2009年4月17日金曜日

逆風でも積極展開を・NHK文研シンポジウム開催

Nhksympo NHK放送文化研究所は16日、テレビ業界の現状と将来について話し合うシンポジウムを都内で開催した。



 テーマは「岐路に立つテレビ ピンチとチャンスにどう対峙するのか?」。構造的なテレビ離れや広告の縮小など、逆風下にあるテレビが今後どのような役割を果たしていくべきか意見を交わした。パネリストとして作家の堺屋太一氏、慶應大学の竹中平蔵教授、北海道テレビの樋泉実専務、TBSメディア総合研究所の前川英樹取締役、総務省の山川鉄郎情報流通行政局長、金田新NHK専務が参加した。



 議論は「テレビ経営」「アナログ停波」「社会・地域への貢献」という3つに焦点を当てる形で進んだ。竹中氏は「放送・通信の融合を含め、テレビ局を取り巻く新しい枠組みはほぼできつつある。これからは経営の問題だ」と述べ、厳しい時代だからこそ前向きな経営改革を進める必要があると指摘した。堺屋氏も「テレビは、いわゆる『55年体制』が今も残っている珍しい業界。東京集中の構造、ペイテレビ(有料放送)が普及しない、高コスト体質など改善の余地は多い」と口をそろえた。


 TBSメディア総合研究所の前川氏は「70年代は視聴者が正対してテレビを見ていた。80年代は誰かと会話をしながら、90年代以降はパソコンや携帯をいじりながら、とテレビの見られ方も時代と共に変わっている。どう視聴者と向き合うべきか、という問題は簡単ではない」と本音をのぞかせた。だが一方で同氏は「テレビは時間のメディア。ネットによって時間から解放されたとも言われるが、人間そのものは時間と不可分ではいられない。時間に沿って編成して番組を流すというテレビはこれからも必要」と、メディア論的な視点からその存在意義を訴えた。


 テレビ局のコンテンツ制作力やブランド力などにはまだ社会的なニーズもあり、自信を持って積極的な展開をすべき、という点ではおおむね一致し、自由な競争の中で切磋琢磨しあうことも重要とする声が相次いだ。しかし同時に放送の公共性も守られなくてはいけない、という指摘もあった。この点について竹中氏は「大衆が求めているものを、その目線に立って提供することも大事だが、権力から距離を置くのと同様、大衆とも一定の距離を置くのが放送の公共性だ」と述べた。また総務大臣の在任期間中、NHKの完全民営化をねらっているといううわさがあったことに自ら言及し「そんなつもりは全くなかった。NHKと民法の二元体制は必要なもの」と明言した。


 北海道テレビの樋泉氏は、海外に積極的に番組を配信し北海道への外国人観光客増加へつなげた事例や、マスマーケティングではなくエリアを限定したコミュニティーマーケティングなどもビジネスにしている事例を紹介した。ネットとの連携も積極的に進めており「厳しさの裏返しかもしれないが、全国放送に先んじてやっているという自負がある」と胸を張った。堺屋氏も「ローカルメディアは地域で誇るべき文化を育て、それを全国や世界に発信していくべき。日本の多角化・多様化を推し進めていってほしい」とエールを送った。


(参考リンク)


http://www.nhk.or.jp/bunken/


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