、パーソナライズド広告で効果があれば、企業の予算枠を確保できそうだ。ただし、パーソナライズド広告はコスト、手間などの課題があり、すぐに実験というわけにはいかない可能性がある。


ネット広告代理店のアウンコンサルティング
��東京・千代田)の調査によると、2004年の検索連動型広告の市場規模は前年の3.3倍の350億円。今後も順調に成長していくと予測している。「グー
グルゾン」時代の広告モデルは、現時点で検索連動型中心と予測するのが無難だろう。
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2005年7月15日金曜日

韓国・携帯電話TV、普及のカギはサイマル放送

kim2 韓国最大手の携帯電話会社であるSKテレコム傘下のテレビ放送会社、TUメディアの金栄培(キム・ヨンベ)常務=写真=は14日、東京都内で開催された「ワイヤレスコンファレンス2005」で講演し、5月に開始した携帯電話向け衛星放送の加入者が初年度の目標としていた60万人を大幅に割り込むとの見通しを示した。加入者を増やすために番組を拡充すると強調。既存の地上波放送を携帯電話で視聴できるようにする必要があるとの認識を示した。









TUメディアの有料サービス加入者は現在、約9万人。金常務は「目標達成は今の流れでは厳しい。残り5カ月あるが初年度は15万人くらいだろう」と述べた。ただ、同社は07年に加入者を270万人にする当初の計画は変更せず、08年には黒字化できるとしている。金常務は視聴者の要望として「地上波の番組を携帯電話で見たいという反応が多い」と指摘。「既存の地上波と同じ番組を放映するサイマル放送を充実させる戦略が必要」との考えを示した。





サイマル放送は「年内には実現させたい」としているが、番組を調達できるメドは立っていない。金常務は「テレビ局側の労使関係などがあり、難しい。ビジネスというよりは政治の問題だ」と説明した。TUメディアは現在、独自に企画する「チャンネルブルー」の番組制作も手掛け、全体ではテレビが8チャンネル、音声のみの放送は5チャンネルをそろえている。音声の放送は1日平均47分間の接触時間を獲得しており、既存のラジオ放送並みになっているという。





TUメディアが手掛ける移動体向け放送はDMB(デジタルマルチメディア放送)と呼ばれ、日本ではモバイル放送(東京・中央)が韓国に先駆けてサービスを開始している。同社はTUメディアにも資本参加している。出資比率は9.5%で、TUメディア側は同社を国際戦略のパートナー企業と位置づけている。













2005年7月14日木曜日

「グーグルゾン物語」を読み解く(2)

temp1 グーグルゾン誕生のストーリーは緻密な分析によるものなのか、それとも荒唐無稽な空想なのか。メディアの未来を描いた「EPIC2014」という約8分間の映像作品は米フロリダ州にあるジャーナリスト向けの非営利教育機関、ポインター研究所出身のロビン・スローン氏とマット・トンプソン氏が製作した。









ポインター研究所の情報サイトなどによると、スローン氏は2002年にミシガン州立大学を卒業し、同年6月から翌年6月まで同研究所に在籍。04年11月からサンフランシスコの独立系ケーブルテレビ局「INdTV」でプロデューサーを務める。スローン氏は現在、アル・ゴア前米副大統領らが準備している視聴者参加型の若者向けテレビチャンネル「カレント」の立ち上げメンバーの一人に名を連ねている。





トンプソン氏も02年にハーバード大学卒業後、ポインターに在籍した。04年から「Fresno Bee」という新聞社でオンラインコンテンツ(情報の内容)を担当するプロデューサーに就いている。両氏の経歴や「ニューヨークタイムズはエリートと高齢者向けのニュースレターになった」とする作品の結末から考えると、作品は既存のジャーナリズムに対する警鐘を意図して製作されたようだ。





昨秋の作品発表後、両氏は多くのジャーナリストから「こんなものを人々は欲しない」との批判を浴びた。既存のメディア側はEPICの発想を認めようとせず、報道機関のブランド力や信頼性を盾に反論した。トンプソン氏は既存メディアの反発について「今まで競合相手とは考えられなかったネット企業が同じビジネスの土俵に現れることを既存メディア側は信じたくないのではないか」と見ている。このほどEPICは2014年以降の続編も登場した。既存メディアからの反発に懲りることなく、メディアの未来を模索する姿勢は変わらないようだ。





グーグルとアマゾンが合併するかどうかは別として、少なくとも電子媒体の世界ではパーソナライズドメディアが主流になるという予測は十分に現実味がある。例えば、キーワードによる検索で電子番組表から好みのテレビ番組を抽出して自動的に録画するHDD(ハードディスク駆動装置)内蔵レコーダーは着実に家庭に浸透している。「自分好み」をかなえてくれるデジタル技術の進化はパーソナライズド・ニュース・メディアの登場を予感させる。





日経メディアラボは6月、独自にパーソナライズ ドメディアへの関心を探るアンケートを実施した。過去に閲覧したニュースの内容に応じて、読者の関心があると思われるニュースを自動的に選択し、ユーザーごとに見出しなどを表示するサービスについて、インターネット調査で全国千人に聞いたところ、「とても興味がある」との回答は9.6%だった。「やや興味がある」(39.2%)との回答を加えると、48%が関心を示すという結果だった。年齢別に見ると、関心を抱く層は20代が69%、30代は61%と特に若い世代に多かった。





金融情報会社のQUICKはパーソナライズドメディアを意識した新サービス「アラートメール」を準備中だ。ユーザーが必要な銘柄を登録しておけば、上場企業が東京証券取引所経由で発信する適時開示情報を即時に携帯電話のメールで受信できる。情報の取りこぼしを防ぐためにパーソナライズしたニュース速報が必要という声は証券マンなどに多く、プロ向けのサービスとして需要を開拓する。





楽天証券はこのほど携帯電話に市況やチャート情報を短時間で更新して提供する個人投資家向けサービスを始めた。チャートは5分足、日足、週足、月足をそれぞれ80本表示可能。楽天証券に口座を持っている顧客は携帯電話のパケット通信代を負担するだけで、サービス自体は無料で利用できる。同社の三木谷浩史会長(楽天社長)は「月間の使用料が15万円もするような情報端末を使いながらディーリングルームでやっていた取引が、携帯電話でどこでもできる」と強調する。





パーソナライズした情報を提供するサービスは金融分野だけでなく、グーグルやNTTレゾナント(東京・千代田)の「goo」などが一般向けにも始めている。「goo」はNTTサイバーソリューション研究所が開発した「高効率類似文書検索エンジン」を採用。過去に閲覧した記事20件のデータと各記事から自動的に抽出したキーワードを比較し、指定したキーワードをより多く含む類似記事4本と写真記事1本を選び出す。





NTTレゾナントは昨年のアテネオリンピック特集面での実験結果が良かったため、正式な採用に踏み切った。実験では「おすすめ」ニュースを示した場合、通常のニュースよりも閲読率が8-10倍に高まったとしている。ユーザーの認識は「クッキー」と呼ばれる閲覧履歴の情報を利用し、クッキー内に20記事分のデータを保持する。興味がない記事をユーザーが見た場合は、自ら閲覧履歴から削除する機能を付け、パーソナライズドニュースの精度を上げることもできる。





新聞社がパーソナライズドメディアを手掛ける場合、既存の紙媒体との相乗効果を期待できる。新聞の購読を中止する人の理由の多くは「読む時間がない」だが、必要な情報を効率的に短時間で入手できるパーソナライズドメディアは紙媒体の販促ツールになる可能性がある。「あなたが関心を抱いているこの記事の背景記事は朝刊のこの面に掲載しています」などと告知して紙面に誘導することも考えられる。





ただ、パーソナライズドメディアが実用レベルに達するためには課題も少なくない。「おすすめ」機能の精度を高めないと、単におせっかいなサービスになってしまう。新聞の一覧性を評価する意見も多く、メディア研究者の中には「パーソナライズドメディアは各個人に対して情報の孤立化を生む恐れがある。結局、ゆり戻しが起きてニュースを一覧できるメディアを見直すことになる」との見方も根強い。


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2005年7月9日土曜日

日本の家庭は5件に2件がブロードバンド

bb2 日本の家庭の5件に2件はブロードバンド(高速大容量)通信を導入--。総務省が8日発表した2005年3月末のブロードバンド契約数は1951万件で、世帯数から見た普及率は39.1%に達した。1年前の2003年度末時点と比べ、契約数は3割増加した。3カ月ごとの集計としては、1-3月期に初めて光ファイバーによる高速接続(FTTH)契約の増加数がADSL(非対称デジタル加入者線)を上回った。




ブロードバンド通信は急速な料金低下に伴い、普及が進んだ。一般家庭の世帯普及率が4割近くになり、日本は米国、中国に次ぐ規模のブロードバンド通信市場を形成している。FTTHの本格普及が始まり、各家庭から豊富な情報を受発信できる環境が整うことで、今後は映像コンテンツ(情報の内容)を使ったコミュニケーションも活発になるだろう。ブロードバンドを前提とした多様な新ビジネスが登場しそうだ。





総務省が6月にまとめた2005年「情報通信に関する現状報告(情報通信白書)」はブロードバンド契約数を国際比較し、日本は03年時点でトップの米国に次いで2位になっていると指摘している。米国の調査会社、eマーケッターによると、04年時点では中国が日本を抜き去り、日本は3位に後退している。世帯普及率を見ると日本は韓国には遠く及ばないものの、米国や中国、フランスなどよりは高い水準になっている。





今後のブロードバンド普及については複数の調査会社による予測がある。野村総合研究所は2009年度末に約2900万件に達すると見ている。富士キメラ総研(東京・中央)は10年末の累計契約数が4220万件になると予測する。矢野経済研究所はやや堅めに10年度末に約3825万件という予測値を挙げている。いずれにしても4-5年後にはブロードバンドは各家庭で当たり前のように利用されるという状況になるようだ。





矢野経済研究所が4月にまとめた「2005年度版ブロードバンド回線市場の動向調査」は「今後利用したいサービス」をネット調査で約1000人に聞いている。インターネット放送や動画配信サービスといった映像系サービスを挙げる回答(複数回答)が40.2%にのぼり、ブロードバンドを導入して家庭で映像コンテンツを楽しみたいとの利用者の意向が強まっていることが分かった。





インプレスの「インターネット白書2005」によると、映像配信サービスの契約をしているブロードバンド利用者はまだ少なく、光ファイバー利用者の中の2.6%に過ぎない。ただ、パソコンにブロードバンドを使って映像コンテンツを「放送」するUSENの「GyaO(ギャオ)」は4月のサービス開始から2カ月余りで100万人の会員を集めたという。視聴は無料とし、CMを収入源する同社の新事業はCS放送の映像を利用しながらプロ野球の試合を生中継するなどテレビに近い業態になっている。



「これからはアップロード(送信)も重要という時代に入る」。東日本電信電話の高島元副社長は6月9日、千葉市内で開催された展示会「インターロップTOKYO2005」で講演し、今後のネット環境の変化についてこう指摘した。FTTH中心のブロードバンド化が本格的に進むことを強調したものだ。ADSLはコンテンツをダウンロード(受信)する用途を中心に想定したサービスだったがが、FTTHが普及することで、通信の「上り」も「下り」も高速大容量化する環境が整う。




通信の専門家からは高速大容量の情報発信が可能になるのに伴い「個人ユーザーが動画コンテンツを送信する『誰でも放送局』が実現する」(情報通信研究機構の寺崎明理事)、「テキストの分野で起きたブログ(日記風の簡易型ホームページ)の普及が動画の分野でも起こりうる」(KDDI研究所の浅見徹所長)との見方が出ている。「音声版ブログ」ともいわれるネットの簡易型ラジオ放送「ポッドキャスティング」を楽しむ人が日本でも登場しており、この流れでブームが続けば「ビデオブログ」が普及する可能性も小さくはない。




























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