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2010年3月5日金曜日

地域ニュースは競争力の源泉・北日本新聞、ウェブ新聞「webun」創刊 

Webun0303   北日本新聞社(富山市、河合隆社長)は1月1日、会員登録制のウェブ新聞「webun(ウェブン)」を創刊した。会員になると朝刊の記事に加え、主要紙面のイメージや動画ニュースなどを閲覧できる。必要な記事を保存しておける「マイスクラップ」などの機能もある。北日本新聞(月額2987円)の購読者は無料で登録可能だが、配達区域外に居住している場合はwebun単体を月額2100円で利用できる。



 北日本新聞社は2009年12月末に夕刊を廃止しており、朝刊+ネットという体制への完全移行を果たしたことになる。その戦略と今後の展望について、同社メディア情報局長の棚田淳一氏(=写真下)に話を聞いた。


――webunはどういう意図で企画されたのか


ひとことで言えば、紙の新聞を維持する、ということだ。新聞購読者にインセンティブとして提供し、できればもう一歩踏み込んで、読者を増やすきっかけにもしたい。


昨年末に夕刊を廃止したが、webunでは最新ニュースをウェブファーストで伝える。朝刊とwebunを通じて新聞社の使命を果たしていきたい。


――全国・海外のニュースは登録せずに読めるようにした


通信社から配信される記事をクローズドにする理由はない。それらは他のウェブサイトでも読めるもので、差別化にはつながらないからだ。


しかし自分たちで取材した富山県内のニュースは他で読むことができない。ニッチなコンテンツ、という見方もできるが、それは競争力の源泉になる。だから会員登録して初めて読める仕組みにした。以前のウェブサイトでは自社で取材した記事も無料で公開していたが、そこに抵抗感があったのも事実だ。


――ウェブサイトを会員制にすると広告収入に影響が出るのでは


ネットの広告収入は、事業規模としては決して大きなものではなかった。その収入を守るために、多大な労力をかけて生み出した記事を無料で掲載する、というのは生産的とは言えない。むしろ、そうした記事の価値がストレートに収入につながるようなモデルを考えたかった。


そういう意味では、今回の試みはウェブサイトの「広告モデルから購読モデルへ」のシフトだ。ページのデザインも、ニュースの読みやすさを最優先している。


――県外読者の2100円という価格設定はどう決まったのか


細かい議論や検証も行ったが、大筋としては新聞購読費が約3000円なので、そこから印刷・配送コストを引いた価格、という考え方だ。


ただ、これで県外から大きな収入を得られるようになるとは期待していない。あくまで県内の読者に着実にニュースを伝えるのが第一だ。


――開発期間と体制は


2010030402 2年ほど前から社内でプロトタイプをいくつか作っていたが、2009年3月から具体的にプロジェクトが動き出した。本格的な開発が始まったのは7月。9月にはメディア情報局内のウェブ担当者を増強した。営業局にはクロスメディア営業部が発足、販売局にもwebun創刊を見据えた販売事業部ができるなど、組織も整ってきた。1月1日の創刊時からは、編集局にウェブ出稿担当デスクも置いた。


開発の中心となったのは地場のITベンダーである日本オープンシステムズ。データベース関連の技術に強いことを評価し、この案件を依頼した。デザインに強い企業にも参加してもらい、ジョイントベンチャー方式で進めた。紙面イメージを確認できるビューワーソフトは以前から研究しており、当社で仕様で固めたうえで開発してもらった。


webun創刊から2カ月が経過した3月1日にはメディア情報局にあった担当部署を編集局に組み入れ、編集局デジタル編集本部を新設。新たな体制で運用している。


――今後の展望について


ソーシャルメディア的な展開も含め、やりたいこと、考えていることは数多い。しかし、最初から全てをリリースすることは不可能であり、まずは創刊する、という一点に絞って開発を進めてきた。オリジナルコンテンツや機能の強化、あるいはデータベースマーケティングのような新しいビジネスは、これから考えていきたい。


いずれにしても、わが社にとって重要なのは富山という地域の活性化にどう貢献できるか、ということ。その視点で事業を展開していく。


・北日本新聞社「webun」
http://webun.jp/


2009年6月1日月曜日

マスメディアとCGMの間に独自の世界構築・ニフティ「デイリーポータルZ」の動画コンテンツ

Dpz02  ニフティはこのほど、同社のポータルサイト「@nifty」の人気コンテンツ、「デイリーポータルZ」内の映像コーナー「プープーテレビ」をDVD化し、販売を開始した。このコーナーは1分ほどの映像を担当者が交代で制作し、毎日更新するもので、すでに1年以上継続している。DVDの売れ行きも好調で、担当者は予想以上の反響に驚いているという。ネットでの映像コンテンツの可能性、そしてデイリーポータルZの人気の秘密を探った。



             ◇     ◇


「これ、ひどかったですねえ」
「問題になったやつだね」
「何だよ、コレ」


 男性3人が、映像を見ながらのんびりとトークを繰り広げる。5月29日夜、東京・お台場でニフティが運営しているイベントスペース「東京カルチャーカルチャー」で行われた、プープーテレビのイベントの一こまだ。


 このコーナーでは月に1度、公開した映像をつなぎ合わせ、制作者による解説を副音声として収録し、総集編を配信している。その副音声収録をイベント化した。来場者は会社帰りの人たちがほとんどで、スーツ姿が目立った。これが第一回目の開催だが、今後は毎月開催する予定だという。


 公開収録後には、来場者も参加しプープーテレビに使う映像の撮影なども実施。夜の10時過ぎまで会場は熱気にあふれた。


             ◇     ◇


 「デイリーポータルZ」は2002年スタート。「糸電話で市外通話」「バナナで釘打って日曜大工」「東京で砂金を採る」など、意表を突いたアイデアを実践し、それを写真と文章でリポートしていくコーナーだ。現在、編集部員6人とライター25人が交替で記事を執筆し毎日更新している。月間ユニークユーザーはおよそ80万で、固定ファンも多い。


 編集部の中心的人物は、ニフティ・サービスビジネス事業本部の林雄司氏。個人サイト「webやぎの目」を1996年から運営し、そこから「死ぬかと思った」などヒット書籍も生みだしている、ネット界の有名人だ。ニフティ社員としてかかわっているデイリーポータルZでもその独特のユーモアセンスは如何なく発揮されているが、こちらは複数の執筆者がそれぞれに個性的な内容を展開している。それでいてどの記事もどことなく「デイリーポータルZらしさ」をかもし出しているのは、やはり林氏の影響力が大きい。ライターとして採用されるのは、投稿などでその手腕を評価された人たちだが、新たにメンバーとして加わって半年ほどは、林氏がじっくりと原稿をチェックし、丁寧にアドバイスを行うという。


 読者の中心は30代前半の男性と20代後半の女性。職場で読んでいる人も多いようで昼休みや夕方4時~5時ぐらいの時間帯は特にアクセスが伸びるという。林氏は「会社の昼休みに一人でお弁当を食べている人にも楽しんでもらえるようなサイトでありたい」と話す。


 このサイト単体で大きな広告収入などがあるわけではないが、ニフティとしては「ネットは楽しい」ことを感じてもらうためのサイト、と位置づけている。ファン層を広げていく起点としても重要だ。


              ◇     ◇


Dpz01_2   そうしたデイリーポータルZの中で、2008年の3月にスタートした動画コーナーが「プープーテレビ」である。天狗のお面をかぶった正義のヒーローの日常を描いたり、IT企業の社長インタビューと言いながらオフィスが海岸の岩場だったり、「これまでのあらすじ」をさんざん紹介しながら本編は2秒しかないテレビドラマだったり、と、珍妙だが笑いがこみ上げてくる1分ほどの映像が毎日掲載される。デイリーポータルZのスタッフのうち、10人が交代で制作している。


 林氏(写真右)と、ライターの一人で、プープーテレビのメーン担当者である大北栄人氏(写真左)に話を聞いた。


――なぜ動画コンテンツを導入したのか。


(林)
デイリーポータルZは基本的にノンフィクションの世界だ。自分でネタを考え、実際に行動し、その結果を記事にしている。にもかかわらず、大北君や後輩社員である石川大樹君は創作記事ばかり書いていた。ある日、2人で作った原稿に「田園調布に宝探しに行く」というのがあった。田園調布でたくさん宝を拾って喜んでいたら、実はきつねに化かされていた、というものだ。ひどいなあ、と思ったが、少し面白かった。すべてノンフィクション、という縛りをかけるのは見直してもいいのではないかと感じた。


だが一方で、これまで積み重ねてきた、デイリーポータルZのスタイルというか「形」はすでに出来上がっている。多くの読者もそれを期待しており、裏切ることはできないとも考えた。そこでフィクション全面解禁ではなく、ここに限ってはフィクションOK、ということで動画をレギュラー化することにした。


――動画に取り組んでみた感想は。


(林)
予想以上に面白かった。あっという間に徹夜してしまうほど。


(大北)
当初は映像制作の経験者が誰もいなかった。文章を書く、というのは誰もが経験していることだが、動画の撮影や編集はそうではない。最初は映像の文法が分からず、大いに戸惑った。


機器やソフトの操作も含めノウハウが全くなく、互いに教えあったりした。三脚を使わないと手ぶれがひどいこと、カメラ付属のマイクでは簡単に雑音を拾ってしまうことなど、初歩的な知識も実践しながら身につけていった。そうしていく中で、映像の文法、例えばこういうカメラの動きをすればこういう意味や雰囲気になる、ということも、少しずつ分かるようになった。


――どのように制作を進めているのか。


(大北)
まず2週に一度企画会議を開き、それぞれが「こういうものをやりたい」とアイデアを出す。たいがい「いいですねえ」で終わるのだが。


(林)
なるべく否定的なことは言わないで、広げるような感じで意見を出し合う。それからアイデアを出した本人がホームビデオで撮影を開始する。基本的に1人の作業だが、他のスタッフが出演するなど協力をすることもある。編集も動画編集ソフト「プレミア(アドビシステムズ)」などを使って1人で行う。音楽も入れているが、音源はフリーの音楽素材集だ。使ったことがない曲はもうないほど使い込んでいる。


――開始から1年が経過して、コンテンツの内容は変わってきたか。


(林)
だんだん、オチが複雑になってきている。例えば、何かの力でメガネが飛んでしまう、というだけで終わっていたものが、メガネがそのあとどうなるのか、というところまで描くようになった。


(大北)
昨年の終わりぐらいは、ひねりすぎてわけがわからなくなってしまったものも目立った。最近はややシンプルなオチに戻りつつあると思う。


分かったのは、やはり長いものはだめだ、ということだ。70秒を超えると長く感じる。


(林)
実は、最初はすべてテレビCMと同じ15秒に収めようと考えていた。しかしやってみたら無理だった。でも1分以内がいい。それ以上は集中力が続かないし、映像の下に時間ゲージが表示されたとき、2分以上あると自分で先に進めようとしてしまう。


(大北)
ネットによくあるものはやめよう、という雰囲気はできつつある。キャラクターのパロディーなど。また、何かをけなして笑わせようとはしない。けなすことは決して面白くないからだ。


(林)
どきつい表現も避けるようにしている。イベントでそういう表現が受けることはあっても、そのノリで動画にしてしまうと、あまり面白くない。イベントとメディアとでは、笑いの形が違うのだと思う。


(大北)
ただ、これをしてはいけない、というルールは、テキストの記事に比べると少ないかもしれない。「プープーテレビ」はあくまでフィクションが土台なので、自由度は高い。


――動画を導入したことで、デイリーポータルZ全体にとってどのような影響があったか。


(林)
デイリーポータルZではよくイベントを行い、読者の方々に参加していただいている。以前は、昔からの熱心なファンの方がほとんどだったが、動画が加わって以降「初めてイベントに来ました」という人が増えてきた。動画には、間口を広げるような効果があるのかもしれない。


それをうまく、読者参加型のコンテンツに結び付けられないかと考えている。デイリーポータルZでは読者投稿にも力を入れているが、投稿の数は伸びているものの、まだ大きな人気を集めるまでには至っていない。多くの人は参加したいという意識があっても、表現をしている時間がないからかもしれない。


Dpz04 ――DVD化を考えたのはなぜか。


(大北)
せっかく素材があるのだから、やってみようということになった。


(林)
DVDをプレスする費用はさほど高くないと聞いて、決断した。メニュー画面を作るなど、新たな作業が必要だったが、それも大北君がやってくれた。


(大北)
メニュー画面づくりは初めてだったが、手探りでなんとかできた。本当はコピー防止機能も入れなくてはいけないと思ったが、そこまでは技術的に無理だった。


――反響は。


(林)
当初予定の200セットが完売し、100セットずつ2回追加製作して、すでに400セットが売れた。


(大北)
実際にDVDにしてテレビで見ると、同じ映像なのにネットで見るのとは印象が異なることが分かった。ネットで見るよりも面白く感じた作品もある。


――1パッケージに、同じDVDが2枚入っている。


(林)
価格は1700円にしたが、本当はもっと安くして、値段で笑ってもらおうと考えていた。DVD自体をプレスするコストは低廉化しているものの、パッケージングなどでそれなりのコストがかかってしまい、それはかなわなかった。そこで、もう1枚入れることを考えた。1枚は自分用、もう1枚は友達にでもあげるなどして楽しんでいただきたい。


――今後の「デイリーポータルZ」「プープーテレビ」について構想は。


(林)
一方的に情報を送る、というサイトにはしたくない。そのためには読者投稿がひとつの課題だと考えている。一人ひとりはさほど手間をかけず投稿できるが、それをまとめて見せると面白いコンテンツになるような仕掛けを作りたい。例えば、全国の読者の方々に、「こたつをしまった」タイミングを投稿してもらい、それを地図上にまとめて桜の開花予想につなげるとか、あるいは同じような仕組みで、深夜3時にまだ仕事をしている人がどのぐらいいるかリアルタイムで分かる地図を作るとか。そういうオモチャ的なものを用意してみたい。


動画についても、携帯やデジカメで撮った静止画をメールで送ると、それが映像の中に自動的に組み入れられてひとつの作品になる、というようなことができないか考えている。


(大北)
テレビで放送されているようなものではなく、その映像を誰が作ったのかが見えるようなものであり続けたいと思う。「作家性」というと大仰かもしれないが、その人のパーソナリティーを出すことで、技術に血が通っている感覚を大事にしたい。


テレビ番組のようにメディアが一方的に流すものとも、その逆方向で動画共有サイトのような個人が作ってネットに公開するものとも異なるという感覚がある。その間の何かなのだろうか。独自の動きを、少しずつ出せるのではないかと思う。


――デイリーポータルZではイベントをひんぱんに開催しているが、どのような効果があるのか。


(林)
僕たちにとっては、読んでいる人の顔が見られる、ということが大きいが、読者の方々にとっても、ほかにどんな人が読んでいるのかが見える、「ああ自分と同じような人が読んでいるのだな」と確認できるのは意外に重要ではないかと思う。


              ◇     ◇


 デイリーポータルZは、いわゆるCGM(消費者発信メディア)ではない。一方で、社員やプロのライターのみによって作られる新聞や雑誌、テレビなどの手法とも異なる。大北氏が指摘するように、動画共有サイトやブログ、SNSといったソーシャルメディアと、マスメディアとの間にある存在だ。


 現在、ソーシャルメディアと、旧来のマスメディアは互いの発展と生き残りをかけ、連携を試みる動きが活発だ。しかしその形はまだ明確ではなく、手探りの状態が続いている。デイリーポータルZには、そのひとつの解、少なくとも大きなヒントが隠されているのかもしれない。


■関連リンク


デイリーポータルZ


プープーテレビ


2009年5月1日金曜日

「インタフェースとコンテンツの間に区別はない」チームラボ・SKETCH PISTONとは

Teamlab03  インターネット関連システムの開発やアート作品の制作を手がけるチームラボ(東京・文京区)は4月、新しいWEBデザインのコンセプト「SKETCH PISTON(スケッチピストン)」を発表した。情報を掲載したWEBサイトであると同時に、その画面がゲームにもなっているというざん新な手法で、すでに第一弾として都市開発を手がけるアイディーユープラス(大阪市、田端知明社長)の企業サイトを構築した。



 アイディーユープラスのサイトを開くと、「会社概要」「採用情報」などと描かれた雲が画面の中を流れていく。そして背広姿の小さなキャラクターが次々と上から降ってきて、画面の中を歩き回り始める。そこにマウスで線を描き、道を作ってあげるとキャラクターたちはもくもくとそれに沿って歩く。画面内に自動車を走らせたり、気球を浮かべたりすることもできる。


 この不思議な感覚のWEBサイトを、チームラボはなぜ作ろうとしたのか。そして何を目指しているのか。社長の猪子寿之氏と、同社マーケティングプランナーの渡部憲一氏に話を聞いた。


 
――どういうきっかけで開発に着手されたのですか。


(猪子)
もともと、WEBにラクガキができたらおもしろいんじゃないか、という発想がありました。しかも、ただ図形を描くようなものじゃなくて、描いたものがアニメーションのように動き出したりして、自分が描いた世界で遊べるようなものだったらおもしろい。そんなことをチームの中で話し合って作っていきました。


真っ白なキャンパスに絵を描くのって意外に難しい。でも、ある程度完成された世界がそこにあって、そこにイタズラするような感覚で絵にしていくのなら誰でもできます。


(渡部)
ゲーム性を入れよう、という考えもありましたね。


(猪子)
そう。それもルールはシンプルで、自分で目的まで作れるようなゲームです。


どんどん画面に出てくる「ジャパニーズビジネスマン君」は、基本的にまっすぐ前を向いて歩きます。そこにビルを建てると方向転換して反対側に歩き出すし、坂道を描けばがんばって登ろうとする。ボールを置いておけば転がしていきます。各要素には物理的な法則だけがパラメーターとして与えられているだけなので、それらが重なったときにどう動くかは、僕たちも完全には予測できません。現実の物理法則とは一致しないので、ビルが飛んでいってしまうとか、あり得ないことも起きますけど、まあおもしろいからいいか、って(笑)。


ただ何となく動かしている人もいれば、ゴールのようなものを作って遊ぶ人もいる。絵を描く人もいます。みんな勝手に遊んでいます。


(渡部)
ひとつ具体例を見せましょう。ボールは普通に置いておけばジャパニーズビジネスマン君に押されて転がるだけですけど、坂道を作って、たくさんのジャパニーズビジネスマン君が協力して押し上げていけば、ボールを宙に浮かすこともできるんじゃないか。そう思って試してみたらできたので、「大玉ころがし」のようなゲームにしてみました。(下記動画参照)。でも、なかなかうまくゴールに玉が入ってくれない。

(猪子)
うまくいきそうでいかない、それもゲームの快感だと思うんですよ。イメージとしてはピンボールですかね。思い通りにならないのが楽しい。


――最初の作品が企業サイトになったのは?


(猪子)
以前から取り引きのあったアイディーユープラスさんからコーポレートサイトをリニューアルしたい、というお話をいただいたとき、今までになかったものにしよう、ということになって。都市開発を手がけている企業なので、ビルや樹木が出てくる「まちづくり」をモチーフにしています。ジャパニーズビジネスマン君を登場させたのは、日本の働く人ってかっこいいと思うから。僕のイメージでは、日本の都市はまっすぐに一生懸命働くビジネスマンと、イタズラ心で出来ています。


コーポレートサイトはきっちり作るもの、というイメージがありますけど、それだけではもったいないと思います。WEBは今、企業にとって顧客との最大の接点ですからね。せっかくサイトを訪れてくれた人には情報を楽しく見せてあげたいし、それによって面白いことをしている会社だな、と感じてもらえる。コミュニケーションのきっかけにもなります。最終的にビジネスは人と人との間で成り立つわけで、コーポレートサイトがうまくきっかけを作れば、場合によってはキャンペーンサイトを作るよりも効果的だと思いますよ。


――自社のサイトはスケッチピストン化しないのですか。


(猪子)
医者の不養生ですか?だって自社サイトをそうしても、誰もお金くれないし(笑)。ただ、スケッチピストンのプロモーションサイトは、ラクガキができないだけで実は裏でスケッチピストンが動いています。



インタビューに答えるチームラボの
猪子寿之氏(右)と渡部憲一氏

――サイトそのものがゲームになっていますが、サイト内のひとつのコンテンツとしてゲームを提供する、という形は考えませんでしたか。


(猪子)
考えませんでしたね。それには全く興味を感じません。


本来、コンテンツとかインタフェースとかって、区別がないものだと思うんですよ。


僕は高校を出たころからインターネットを始めて、大学を卒業して大学院に通いながらデジタルメディアの会社を作った。そのために既存のメディアと深くかかわる機会がなかったんです。テレビも見てませんでしたし。


だから本や新聞といった、紙のメディアの発想で作られたWEBサイトには、昔から強烈な違和感を持っていました。まずトップページから入って、サイトマップ通りに遷移していく階層構造とか、わけわかんない。そもそもページなんていう概念もなくていい。ネットってもっと自由なものだと思うんですよ。スケッチピストンに触れることで、そこを感じとってもらえたら嬉しいですね。それが未来へのヒントにもなると思います。


――今後、スケッチピストンでどのようなサイトを作っていく予定ですか。


(猪子)
正直に言いますよ。なんも考えてない(笑)。作るときは必死で作るので、後のことはあまり考ません。ただ現状でいくつか案件は動いていて、次回作はイラストレーターのタナカカツキさんとコラボレーションするプロジェクトになる予定です。


クリエーティビティーを刺激できるものだと思うので、将来的には教育とか福祉の分野にも応用できないかな、とも話しています。企業が採用に使ってもいいかもしれない。これで自由に遊ばせると、キャラクターの違いがくっきり出ますからね。渡部君のようにきちんとゴールを作ってその目的に向かう人もいれば、僕みたいにひたすらジャパニーズビジネスマン君を加速させようとする人もいる(笑)。


――さきほど「未来へのヒント」という発言がありましたが、チームラボが思い描く未来とは?


(猪子)
そうですね……言語化するのは難しいけど、まずワクワクする存在であってほしい。そこに行きたくなくなるような未来はイヤです。それと近年、日本の社会が急速に息苦しくなってきているように思うんです。他人とズレちゃうことが悪、みたいな。生産性が高く、合理的で、でも寛容な社会。そういう未来を創造していきたいですね。


そのためのクリエーティビティーは、チームで発揮されることになります。クリエーティブ、って言うと個人や個性の問題だと考える人も多いけど、僕は絶対そうは思わない。社会はますます複雑化しているし、全部一人で考えることなんてできません。そもそもクリエーティブな仕事って、誰かとの対話などを通じて、人の知恵を借りながら考えていくもの。だから僕らはチームでいきますよ。


                      ◇    ◇


スケッチピストンを初めて見たときに強烈な面白さを感じたが、その面白さをうまく説明することができなかった。今まで使ったことのない脳の一部分を刺激されたような感覚。それはまさしく芸術作品から受けるものだった。スケッチピストンは、高度なテクノロジーに基づくビジネスだが、同時に優れたアートでもある。しかし、猪子氏は「ビジネスとアートの区別も意味がない」と言い切る。既成の枠組みや発想、構造から常に自由であり続けるチームラボの強みを、スケッチピストンは象徴的に示している。


最後に、渡部氏はこっそりとこのゲームに隠された“裏技”を教えてくれた。「画面の右上にキーワード検索のボックスがありますが、ここにサイト内にない言葉を入れてみてください」。試してみると、チームラボの技術力とイタズラ心のレベルを目の当たりにすることができる。


(参考リンク)
「SKETCH PISTON」プロモーションサイト
http://www.team-lab.com/sketchpiston/sketchpiston1/


SKETCH PISTONで構築されたアイディーユープラス社のWEBサイト
http://www.iduplus.jp/


2008年12月12日金曜日

情報の「組み合わせ爆発」へ対応急げ――MITメディアラボ・石井裕副所長インタビュー

Hishii_2  「ロサンゼルス・タイムズ」を発行する米新聞大手トリビューンの経営破たんは、米国新聞業界の再編につながることが予想される。これは米国だけの、新聞社だけの問題ではない。デジタル・シフトによる広告収入の減少に不況が追い討ちをかける形で、メディア業界全体が世界的な再編の渦に巻き込まれようとしている。



 1995年から米マサチューセッツ工科大学メディア研究所(MITメディアラボ)でデジタル情報に形を与え直接触れて操作する「タンジブル・ユーザーインタフェース」の開発を進めてきた石井裕教授が、今年同研究所の副所長に就任した。世界最高レベルの知識集団を率いる石井教授に、マスメディアの行く末について見方を聞いた。


 


情報は複合的に爆発している


 情報社会を地球に見立てると、昔は情報というマントルが、マスメディアという巨大な火山を通じて地表に噴き出していた。しかし今はあらゆるところに出口があって、情報があふれ出している。


 そういう中で、人は世界中の新聞を読み比べたり、RSSリーダーで様々な人の視点を参照したり、ソーシャルブックマークやソーシャルタギングでキーワード抽出するなどして、必要な情報を得ている。さらに知人との会話や、偶然見かけたものごとなども加え、すべての情報を総合的に分析し、行動しているのだ。


 米国の作家、トム・クランシーの小説に登場するCIA職員ジャック・ライアンは情報分析のプロフェッショナルで、収集した様々な情報を組み合わせて分析し、自分なりの判断を下して行動する。そうした点と点をつないでいくような作業が、ネット社会では当然のものになりつつある。


 情報爆発という言葉もあるが、今の状況は情報と情報とが複合されることでより大きな爆発を呼ぶ「組み合わせ爆発 (Combinatorial Explosion) 」であることを意識しなくてはならない。


メディアに求められる役割


 では、メディア企業は単に組み合わされるべきパーツとしての情報を供給するだけの存在になるのか。そうなりたくなければ、何をすべきなのか。


 そのひとつは、情報をコーディネートする仕組みをつくる、ということだろう。混沌とした組み合わせ爆発の世界で、必要としている情報を必要としている人に届けるマッチングのシステムだ。そしてそこでは、なぜその人にその情報を勧めるのかという理由を明確に伝えられることが重要になる。


 例え話をしよう。あるショップの店員が客に対してネクタイを勧めるとする。「このネクタイはいいものですよ」というのが、これまでのマスメディアのやり方だ。これから必要なのは「あなたがコミュニケーションする相手は誰で、そういう人が価値を見出すのはこれで、そしてあなたが望むコミュニケーションの目的はこうだから、このネクタイを身に着ければうまくいく可能性が高くなりますよ」と言ってあげることだ。さらに他の選択肢も提示する。そうしたコンシェルジェ的な発想、まさしくインテリジェンスが、メディアに求められるようになる。


 それを実現するためには、まず人々がどこで情報に触れ、どのように活用しているのか、つまり人とメディアが交差するフレームワークを的確に把握することが必要条件だ。


 そして500人、1000人の記者の視点ではカバーできないほど多様化した情報ニーズに答えるために、ひとつの会社の中で閉じることなく、世界中のあらゆる出来事や議論とリンクしながら情報を分析していくような手法を開発できるかどうかもポイントになるだろう。


 もちろん、それは簡単なことではない。「大衆」すなわちマスを念頭に置いた事業ではなく、限られた層、限られたセグメントの人々に対してそれぞれに必要な情報を配信していく、というモデルだからだ。その力があるか。技術があるか。スピードがあるか。そう考えると、やはり世界中のほとんどの企業がグーグルには敵わない。だからこそグーグルは怖いのだが、そういう怖さの本質を日本のマスメディアは理解していないのではないか。


ビジネスモデルをどう描くか


 現代は「情報はタダ」が当たり前の世界。これまでのような、コンテンツ流通の統制でマネーを生んできたようなビジネスはもうまかり通らないだろう。読者は様々なソースから得た情報をマッシュアップ(組み合わせ)して自分のメッセージを発信したいと思っているのに、そのニーズに答えられないからだ。


 流通に関する障害がない、シームレスな情報の海。そこに乗り出してはビジネスができない、と言うかもしれないが、そんなことはない。例えば、写真共有サイトの「フリッカー」は、一定の容量までは無料で使えるようにし、その価値を十分に理解させた上で、有料会員になれば容量が無制限になる、と持ちかける。これはコンテンツやサービスを空気のように提供して、費用を負担すればもっと快適な空気を吸うことができる、というタイプの手法だが、もちろん他にも方法はあるはずだ。


 メディアが持っている情報をもっと自由に検索できる状態に置けば、われわれのような研究機関はもちろん、社会全体の役に立つ。目指すべきは、そういった人類の知識の集大成への貢献ではないか。現状では、宝の持ち腐れになってしまう。


 なのになぜ足を踏み出せないのか。著作権やルールに縛られている、ということもあるのだろうが、先に述べた情報活用のフレームワーク、言い換えれば社会全体で行う知識の再編集、再生産といった情報のエコシステム(生態系)の中で、メディアがどういうポジションを得るべきなのか、もう一度考えてほしい。


進化できなければ絶滅するだけ


 英国の巨大企業BTは、いち早く交換機型の電話回線をIP(インターネットプロトコル)網へ移行することで成長軌道に乗った。これは歴史的な事件だ。IPへ移行すれば既存のビジネスモデルが崩れ、収益が悪化するのは目に見えていたが「座して待っていてもこの流れは止められない、だったら先にやってしまおう」と決断したのだ。逆に決断を最後まで先延ばしすれば逆の、恥ずかしい意味で歴史に残ってしまう。


 マスメディアも進化の波に乗ることができなければ、絶滅した恐竜やマンモスのようになるだけだ。長い年月が経ってシベリア凍土の中から氷漬けになって掘り出され、後世の人類に見物してもらえるぐらいのことは期待できるだろう。それを望むというのなら何も言うことはないが、生き延びたいのなら、先に行って出し抜かなくてはならない。


石井 裕(いしい・ひろし)
1956年生まれ。80年北海道大学大学院修了、電電公社(当時)に入社。NTTヒューマンインタフェース研究所など経て、95年からMITメディアラボに勤務。今年5月に同研究所副所長に就任。
http://web.media.mit.edu/~ishii/index.html


2008年6月20日金曜日

オートロックマンション、新聞配達と防犯の両立めざす――三井不動産レジデンシャルが新システム

システム概念図(クリックすると大きくなります)




 三井不動産子会社の三井不動産レジデンシャル(東京・中央)は、オートロックマンション向けに、入居者の各戸の玄関まで新聞を配達できるようにした新しいセキュリティーシステムを開発した。新システムを担当する都市開発事業部開発室主任の久松壮氏に、新聞配達と防犯性を両立させるための工夫や、開発の背景を聞いた。



――どんなシステムなのか


 新聞配達員があらかじめ配布されたICカードと暗証番号を使い、マンションの集合玄関の鍵を開ける。このとき、集合玄関に設置した監視カメラが自動的に高画質モードに切り替わり録画を開始。さらに、スピーカーから「監視モードに切り替えます」というアナウンスが流れ、集合玄関の近くにいる住民に配達員が入ったことを知らせる。


 「ICカードと暗証番号があっても、朝5時~7時しか入れない」といった時間制限を設定することもできる。万が一、配達員がICカードを紛失してしまった場合は、システムを操作すれば、すぐにカードを無効にできる。


 鍵製造最大手の美和ロック(東京・港)、綜合警備保障と連携しながら開発した。来訪者が部屋番号を入力するための数字ボタンを暗証番号入力に対応させるのに苦労したが、従来のセキュリティーシステムに備わっている設備を有効活用することで導入コストを抑えた。新築で導入する場合は、従来のシステムとほとんど変わらない。


――開発の背景は


 当社がマンション販売後に実施する入居者アンケートでは、必ず「新聞は読みたいけれど、集合ポストまで取りに行くのは…」といった意見が出てくる。管理人が24時間常駐するような大規模マンションでは、管理人が新聞配達員を確認して入館を許可する事例が生まれているが、数十戸程度の規模のマンションでは難しい。24時間常駐にすると、入居者の費用負担が重すぎるからだ。


 24時間常駐ではないオートロックマンションのなかには、各戸への配達を実現するために事前に集合玄関の鍵を新聞配達員に渡しておいたり、早朝の一定時間にオートロックを解除したりするところもあるが、セキュリティーの面では問題が残る。当社の物件は、2つのオートロックを解除しないと各戸の玄関まで行けない「ダブルオートロック」などのセキュリティー機能が売り物の一つ。セキュリティーを考えながら各戸への新聞配達ができれば、これも売り物できる。


――今後の展開は


パークホームズ目黒中町の完成予想図
 まず6月中旬から販売を始めた「パークホームズ目黒中町」(東京・目黒)で導入し、首都圏の新築物件から展開していく予定だ。既存の物件にシステムを販売する可能性も検討している。実際に既存マンションの管理組合から問い合わせが来ており、大規模修繕工事のタイミングに導入可能だと思う。今回のシステムの外販は考えていないが、同業他社にも同様の動きが広がるのではないかと考えている。


■関連リンク
ニュースリリース(PDFファイル)
三井不動産レジデンシャル http://www.mfr.co.jp/


2008年3月6日木曜日

「地域社会にガッチリ食い込む」――河北新報のSNS「ふらっと」

河北新報社の佐藤和文氏
 東北地方でブロック紙を発行する河北新報社(仙台市)のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「ふらっと」が来月、開設1周年を迎える。地域密着型のSNSが全
国各地に登場しているが、新聞社がSNS運営に乗り出す事例はまだ珍しい。河北新報社の佐藤和文メディア局次長兼ネット事業部長=写真=に、新聞社がSNSを運営する狙いやメリット、「ふらっと」の現状などを聞いた。



――「ふらっと」の現状は


 2007年4月17日にオープンし、約3000人が会員登録している。SNSの中で120~130のコミュニティー(会員が自由に設置できるテーマ別の掲示板)が設置され、毎日約30本の「ブログ」(注・外部のブログ開設サービスではなくミクシィ、グリーなどの「日記」にあたる機能)が更新されている。SNS開設当初は1万人を目標に掲げたが、運営してみると、今の規模で十分ではないかという実感もある。


 1000万人を超す人々がミクシィを利用する時代だが(2008年1月末時点のミクシィ会員数は1333万人)、自社でSNSをやってみると「SNSの使い方が分からない」という人が結構多い。「SNSのことはよく知らないが、河北新報が新しいことを始めたから」と、ふらっとに集まってくれた人もいる。当社の運営担当者も「ふらっと」に参加して、一般の会員と一緒にコミュニティーを盛り上げているところだ。


「ふらっと」のトップページ
 公募で選んだ一般の人に自分が住んでいる街のことを書いてもらう「街角ブロガー」(2008年3月5日時点で12人が執筆中)や、SNS内のブログと外部のサイトで書かれたブログのなかから面白いものを選んで紹介する「ブログ交差点」(同3月6日時点で164ブログ)などの企画を展開している。世間には新聞記者よりも専門分野に詳しい人がたくさんいる。その人たちの情報発信を支援することも、新聞社の仕事の一つになっていくのではないかと思っている。

――SNSを始めた狙いは


 (新聞離れが叫ばれるなかで)地方紙が生きていくためには、地域の人々とフェース・トゥ・フェースの関係を築き、地域社会にガッチリと食い込んでいくシナリオをつくっていくことが必要だ。


 まだ紙の新聞の編集局はネット活用に消極的だが、今後、紙面づくりにネットを活用したくなったときに使える環境を整えておきたい。ふらっとの会員でない人もSNSの中のコンテンツを見られるオープン型のSNSにしたのは、そのためでもある。今後は編集局と共同で、時事ニュースについて議論できるようなコミュニティーをつくりたい。


――新聞社がSNSを運営するメリットは


 ふらっと開設前は、いろいろな人から「(利用者が自由に投稿できる)SNSで、投稿が荒れたらどうするんだ」と言われたが、実際には荒れる事態は起きていない。「新聞社が運営しているSNS」というステータスが安全装置として働いているのではないだろうか。


 積極的に地元を盛り上げようと考えている人たちとのつながりを作りやすいのも、新聞社が運営する利点の一つだ。例えば、宮城の日本酒をPRしようという人がSNSのコミュニティーに集まっている。


 新聞社の運営ということで、地元自治体との連携も生まれている。2007年10月から、仙台市がごみ減量のPRに、ふらっとのブログ機能を活用している(「セツコさんのワケル塾」)。自治体にとっても、新たな予算を使わずに済む利点がある。


■関連リンク
ふらっと


2007年9月29日土曜日

日本の最南端で最先端を試す・八重山毎日新聞社の挑戦

Yaeyama01 産経新聞の「イザ!」や毎日新聞の「毎日jp」など、大手新聞社による読者参加型サイト、いわゆる「web2.0的」なサイトが次々に登場している。こうした取り組みはビジネスモデルや運営方法に未知の部分も多く、その挑戦には大きな覚悟が必要だ。これまでとは全く異なるサイトを構築するため、投資額も相当なものになる。



 だがそれを、開発コストゼロ、しかもたった1人で実現した新聞社がある。「日本最南端の新聞社」を標榜する八重山毎日新聞社(沖縄県石垣市)だ。同社のウェブサイト「八重山毎日オンライン」は、ほぼすべての記事でコメント投稿とトラックバックを受け付け、RSSフィードなども積極的に活用。ワンクリックでソーシャルブックマークサービスへの登録も可能というまさにweb2.0時代の新聞社サイトだ。



 


八重山毎日オンラインの概要


Yaeyama02  八重山毎日新聞社のサイトを開くと、タイトル画面の上に「ようこそゲストさん/ログイン/新規登録」というテキストが並び、会員制サービスであることを示している。記事の閲覧に会員登録は不要だが、会員になるとコメントを投稿できるようになるほか、気になった記事を自分専用のページに保存するなどの機能が利用できる。登録は無料で、特に新聞の購読者でなくてはいけない、といった条件はない。名前とメールアドレス、希望するユーザーIDとパスワードのみの簡単な記入で登録は完了する。


 コメント、トラックバックはほぼすべての記事で受け付けている。関心の高い記事には複数のコメントがつくこともある。また各記事の見出しの下には3つのボタンが並んでおり、ソーシャルブックマークサービス「はてなブックマーク」への登録、自分専用ページへの保存、PDFファイルのダウンロードがワンクリックでできる。なおPDFは新聞紙面のイメージになっているわけではなく、一般的な文書形式になる。


Yaeyama05 トップページには八重山地方の地図が表示されており、記事で紹介している事件やできごとが発生した場所にマークが付けられている。そのマークをクリックすると、記事の見出しや写真が表示され、その記事を読むことができる仕組みだ。地図上で任意の場所を選び、そこでどのようなニュースがあったかを検索することもできる。


 このサイトはRSSフィードを提供しているので、更新情報はRSSリーダーを使って確認できる。「ニュース」のフィードに加え「コメント」のフィードもある。


 全体的には、一般的なブログサービスが提供している機能の多くが盛り込まれていることから、「ブログ風」という印象だ。どこか手作り感がただようデザインもその印象を色濃くしている。


 



 


開発・運用担当者インタビュー


 このサイトの構築・運用を手がける、八重山毎日新聞社メディア統括局の立松聖久氏=写真=に話を聞いた。


 


――サイトを現在の形にした背景は


 2005年3月にリニューアルしたが、それ以前は市販のホームページ製作ソフトを使って更新していた。作業に非常に時間がかかり、かつ複雑で、これをまず効率化したかった。また、過去記事を検索する機能を実装したかったこともある。


――ソフトウエアは何を使っているのか


 自作したものだ。当初、市販のコンテンツ管理ソフトが使えないか検討したが、いずれもオーバースペックだったり、必要な機能がなかったり、とぴたりと当てはまるものがなかった。わが社の規模では何千万円もかけてオーダーメードのシステムを作ることはできない。そこで自作を考えた。自作すれば利用しながら改善したり修正したりすることも容易になる。当時すでにブログがブームになりつつあり、ブログ的なシンプルなものなら自分でも作れそうだし、読者にも受け入れやすいと思い、このような形式にした。


 この自作したシステムに、オープンソースソフトウエアや、公開されているAPI(アプリケーション・プログラム・インターフェース)を使って機能を付加している。例えば、各記事ごとに過去の類似記事を自動的に抽出して表示する仕組みがあるが、これは(有)未来検索ブラジルが開発したオープンソースソフトウエア「Senna」をカスタマイズしたものだ。また、記事が紹介している場所を地図上に表示する仕組みは、グーグル社の「グーグルマップ」APIを使っている。


――開発コスト、開発期間は


 自作と無料のオープンソースソフトウエア、APIを使っているので直接的なコストはゼロ。開発期間は約1カ月で、たずさわった人員はデザインまで含めて自分ひとりだ。公開後もひんぱんに修正を行っている。小回りがきくのが自作ソフトのいいところだ。


 システムの小回りがきくことは、地域密着型できめの細かい情報サービスを進めるのにも好都合だ。そもそも、インターネットのサービスは走りながら考えるのが基本だと思う。リクルートや地図情報サービスのアルプスのように、社内にラボを設置し実験的な取り組みを次々行う体制が注目されているが、そうした姿勢が理想的なのではないか。


――現在の閲覧数、会員数は


 1日のページビューは平均して2万ほど。登録会員は4,000名程度だ。当初は登録しないと記事をあまり読めないようにしていたが、まずは読んでもらわないと次の展開も難しい、ということで閲覧は誰でもできるようにした。


 より多くの人に読んでもらうためには、リンクを貼ってもらうことも重要だ。フレーム取り込みなど、別のサイトの一部に見えるような形でさえなければ、どの記事にリンクを貼ってもらっても構わない。「はてなブックマーク」にはワンクリックで各記事を登録できるボタンを用意してある。


 自分のブログに記事へのリンクを貼っているブロガーの大部分は、わが社の報道に対し好意的な人たちだ。そういう人に対し、厳しいリンクポリシーで抵抗感を持たせることは得策ではないのではないか。


――ビジネスモデルはどうか


 地域の新聞社と共同通信社が運営する「47CLUB」から配信されるバナー広告を掲載している。ほかに、グーグルのコンテンツ連動型広告や、アマゾンの成果報酬型広告といった、主に個人サイト向けの広告サービスも組み込んでいるが、これはほとんど収入にならない。現在、独自のバナー広告の設置を検討している。長期的には有料コンテンツの配信なども考えたい。


――今後の展開は


 開発時に副産物的に作った、「島っぷ」というコンテンツはまだ本格的に稼動していないが、読者の方々が地図をベースにさまざまな情報を共有できる仕組みだ。観光で八重山を訪れた人や、新しく引っ越してきた人にこの地方の良さを知ってもらえるようなものにしたい。


 SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)にも興味はあるが、この分野では、すでにmixiが多くのユーザーを抱えているので、難しい側面もある。運営にかかわる人員の確保も問題だ。ただ、全国各地で地域ごとにコミュニティーが形成され、それらがゆるやかに連携できるような仕組みがあると面白いのでは、と思う。


 動画コンテンツも視野には入っている。これは、まず素材をどう集めるかが課題だ。それに、ただ動画を一方的に流すのでは面白くもなんともない。youtubeなど動画共有サイトのように、ユーザーが自分のブログに貼り付けたり互いにコメントをしたり、といったような仕組みを考えなくてはいけない。


――全社的な戦略の中で、「八重山毎日オンライン」はどのような位置にあるのか


 1万5000部の発行部数がある新聞事業が、まだビジネスモデルも確立できていないネット事業にとってかわる、という状況は考えにくい。だがわが社の場合、多くの読者が離島に住んでおり、天候によって新聞が届けられないケースがある。そのとき、ネットでニュースを伝えることは必要不可欠だ。そういう意味では、ネットでの事業展開は新聞社としての使命を果たすことだと思う。


 こうした意識は開発段階から経営トップとの間では共有できている。社内でもさらに浸透を図るために、新しい提案を積極的に行っていくつもりだ。


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八重山毎日オンライン


2007年6月22日金曜日

「玉石混交の情報から”玉”を集める」――神奈川新聞の「メディアジャム」

神奈川新聞社の松澤雄一氏
 神奈川新聞社が6月4日開設した新サイト「メディアジャム」が注目を集めている。インターネット上の多くのサイトに掲載されたニュースの情報を自動収集してサイトをつくる。自社のニュースを載せる他の新聞社サイトとは全く異なる新しい取り組みだ。新サイトを統括する神奈川新聞社の松澤雄一デジタルメディア局長(兼メディアジャムLLC業務執行責任者)=写真=に、メディアジャムの狙いや今後の見通しなどを聞いた。



――どんなサイトなのか


 74のニュースサイト(2007年6月22日時点)を自動巡回してニュースを集め、独自に分類・整理して見せる「ニュース・アグリケート・サイト」だ。神奈川新聞社のニュースサイト「カナロコ」に掲載された地元ニュースと共同通信ニュースに加え、「山陽新聞」「岩手日報」など他の新聞社のサイト、「ITmedia」「J-CAST」などネットのニュースメディアなどから情報を集めている。


メディアジャムのトップページ
   「巡回拒否」の意思表示をしたサイトは自動巡回の対象外。見出しを含め120字の上限を設けて収集している。サイトの利用者は情報源となった各サイトに移動して続きを読む。独自のアルゴリズムを使い、自動的にニュースの表示順位を決めている。


――新サイトを立ち上げた経緯は


 2006年7月にカナロコの全面リニューアルが一段落。それを契機に、新しいネット事業を議論してきた。ちょうど同じ時期に、カナロコのリニューアルを手がけたウェブ制作会社、ミツエーリンクス(東京・新宿、高橋仁社長)から、「一緒に何かやらないか」と誘いを受けた。共同で実験的なプロジェクトを立ち上げることにした。


 共同出資で合同会社(日本版LLC=出資者が出資額を限度に有限責任を負う一方で、出資者全員の合意に基づいて組織運営、利益配分を自由に決められる)のメディアジャムを設立し、意思決定のスピードを速めることにした。動画配信技術やRSSリーダーなどを開発するユビキャスト(東京・千代田、呉英仁社長)も開発に加わってもらうことにした。


 新事業のコンセプトは(1)ネット上に氾濫する玉石混交の情報のなかから、「玉」の情報を集める(2)ニュースとつながる(3)SNSや個人ブログのように個人が情報発信できるもの--の3つ。新会社のメンバーでメッセンジャーを使って熱く語り合ううちに、いつのまにか形になったのが「メディアジャム」のサイトだ。「こんなサービスがあると便利だよね」という風に、利用者の視点から発想した。


――今後の展開は


 今年秋にマイページ的な機能を追加する。詳細はまだ詰めている最中だ。メディアジャムのサイトはメールアドレスで会員登録できるが、マイページを使いたい人は、属性情報をもっと詳しく登録する仕組みににするつもりだ。


■関連リンク
メディアジャム
「ネットが「スクープ」を生む時代に既存メディアが行く道は?」(NIKKEI NET)
「ブログでコミュニティー形成、ニュースに深みを」(カナロコ開設時のインタビュー)



2007年5月10日木曜日

「ネット・ガバナンス、利害超えた議論が大切」

マーカス・クマーIGF事務局長
 インターネットの管理体制(インターネット・ガバナンス)をテーマに活動している国連インターネットガバナンスフォーラム(IGF)。米国主導のインターネット運営に対する批判が高まるなか、国連が設けた組織で、2005年の世界情報社会サミット(WSIS)で設立が決まった。来日中のマーカス・クマー事務局長に、2006年秋にギリシャ・アテネで開いた第1回総会の成果や、今後の活動などについて聞いた。



――アテネの第1回総会の成果は


 「政府、企業、NGO(非政府組織)、技術者など、様々なステークホルダー(利害関係者)が一堂に会し、丁々発止の議論で盛り上がった。議論のテーマも著作権、サイバー犯罪など多岐にわたった。インターネット関連の会合はたくさんあるが、こんな議論の機会を持てたのはIGFが初めてだと思う」


 「なかでも、政府、企業、市民社会など様々な利害関係者が協力する「ダイナミック・コアリション」(積極的な連携)の重要性が指摘されたことは大きな成果といえる」


 「『(インターネットの)開放性』『セキュリティー』『多様性』『アクセス』などの議題のうち、最も刺激的だったのは『開放性』。特定の国や企業を名指しして責めるような外交的な議論ではなく、民間企業がどういう役割を果たせるか、そもそもネット上の表現の自由とはどういうものか、といった議論できた」


 「世界情報社会サミットでは、ここまで突っ込んだフランクな議論はできていなかったと思う。(特定の利害関係者による議論と違い)既存のビジネスモデルを超えた解決方法があるかもしれない、という段階まで議論を深めることができた。また、インターネット自体が、ダイナミックに進化し続けていることも、強調された」


――今後、議論していくテーマは


 「2007年11月に第2回IGF総会をブラジル・リオデジャネイロで開く予定。議論のテーマはこれから決めるが、幅広いテーマについて話し合う姿勢は続けていく。第1回総会で議論された途上国支援や、(スパム対策などに取り組むうえで)国内法と国際協力の兼ね合いをどうするか、などが重要になるだろう」


 「スパム対策などの国際ルールをつくるとすると、「国際条約をつくろう」という人もいる。しかし、国際条約をつくるのは、時間がかかりすぎる。ようやく条約ができたと思ったら、技術が進んで、もうその問題は存在していない…といった事態も十分考えられる」


――IGFでのクマー氏の役割は


 「私は国際社会のために働く公僕だ。いろいろな人の貴重な意見に耳を傾けることが重要だと思っている。IGF以外にも様々な会合に参加し、そこで知り合った各国の人々から招待を受けて説明に出掛けることも多い。様々なステークホルダーの方々に会い、IGFの議論に参加してもらうのが私の役目。インターネット・ガバナンスの問題は政府だけでなく企業や市民社会、技術者らが一体になって、取り組むことが重要だ」


――日本の政府や企業、市民社会に望むことは


 「日本はICT(情報通信技術)にとっても、インターネットにとっても、国際的に重要な国。あらゆる人々にIGFに参加してもらえるよう、切に願っている。政府関係者だけでなくビジネスリーダーにもどんどん参加してほしい」


――通信の標準化を進めているITU(国際電気通信連合)、インターネットアドレスを管理しているICANNと、IGFはどう違うのか


 「IGFは意思決定をする組織ではない。様々な立場の人々が同じ屋根の下に集まって話し合う中立的なプラットフォームだと考えてほしい。どんな立場の人でも、恐れずに議論に参加できる」


 「IGFは意思決定の機能がないのが弱点だと言われることもある。しかし、様々な立場の人々が交渉ベースではなく自由に議論できる利点がある。毎年開催される世界経済フォーラム(ダボス会議)も、意思決定の機能が弱いが、世界各国の人々から高い関心を集めている。IGFも同様だ。ITU、ICANNはそれぞれ本来の活動があり、活動範囲を超えた広範なテーマの議論は難しい。IGFと補完関係になれる」


■関連リンク
「インターネット界のダボス会議を目指す」(NIKKEI NET)
インターネットガバナンス」(ウィキペディアの用語解説)
IGFのホームページ(英文)


2005年6月14日火曜日

ブログでコミュニティー形成 ニュースに深みを神奈川新聞社 松澤デジタルメディア局長







kanagawa 神奈川新聞社がインターネットのニュースサイトにブログ(日記風の簡易型ホームページ)機能を導入し、読者らが参加するコミュニティーづくりを進めている。2月にサイトを全面更新して「カナロコ」が誕生して4カ月が過ぎ、会員は4千人を超えた。カナロコを仕掛けた松澤雄一デジタルメディア局長にブログを活用した電子メディア戦略を聞いた。











――サイトの全面更新を決断した背景は。





「紙媒体の将来が見えてきているという認識があった。地方紙、特に首都圏の地方紙は先行きが厳しい。ウェブ事業も従来のサイトは1カ月に450万ページビューがあったが、行き詰まってきた。地方紙という性格上、主力のコンテンツ(情報の内容)であるニュースの扱う範囲が狭い。地方紙はローカル情報に強いはずだが、そこに深みもないと感じていた」





――ブログを導入する構想は当初からあったのか。





「例えば、隣の家の猫が子供を産んだというようなローカル情報まで扱うには、その地域に住んでいる人、働いている人から情報を集めるしかない。コミュニティーを作れば、情報が集まり、情報交換ができると考えた。昨年8月に局員からブログの話がでてきて、局員が個人のブログを立ち上げたほか、社内でも閉じた環境のブログを会議室の代わりに使ってみた。9月には局としてはブログを導入しようということになった」





――ブログ導入について社内に抵抗感はなかったのか。





「当時の役員会では『ブログって何だ』という段階の議論だった。ブログにコメントを書き込まれる問題よりも、むしろ役員会から指摘されたのは、しっかりとしたビジネスモデルを描けるのかということだった。バナー広告の収入で1年後には運用経費ぐらいは出せるだろう。まず、やってみて、ビジネスモデルは3年後に構築していくと社内を説得した」





――会員制にした狙いは。





「神奈川新聞社は顧客情報を持っていない。会員制で顧客情報を取り込む仕組みも作ろうと考えた。会員制はユーザーのコミュニティーを形成するということであり、一方ではユーザーを囲い込むという狙いもあった」





――会員4千人のうち神奈川新聞の購読者はどれくらいいるのか。





「会員登録のときに新聞購読についてユーザーに聞くが、自由回答にしてあるため、わからない。ただ、神奈川新聞の紙面を見ながらブログにコメントしている人もいる。現在はカナロコの会員データベースというだけで顧客データベースにはなっていないが、やがて顧客データベースができれば、初めてビジネスに結びつくだろう」





――コミュニティーを形成させるという面での成果は。





「横浜ベイスターズを応援する『ベイスターズフィーバー』のファンブログはコミュニティーが形成された典型例だ。(運営は)社外の人に任せて、好きにやってくださいといっている。ブログには試合終了後、40以上のコメントがつく。あの場面では、こう采配したほうがいいなどと意見を出し合いながら自然にコミュニティーができた。(実際に会って交流する)オフ会も2回やっているようだ」





――コメントを開放すると、誹謗(ひぼう)中傷の書き込みで機能不全に陥るというケースも想定する必要があるが。





「当初、コメントやトラックバックはニュースについては開放を控えていた。ニュース以外のブログについての反応を見ていたが、カナロコのユーザーはいい人が多かった。コミュニティーを勝手に作ってくれた。それで4月15日にはニュースについてもコメント、トラックバックを開放した。当初は徹夜で局員が誹謗中傷などの書き込みを監視していた。幸い大きなトラブルはない」





――ニュースにもコメントを開放して、ユーザーの反応は。





「今は一部のニュースしか開放していないのだが、こちらがコメントがつくだろうと想定するニュースにはほとんどコメントがない。むしろ、生活に密着したゴミ問題、鉄道の話題、神奈川県のゲームソフト規制問題、そして今なら(直立する)レッサーパンダの話題にコメントがつく。県知事の発言を記事にしたニュースには、なかなかコメントもトラックバックもつかない。一般の人が発言したいのは生活密着型の話題のようだ」





――ニュースにコメントしてもらうための工夫は。





「ローカルニュースはストレートにはユーザー側がからみにくい面がある。どこかで何がありましたというだけでは、どう発言していいのかわかりにくい。背景説明や論評がないとだめだ。これとは別に、ニュースを串刺しにして集める方法もある。今はニュースをローカル、スポーツなどに分類してみせているが、ゴミ問題なら小田原市のゴミ問題、横浜市のゴミ問題というように、同じ問題を一括して見せれば、コメントをつけやすくなる。XML(拡張可能なマーク付き言語)形式でメタ情報を使ってニュースを括りだす手法を検討している」





――みなとみらい(MM)線沿線にある街の情報を書き込むエリアライター「ホロホロさん」の仕組みは、ネット新聞に記事を投稿する「市民記者」に近い発想なのか。





「市民記者と比べられることは多いが、ホロホロさんが市民記者という意識はない。市民として情報を発信している。10年ほど前に、紙面で主婦レポーターをやったことがあるが、間もなく行き詰まった。裏づけをとる作業が大変だったからだ。ホロホロさんには全員面接をしており、誹謗中傷やウソはだめと徹底している。ニュース部分は神奈川新聞社が発信するが、MMブログやベイスターズフィーバーは自己責任でご利用くださいということだ」





――参加するユーザーの自己責任という形態に不安はないか。





「ライターのなかにデパートの広報担当の人がいて、自分のデパートのことを書いた。これに対して『新聞社のホームページはこうあるべきだ』と決めつけている人から、ホロホロさんが自分の会社のPRをしているとの批判が出た。しかし、カナロコは新聞社だけでなく、皆で作っていくものだと理解を求めた。神奈川新聞社はコミュニティーを提供します、いや、皆さんで作ってくださいと言っている」





「コミュニティーの雰囲気づくりは難しいと感じるかも知れないが、それを心配するのは読者を信じていないことになる。新聞社をとりまく顧客は悪い人ではない。誹謗中傷を書き込む人に対してはコミュニティーの雰囲気を害して欲しくないということで対応する。具体的には書き込みの削除や議論の場所を変えてもらうことになる」





――カナロコを神奈川新聞の紙面づくりにも活用できるのか。





「カナロコは社外から評価してもらっている半面、社内ではほとんど注目されていないのが実情だ。ブログで市民の意見、情報が集まっているのだから、紙面にフィードバックして紙面に厚みを持たせるという考えもあるが、編集局の反応は鈍い。カナロコを始めるとき、古いジャーナリズムからは離れようと考えた。カナロコの編集担当者は(ニュースの扱いや紙面の見出しを決める)整理部の経験があるが、新聞の伝統的なニュースの軽重の決め方は捨てようと言っている」





――カナロコを事業として軌道に乗せる戦略は。





「ブログを導入したPR効果は大きいが、今は運用コストすらまかなえていない。今後はコメントやトラックバックをする人がより使いやすくなるサイトにしていきたい。ヘビーユーザーへのサービスを強化する一方で、裾野を広げて多くの人をユーザーとして取り込む仕掛けも必要だ。ユーザーごとに権利を定めるピラミッド構造のサービス体系を整えて、薄く広くユーザーに課金できるようにしたい。ただ、課金については読者への嫌味にならないように理解を求めながら進めたい」





松澤 雄一氏(まつざわ・ゆういち)=中大卒、71年神奈川新聞社入社。社会部、報道部などを経て97年編集局次長兼整理部長。01年からメディア局長(現デジタルメディア局長)。神奈川県出身。


















































































































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