2009年8月23日日曜日

重み増す地域メディアの役割と意義・米子で合宿討論会

20090822_4  慶應義塾大学地域情報化研究コンソーシアムは8月21日、22日の2日間、地域メディアの将来について話し合う討論会「地域メディアを再構築しよう!米子合宿」を鳥取県米子市の米子コンベンションセンター・ビッグシップで開催した。全国の新聞社、ケーブルテレビ局など地域メディアの関係者や、このテーマに関心のある研究者ら50人以上が参加し、熱心な議論を繰り広げた。



 最初に、地元・米子市のケーブルテレビ局、中海テレビ放送がその活動について発表した。中海テレビは独自の番組制作に力を入れていることで知られる。一人の社員が取材、撮影、編集まで行うビデオジャーナリスト方式を採用することで、少人数で6チャンネルにも及ぶ独自番組の放送を支えている。


20090821  単に事実を報道したり、問題提起をしたりするだけでなく、地域の課題解決に積極的にかかわっていく姿勢を重視しているのも中海テレビの大きな特徴のひとつ。交通事故が連続して起きている地域に関する報道では、警察による事故原因の調査検討や、地元の対策協議会、そこから役所への陳情などをたんねんに追い、紹介することで、事故撲滅への動きを支え続けた。その結果、この地域での交通事故発生はゼロになったという。また、鳥取と島根の県境にある汽水湖、中海の浄化プロジェクトでは、企業や地元住民グループなどによる清掃活動を毎回テレビ番組で紹介するなど、放送とボランティア活動を融合させた試みを行い成果を挙げている。中海テレビの高橋孝之専務(=写真)は「今後は、実際に起きている問題ではなく、これから起こりうる課題を発見し、解決するような放送をしたい」と力強く語った。


 続いて、最新のネット技術を駆使している事例として、佐賀新聞社の牛島清豪デジタル戦略チームリーダー、紀伊民報社マルチメディア事業部の上仲輝幸係長が各社の取り組みを紹介した。佐賀新聞は、新聞社としていち早くSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を導入したことで知られているが、その後も積極的に新しいサービスに乗り出している。今年は動画共有サイトのYoutubeに公式チャンネルを開設し、ニュース番組の放映を始めたほか、ミニブログのツイッターにも公式アカウントを設置した。一方の紀伊民報は、ニュースサイトである「AGARA」、地元の店舗を紹介し、クーポン券なども発行するエリアガイドの「Kii Life(キーライフ)」、そしてSNSの「みかん」を連動させることで、効果的な情報発信と他の新聞社にはないビジネスモデルを実現している。


 2人の講演を受けたディスカッションでは、兵庫県で地域SNS「ひょこむ」を運営しているインフォミームの和崎宏社長が「我々のようなコミュニティー側から見ると、新聞社など地域のメディアはパートナーになりたい存在。自社ですべてを手がけるのもいいが、もっと外と連携することも必要ではないか」と意見を述べた。


 2日目のセッションでは、「シビック・ジャーナリズムの挑戦」の著書、河北新報社の寺島英弥編集局次長兼生活文化部長が、地域メディアに求められるジャーナリズムのあり方について事例をまじえて講演した。寺島氏は「マスに対して情報を発信してきたマスメディアだが、そこで働く記者はいつの間にかマスに守られた存在になろうとしている」と指摘。その上で「そうした『内なるマス』から自らを解放し、一人ひとりが取材を通じて得た様々な声を地域社会につなげていく『つなぎ手』とならなくてはいけない」と主張した。


 最後に、発表者のほか、地域SNSを研究している国際大学GLOCOMの庄司昌彦主任研究員、全体の司会を務めた「ガ島通信」ブロガー・藤代裕之氏と坪田知己日経メディアラボ所長らが総括討論を行った。この模様は中海テレビが番組化し、10月に放送を予定している。


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地域情報化研究コンソーシアム


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