2006年9月14日木曜日

「オーマイニュース」というメディアづくり

韓国のインターネット新聞「オーマイニュース」日本版が創刊して2週間が過ぎた。韓国で成功した市民参加型メディアの日本上陸という話題性も手伝い、市民や消費者が情報発信する時代のメディアづくりに関する議論が活発になっている。ネットでブログ(日記風の簡易型ホームページ)を執筆するブロガーの間でも「オーマイニュース」をめぐり賛否両論が沸き立っている。














「要は誰が、ではなく何を書いたか、だ」。駒沢大学の山口浩グローバル・メディア・スタディーズ学部助教授は実名で執筆しているブログで、オーマイニュースが市民記者によるニュースを売り物にしていることについて、読み手の視点を欠いていると批判する。ブログなどの更新情報を受け取るRSSリーダーの利用者は「マスメディア、市民メディア、ブログといった帰属の別が関係なくなっている」と指摘。読み手側は市民記者が書いたということに大きな価値を感じてはおらず、記事の内容次第で評価が決まると見ている。



韓国でオーマイニュースが登場した6年前はブログが普及する以前で、市民が意見表明する機会や情報発信する手段は少なかった。その後、世界的にブログが普及し、CGM(消費者作成メディア)という言葉も定着してきた。市民参加型ネット新聞の日本での草分け的存在である「JANJAN」のある編集者は「ブログがでてきたので、(市民は)自分で自分の意見を言えるようになった。米グーグルの検索サービスを使えば、いろいろな人に見てもらえる。(ネット新聞は)何をしたらいいのかと悩む」と打ち明ける。



人気ブログ「ガ島通信」執筆者の藤代裕之さんはオーマイニュースと著名ブロガーの対話集会を呼びかけた。早稲田大学で2日に開催したシンポジウムでは自ら司会を務め、その後、参加者へのアンケート結果をブログで報告している。参加者の中には「市民記者登録を決心した」という人もいたが、「この程度の内容ならブログでいくらでも読める」、「先行者(JANJAN)から全く学んでいないのは致命的」と批判的な意見も多かった。



一般読者を対象とした新聞記事よりも専門的な内容を扱ったブログが多数存在し、JANJANなどの類似サイトもある状況で、オーマイニュースの日本での「立ち位置」は定まりにくい。これに対し、オーマイニュースの鳥越俊太郎編集長は早大でのシンポジウムで、市民による日常生活の体験談を積み上げれば、既存のメディアと違う視点からの問題提起ができると強調した。例えば、病院で点滴を打ってもらったときの経験から、点滴のミスで被害にあった当事者が次々と体験談を投稿していけば「日本の医療現場がどうなっているのかを検証できる」と市民記者の活躍に期待を寄せている。



一方、既存メディアで働くブロガーの見方は趣が異なる。時事通信社の湯川鶴章編集委員はブログの中で、オーマイニュースの呉連鎬社長から日本での事業展開について相談を受けたことを明らかにしている。「JANJAN」やライブドアの先行事例を分析して、「否定的な見解を述べておいた」と書いているが、むしろ、ソフトバンクがオーマイニュースに出資したことに着目し、ソフトバンクやヤフーがオーマイニュース日本版を集客力のあるニュースサイトを育てる可能性があるのかを呉連鎬社長の姿勢などから見極めようとしていた。



ブログ「竹橋発」を執筆する毎日新聞社の磯野彰彦編集局次長は早大でのシンポジウムに出席し、「タレ込み情報がオーマイニュース側に流れて、抜かれたら困る」と警戒感を隠さなかった。既存メディアに所属する湯川氏や磯野氏は事業と編集の両面からオーマイニュースが競合相手になり得るのかが気になる様子だった。



批判的な意見や警戒感が渦巻くなかで、ブロガーからは「市民記者に自分の住む地域の課題を中心に取材してもらうことから始めたらどうだろうか」(ブログ「talleyrandの備忘録」)との提案もあり、オーマイニュースに期待する声も出ている。例えば、市町村の議会での委員会質疑、地域で開催されるシンポジウムなど既存メディアが記者を配置する手間をかけられない所で、どんな発言があり、何が起きたのかをきめ細かく伝えていけば、既存メディアとの違いも打ち出せる。



消費者や市民がネットなどで情報発信できる時代に、ことさら市民記者が書いたことを強調することに意味はないのかも知れない。「読みたい記事がない」(駒沢大の山口助教授)と感じている読み手の不満に応えるメディアづくりは、既存メディアも市民参加型メディアにも共通の課題になるだろう。



▼「talleyrandの備忘録」


オーマイニュース考 


http://blog.goo.ne.jp/talleyrand_2006/e/7b72987ee2c084e72504125398859847



▼「H-Yamaguchi.net 


オーマイニュースについて(1):現状分析 


http://www.h-yamaguchi.net/2006/09/1_77cc.html#more



▼「ガ島通信」


[イベント]ブロガー×オーマイシンポジウム「アンケート」概要報告


http://d.hatena.ne.jp/gatonews/20060904/1157375900



▼「湯川鶴章のIT潮流」


日本版オーマイニュースの狙いは打倒権威主義


http://it.blog-jiji.com/0001/2006/02/post_0730.html




































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